「グッドデザイン賞」を信州松本の柳沢林業が受賞!企業活動そのものが「持続可能な地域デザイン」と評価
株式会社柳沢林業は2021年10月20日、公益財団法人日本デザイン振興会主催の「2021年度グッドデザイン賞」を受賞したと発表しました。会社の取り組みそのものが、「未来を育む持続可能な地域デザイン(信州・松本平の豊かな風景をつくる)」として評価を受けたことが、受賞理由としています。同社では、人と自然が真の意味で共生できる持続可能な地域社会の実現に向け、事業展開を進めていく考えです。
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「グッドデザイン賞」を受賞した柳沢林業
柳沢林業は、ミッションに「信州松本平の豊かな風景をつくる」を掲げ、山・森林・木を知るプロ集団として、林業や木材加工・販売、薪材の生産販売、キャンプ場運営、農業、農産物加工、地域コミュニティイベント、里山再生などさまざまな事業を展開しています。日本の温暖湿潤な気候は、森林にとって非常に恵まれた環境である一方、手入れを怠ると里や街を飲み込み、自然災害に発展することもあります。人が自然と共存するには、適度な森林の手入れを行い、地域の木材利用により環境負荷を抑え、経済循環を生み出すことが欠かせません。これらを通じて「信州松本平の豊かな風景をつくる」ことが、同社の使命だといいます。
今回の受賞は、同社が林業が抱える多くの課題と向き合いながら、山を良い状態に保つために、農業やアウトドア事業・6次化等によって事業性を維持しつつ、山の保全、林業という仕事を魅力的に発信、継続していることが評価されてのこと。また、業種・業態を超えたさまざまな企業とコラボレートすることで木材の可能性を引き上げ、柳沢林業を軸に山の恵みを生かした地域循環を生み出している点も評価されました。受賞内容の概要は以下の通りです。
【概要】
受賞名:2021年度グッドデザイン賞
受賞対象名:未来を育む持続可能な地域デザイン[信州・松本平の豊かな風景をつくる]応
募カテゴリ:17-01 地域の取り組み・活動
受賞ページ:https://www.g-mark.org/award/describe/52909?token=m9pbelRsio
受賞記念ページ(柳沢林業HP内):http://yanagisawa-ringyo.jp/gd2021
サステナブル×林業×ライフスタイル 松本平の風景をつくる
同社では、林業者として今できることは、木材にとどまらず広く自然の豊かさを発信していくことだとしてさまざまな事業を展開しています。例えば、コロナ禍で人気が一層高まっているアウトドアに注目したキャンプ場の運営では、太陽光を浴び、自然と触れ合い、焚火や薪を楽しむ体験を提供しています。これにより、観光、教育、心身の健やかさにもつながるそうです。
また、遊休農地の活用により、昔ながらの農林業が混然一体となっていた生業を取り戻すことも、ライフスタイルを見直すきっかけとなるとして、同社の特色である林業・街・里山とのつながりを活かし、既存の林業の枠組みにとらわれない地域企業としての活動を続けていくとしています。
コミュニティ・人の繋がる輪としての里山づくり
里山はかつて、「入会地」と呼ばれており、地域の人々がある程度自由に出入りできる共有林としての役割を担っていました。「時代と共に廃れてしまった文化を蘇らせ、里山の荒廃林・放置林化を食い止めたい。将来に向けて、森林を里山と街の人々との繋がり・コミュニティで支えていきたい」との思いから、活動をしているそうです。
木こりがつなぐ森と街
山を知り、森を知り、木を知る“木こり”ならではの知識と感性を活かしたデザインを提案。地域の街並みや空間を演出することで、ナチュラルなライフスタイルづくりを促進しています。林業者が自ら木材の出口づくりを進めることによって、地域にふさわしい山づくりが可能となり、松本平らしい空間や街並み、ライフスタイルが形作られると言います。
松本市に2021年7月にオープンした燻製店「燻製工房 KUNMARU」では、内装デザインから施工までを担当。猟師でもあるオーナーの「街で木に触れ合えるお店に」というコンセプトに沿った店を作りました。
【燻製工房 KUNMARU】
https://www.big-advance.site/s/129/1641
信州松本平の里山で遊ぶ「ソマイチ」
会社の裏山では、毎月1回、「ソマイチ」という地域イベントを開催。木工ワークショップや、薪割・焚き火、木登り、乗馬体験、木材・加工商品・農産物の販売などをしています。地域住民との交流・コミュニケーションにより、思わぬ発想が浮かんだり、地域住民の求めているものに気づいたりすることがあるそうです。林業や森林・木材への敷居を下げ、木の魅力・林業という仕事への良き理解者の輪を広げることにも繋がっているとしています。
馬搬・馬耕を通じた農林業文化の再生
2016年には、北海道ばんえい競馬の引退馬「ヤマト」を会社に招き入れました。山で伐採した木材を馬で運搬する「馬搬」、田畑を馬で耕す伝統農法「馬耕」という、かつての農林業を支えた2つの技術の可能性に眼をつけたことがきっかけです。実際に馬と共に過ごしてみたところ、技術以上に、「道具ではない『生き物』がそこに存在する」ことの意味を強く感じたと言います。ヤマトをきっかけに裏山で遊ぶ感覚で地域の人々がこの場所を訪れ、交流が生まれ、山が風通しのいい場所になっていくという循環が、農業と林業、自然と人、人と人をつなげ、地域づくりへと広がっていくと考えているそうです。
自然な働き方・四季とともに育む、新しい林業ワークスタイル
同社を含む多くの林業者は、公的な補助金を受け、森林整備を行っています。そのため、作業内容が行政年度や仕組みに左右されやすく、気候風土にマッチしない作業を行わざるを得ないという側面があります。例として、現代の林業では、季節を問わず伐採を行うのが一般的です。しかし、夏季の木材は水分を多く含んでおりカビやすいため、伐採は本来は冬・農閑期の仕事でした。また、近年は、豪雨や酷暑の影響で、夏の作業が容易ではないケースも見られます。
柳沢林業は、冬には本業の伐採を、夏には農業やキャンプ場運営を行うなど、日本の気候風土や自然の摂理に合った仕事の創出を目指しています。また、社員の特技・興味を林業と掛けあわせることで、事業の幅を広げ、社員の仕事の満足度を高める努力を重ねているそうです。木を伐るとは活かすということという考えのもと、木材としてだけではない森林の持つ多様な役割を持続可能な方法で活かしていくため、今後もさまざまな取り組みを続けていくとしています。
松本市美鈴湖もりの国オートキャンプ場
私たちのキャンプ場松本市美鈴湖もりの国オートキャンプ場は、「山で過ごす、火を焚く。山での時間はこの街の日常。暮らす人も、訪れる人も、もっとこの街が好きになる」をコンセプトとしています。自然を非日常として切り離すのではなくもっと気軽に感じてほしい、という林業者としての思いから、2021年度より、キャンプ場経営に参入しました。1964年の創業以来培ってきた地元企業ならではの森、木、薪、焚き火の魅力や、信州松本のローカルな繋がりを大事にするという新しい価値観をもった魅力的なキャンプ場にしていきたいとしています。
【松本市美鈴湖もりの国オートキャンプ場】
https://misuzuko.net/