サステナビリティとは?SDGsとの違いやメリット、企業の取組事例を紹介

サステナビリティとは?SDGsとの違いやメリット、企業の取組事例を紹介

「持続可能性」を意味する、サステナビリティ。近年、サステナビリティの概念は社会全体に浸透しつつあり、サステナビリティに積極的に取り組む企業も増えてきています。「SDGsとは、どう違うのか」「具体的に、どのようなことに取り組めばよいのか」などを知りたい経営者やSDGs担当者、ビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。今回は、企業の取り組み事例を交えながら、サステナビリティの定義や類義語との違い、メリットなどを紹介します。

サステナビリティとは?

「サステナビリティ(sustainability)」とは、持続可能性のこと。経済や社会、環境などを将来にわたって、機能を失わずに続けられる」状態と理解するとよいでしょう。

サステナビリティの3要素

サステナビリティと一言で言っても、カバーする領域は、「自然環境への配慮」や「社会問題への対応」「女性や高齢者の雇用創出」など多岐に渡ります。そこで、サステナビリティに取り組む企業が参考にしているのが、サステナビリティの国際的スタンダードである「GRIスタンダード」という枠組みです。「GRIスタンダード」では、サステナビリティを「経済」「社会」「環境」の3分野・33項目に分け、示しています。

「GRIスタンダード」をもとに、サステナビリティを構成する「経済」「社会」「環境」の3要素の各項目について、見ていきましょう。

経済

「経済」は、以下の6項目からなります。

「GRIスタンダード」における経済に関する項目

  • 経済的パフォーマンス
  • 市場での存在感
  • 間接的な経済影響
  • 調達慣行
  • 腐敗防止
  • 反競争的行為

企業には、単に利益を上げることのみならず、健全な経済活動を行うことも求められていると言えるでしょう。

社会

「社会」に関する項目は、計19項目からなります。

「GRIスタンダード」における社会に関する項目(一部抜粋)

  • 雇用
  • 労使関係
  • 労働安全衛生
  • 研修および教育
  • 多様性と機会均等
  • 非差別 など

この他に、「地域コミュニティ」や「顧客プライバシー」といった項目があります。

環境

「環境」は、以下の8項目からなります。

「GRIスタンダード」における環境に関する項目

  • 原材料
  • エネルギー
  • 生物多様性
  • 大気への排出
  • 排水および廃棄物
  • 環境コンプライアンス
  • サプライヤーの環境評価

企業として、さまざまな視点から環境に配慮していく必要があるようです。

なお、企業活動におけるこれら3要素を意識した取り組みは「ESG(環境・社会・ガバナンス)」と呼ばれることもあります。

類義語との違い・関係性

「サステナビリティ」と混同されがちなのが、「SDGs(Sustainable Development Goals)」や「CSR(Corporate Social Responsibility)」です。「サステナビリティ」と「SDGs」「CSR」の違いについて、見ていきましょう。

サステナビリティとSDGsの違い

「SDGs」とは、「持続可能な開発目標」のこと。2015年9月の国連サミットで採択された国際目標です。SDGsは、17の「ゴール(目標)」および169の「ターゲット」からなります。

サステナビリティとSDGsは相互補完的な関係であると言われていますが、両者の違いは、「目標の具体度」です。サステナビリティの場合、「経済」「社会」「環境」という3つの大きな枠組みに分かれていますが、SDGsではそれらを具体的な目標に落とし込んでいます。サステナビリティを実現するための具体的な目標が、SDGsだと理解するとよいでしょう。

サスティナビリティとCSRの違い

「CSR」とは、「企業の社会的責任」のこと。企業は利益のみを追求するのでなく、顧客や従業員、取引先、投資家といった全てのステークホルダーに対する責任を果たす必要があるということを意味します。

サステナビリティとCSRでは、「誰が責任を果たすべきか」が異なります。CSRは「企業」に責任の所在がある一方、サステナビリティは「企業」のみならず「政府」「自治体」「個人」などが責任を果たす必要があります。CSRは「企業にのみ」求められる責任、サステナビリティは「社会全体」に求められる責任という違いがあると理解するとよいでしょう。

サステナビリティが推進されるようになった背景

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経済的に豊かな国が増えるにつれ、地球温暖化に代表される「環境問題」や、貧富の格差を始めとする「社会問題」が世界全体の課題として認識されるようになってきました。そうした課題を解決するため、2015年9月の国連サミットで採択されたのが、SDGsです。

先ほど紹介した通り、SDGsはサステナビリティを実現するための具体的な目標であるため、SDGsが世界的に認識されたことに伴い、サステナビリティを推進する動きも始まりました。また、世界的に名の知れた大企業がサステナビリティに取り組んだこともあり、サステナビリティへの注目度が高まっているようです。実際、現在では多くの企業がサステナビリティの推進に向けた取り組みを実施しています。

サステナビリティ経営をするメリット

サステナビリティを意識した「サステナビリティ経営」を行うことで、企業にはどのような効果が期待できるのでしょうか。サステナビリティ経営をするメリットを紹介します。

企業価値やブランドイメージが向上する

近年、社会の一員として、企業も環境問題・社会問題に対応していくべきだという風潮が強まっています。サステナビリティを意識した取り組みを行い、それを社外にアピールすることができれば、「企業価値」や「ブランドイメージ」の向上が期待できるでしょう。その結果、新規顧客の獲得にもつながります。

事業の拡大や成長につながる

サステナビリティ経営をする際には、「製造工程の見直し」や「社内の体制変更・強化」などの改革が必要です。改革を進めることにより、時代の変化に柔軟に対応できる組織が作られていきます。また、改革の過程で、新技術の開発に成功したり、新規事業に参入したりといった動きも起きるでしょう。こうした、さまざまな動きにより、事業の拡大や成長につながっていくと考えられます。

従業員エンゲージメントが高まる

サステナビリティ経営は、従業員にもよい影響をもたらします。環境問題・社会問題に積極的だという企業の姿勢を従業員に共有できれば、従業員はこれまで以上に「やりがい」をもって仕事に臨めるようになるでしょう。加えて、「有給の取得促進」や「仕事と育児・介護の両立支援」などにより、従業員にとって働き続けやすい職場環境にできれば、従業員エンゲージメントも向上します。このように、サステナビリティを意識した取り組みを実施することにより、離職率の低下も期待できるでしょう。

海外と日本のサステナビリティを比較

サステナビリティと一言で言っても、海外と日本では状況が少し異なります。海外と日本のサステナビリティについて、比較してみましょう。

海外におけるサステナビリティ

海外におけるサステナビリティには、事業そのものを「環境」「社会」と統合して捉え、企業の価値を長期的に高めていくという特徴があります。特に、サステナビリティの意識が高いと言われているのが、北欧を始めとする「ヨーロッパ」の国々や「アメリカ」です。こうした国々では、温室効果ガスの排出抑制を目的に、「カーボンニュートラル」や「脱炭素社会」などの実現に向けた動きが日々議論されています。

また、サステナビリティへの意識が高い国々では、環境に配慮した商品のみに付けられる国際認証ラベル「サスティナブル・ラベル」も普及。国によっては、サスティナブル・ラベルがついていない商品は販売できないところもあります。

日本におけるサステナビリティ

日本におけるサスティナビリティには、「環境」「社会」への配慮を行いながら、企業価値を高めていくという特徴があります。以前と比べると、サステナビリティが議論される機会が増えてきているものの、海外と比べると遅れを取っているのが実情です。サステナビリティの意識が高い国では普及しているサスティナブル・ラベルも、日本ではさほど普及していません。背景としては、諸外国と比べ、相対的に日本企業・日本社会のサステナビリティに対する意識が低い点が挙げられます。

【国内外】サステナビリティに取り組んでいる企業の事例

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サステナビリティの実現に向け、企業はどのような取り組みを実際行っているのでしょうか。サステナビリティに取り組んでいる企業の事例を紹介します。

国内企業の事例

サステナビリティに取り組む国内企業4社の事例を見ていきましょう。

ファーストリテイリング

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでは、「服のチカラを、社内のチカラに。」をサステナビリティステートメントとして掲げています。「People(人)」「Planet(地球環境)」「Community(地域社会)」の3つのテーマに分け、「商品と販売を通じた新たな価値創造」「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」「環境への配慮」など6つの重点領域でサステナビリティの実現に向けた取り組みを実施。具体的には、「サステナブルなシーンズ生産技術の開発」や「商品のリユース・リサイクル活動」「服の寄贈」「地域清掃活動」などに取り組んでいます。

大林組

大手ゼネコンの大林組では、2019年6月に、長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050(OSV2050)」を策定。OSV2050に掲げた「2050年のあるべき姿:地球・社会・人のサステナビリティの実現」を目標に、グループが一丸となって取り組みを進めています。また、「2050年のあるべき姿」を実現に向け、事業展開の方向性として「インフラ・まちづくりのライフサイクルマネジメント」「はたらく人と住まう人に優しい事業・サービス」「未来社会に貢献する技術・事業イノベーション」の3つを定めました。こうした方針のもと、「良質な建設物・サービスの提供」や「環境に配慮した社会づくり」「社会との良好な関係の構築」といった観点から、サステナビリティに取り組んでいます。

トヨタ自動車

国内最大手の自動車メーカーであるトヨタ自動車では、「社会・地球の持続可能な発展への貢献」に向け、「サステナビリティ基本方針」を策定しています。環境への取り組みとしては、「トヨタ環境チャレンジ2050」という2050年までの長期的な取り組み目標を発表。新車や工場における「CO2ゼロチャレンジ」を進めています。社会への取り組みとしては、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」や「社会貢献活動」などを実施。「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みが評価され、性的マイノリティに関するダイバーシティ・マネジメントの促進・定着を支援する任意団体「work with Pride」が策定する「PRIDE指標」で「ゴールド」を受賞しました。

ワールドファーム

茨城県に本社を置き、国産野菜の生産・加工・販売を行うワールドファームでは、農産地の地域一体型プロジェクト「アグリビジネスユートピア」構想を提唱しています。「持続可能な農業」から始まる「地方創生」「持続可能な社会」の実現を目指し、さまざまな取り組みを実施。具体的には、「安定的な製品供給」や「全国各地における耕作放棄の未然防止」「地域における雇用創出」などに取り組んでいます。こうした取り組みが高く評価され、経済産業省のHPでもその取り組みが紹介されました。

海外企業の事例

サステナビリティに取り組む、海外企業4社の事例を紹介します。

BMW

ドイツに本社を置く自動車メーカーであるBMWは、SDGsの11番目のゴールである「住み続けられるまちづくりを」を達成目標に掲げています。大都市の交通を「クルマ」に合わせた環境から、「ヒト」にあわせた環境に変えるため、新たな事業を展開。具体的には、電気自動車をシェアする「ドライブナウ(DriveNow)」や「リーチナウ(ReachNow)」の展開、電動スクーターの設置などに取り組んでいます。また、コーポレートベンチャーキャピタルである「BMW i Ventures」を通して、電気自動車の充電ステーションを運営する会社や、ライドシェアリング関連の会社などに投資。未来の都市を支える新しいサービスの創出に力を入れています。

ナイキ

アメリカに本社を置く、スポーツ用品メーカーであるナイキは、世界の都市1つ分のCO2を排出し、気候変動に影響を与えているとの認識から、サステナビリティに取り組むようになったと言います。サステナビリティ戦略のコンセプトとして「MOVE TO ZERO」を掲げ、CO2排出量と廃棄物、2つのゼロを目指しています。ナイキが特にチカラを入れているのが、炭素、廃棄物、水、化学に焦点を当てたサステナビリティ活動です。具体的には、「製造の効率化と廃水のリサイクルによる、淡水の使用量削減」や「環境配慮型素材を使用した製品開発」「廃材を新しい製品に変える、循環型ソリューションの拡大」などに取り組んでいます。

Apple

アメリカに本社を置く、テクノロジー企業であるAppleでは、2030年までにすべての製品をカーボンニュートラルにし「将来すべての製造でカーボンフットプリントゼロを目指す」と宣言しました。サステナビリティの実現に向け、「地球規模の環境対策」に取り組んでいます。すでに、「主要製品の製造工程における廃棄物ゼロ」と「世界44カ国のオフィス・直営店における100%再生エネルギーでの運営」を実現。製品を100%リサイクルで作っていくことを、今後の目標としています。

ユニリーバ

イギリスに本社を置き、洗剤やヘアケア、トイレタリーなどの家庭用品を製造・販売する多国籍企業ユニリーバでは、「サステナビリティを暮らしのあたりまえに」というパーパス(企業としての存在意義)のもと、2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を発表。2009年1月から2019年1月までCEOを務めたポール・ポルマン氏は、サステナビリティと長期的価値の創造を同社のビジネスモデルの中心に据えました。ポルマン氏の指示のもと、「原材料の調達や商品の包装に関する革新的なアプローチの開発」や「サプライヤーとの新たな関係の構築」「より健康的な製品の生産」などの取り組みを実施。ポルマン氏の退任後も、サステナビリティやSDGsの実現に向け、さまざまな取り組みが行われています。

未来を見据え、サステナビリティ経営を進めていこう

サステナビリティを意識した取り組み・経営を行っていくことで、「企業価値・ブランドイメージの向上」や「事業の拡大・成長」「従業員エンゲージメントの向上」が期待できます。そのため、サステナビリティを重視する動きは、今後さらに世界中で高まっていくことが予想されます。国内外の企業の取り組み事例を参考に、未来を見据えたサステナビリティ経営を進めていきましょう。