長野県根羽村は、「源流の水を守る、根羽村の森を活かしたサステナブルな取り組み」を取りまとめたSDGsポータルサイト「NEVER FOREST 根羽村」（https://nebamura-sdgs.jp/）を2021年3月に開設しました。人口900人の山村が、源流の水を守る挑戦として、木の付加価値を高め、持続性のある森林経営ができるスキームと、環境に配慮したアクション、流域の人々や企業と連携しながら進めていくSDGs施策を公開しています。

日本各地における山村・森林の問題が社会課題に

日本の国土は、約7割が森林という「森林大国」だと言われている一方で、林業の衰退などを理由に、木材資源の約7割を海外からの輸入に頼っている状況です。これに伴い、既に収穫期を超えた植林地の荒廃が進み、森林のCO2吸収による温暖化防止機能や、大雨や地震などから山地災害を防ぐ機能といった公益的機能の低下が大きな社会問題となっています。

2019年12月に閣議決定された第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」においては、地方創生の基本目標達成のための施策の一つに、林業の成長産業化が位置付けられています。過疎化・高齢化が進んでいる山村の資源をどう活かし再生していくかは、国全体で取り組む必要がある重要なテーマにもなっています。

流域180万人の豊かさを守るために立ち上がる

森林面積が村の9割を占める羽根村でも、国と同じ課題を抱えていました。矢作川の源流に位置する水源の村として、村域の森林の違法伐採や、保護する価値の高い森林の伐採を防ぎ、持続可能な森林経営を実現することを目的に、森林管理のためのFM（Forest Management）認証を根羽村が中心となって協議会方式で取得しています。

また、村の源流からはじまる一級河川の矢作川流域では、人口180万人が恩恵を受けて暮らしていること、製造業などの事業を支える工業用水としても活用されていることからも、水源の保全に取り組む必要性が高いと判断しました。しかし、山を育て、土地を耕し、自然の恵みの中で生活をする山村の暮らしは、近代化による木材価格の低迷や産業構造の激変の中で急激な過疎化を避けることは難しく、根羽村森林組合や村そのものの持続性は危機を迎えています。

これらの状況を打破するためにも、羽根村は「住民の豊かさを守るために、源流にある森を森林管理を通じて守ることが使命」と捉え、SDGsポータルサイト「NEVER FOREST 根羽村」をオープン。本ポータルサイトでは、根羽村で取り組む挑戦内容、およびそれらの進行状況について随時発信し、企業との共創による常識に囚われない森林管理と森林資源の利活用を通じて、水源と水を守ることを目指すとしています。

なお、活動に賛同した企業に対しては、内閣府が推進する企業版ふるさと納税制度を通じた支援の受付開始も行います。

根羽村でのSDGs取り組み例

根羽村での具体的なSDGs取り組み例には、次のようなプロジェクトがあります。

杉の木から織物をつくる「木の布」プロジェクト

2020年度より取り組むSDGsプロジェクト。大阪府に工場を構える株式会社和紙の布との事業連携を結び、杉材から木の布繊維に加工できる技術を活用し、新たな木材資源の活用方法を創出しています。第一弾プロジェクトでは、すでに商品を展開している株式会社いろどり（徳島県上勝町）と提携を結び、木材から作るタオル・マスクの製造／販売を進めています。

山地酪農を活かした森林保全活動

日本初となる自治体連携での山地酪農に挑む根羽村では、牛との関わりも改善。牛が本来の性質として持つ特性を活かし、365日牛が自然の中で共生する酪農を実現させています。酪農家は給餌や糞尿処理から解放されるとともに、森づくりの観点からは山林や耕作放棄地の草を牛が食べることで、中山間地域の荒廃をくいとめる施策としても効果が期待できます。

エコツーリズム（森林ESD）

根羽村の木材、木製品、木のおもちゃ等を使った木育活動や環境教育を実施。地域の住民や子ども達、川を通じた上下流連携を行っている愛知県安城市の地域住民・子ども達を主な対象としています。この活動を通して、地域への関心、自然環境の保護などに関心を持つ人を増やし、持続可能なまちづくり、持続可能な森林経営を担う人材の育成に取り組んでいます。

企業と連携した空き家の利活用

地域での拠点整備への取り組みを希望していた株式会社CRAZY・株式会社WHEREとパートナーシップを結び、2016年に村の中心に構える古民家「まつや」を改修しました。2019年より「一棟貸しの宿」として村外の人々が村暮らしを体験できる拠点としての活用が始まり、村内の人々の憩いと集いの場にもなっています。