製材所「木挽ラボ」が約40年ぶりに稼働。地産材の多品種少量生産を可能にした、小規模林業地帯の取り組み

製材所「木挽ラボ」が約40年ぶりに稼働。地産材の多品種少量生産を可能にした、小規模林業地帯の取り組み

有限会社きたもっくは2022年1月、地域資源活用事業の拡大に伴い、2021年7月に竣工した地域資源活用工場「あさまのぶんぶんファクトリー」内にある、小規模林業地帯にマッチした多品種少量生産が可能な製材所「木挽(こびき)ラボ」を稼働しました。広葉樹が主の小規模林業地帯でも事業性が見込める製材業を実現し、中山間地域の産業インフラを担う考えです。

かつては栄えた中山間地域における課題と背景

群馬県長野原町は林野面積占有率の高い中山間地域で、面積の約71%が広葉樹の天然林とカラマツの人工林です。全国に広がる中山間地域の山林は、かつては薪や炭の生産地として盛んに活用されていました。しかし、エネルギー革命とともに衰退。近年では新たな活用が見出され、広葉樹は主に木質バイオマス発電の燃料やキノコの菌床などに利用されている一方で、健全な山林の育成、地域産業の発展といった課題は今もなお残っています。

約40年前に製材所が撤退した同地域では、地産材を木材として加工できず、地域資源の活用や仕事の創出が難しい状況でした。

広葉樹を計画伐採、加工し、価値を生み出す

同社は、約240haに及ぶ地域山林を2019年に取得し、浅間高原北麓の特徴である豊富な広葉樹を中心に計画伐採をしています。伐った木材は、地域資源活用工場「あさまのぶんぶんファクトリー」で、薪や建材、家具材として加工。木を伐ることで木の育つ環境が整えられ、有休山林や耕作放棄地では、植生循環を促す養蜂にも取り組むようになりました。

伐採

さらに価値化された地域資源は、年間10万人が訪れる自社キャンプ場「北軽井沢スウィートグラス」や宿泊型ミーティング施設「TAKIVIVA」で主に活用されています。地域の一般住宅に設置施工している薪ストーブや薪ボイラーも含め、薪の年間消費量は約1,500㎥(2021年実績)に達しています。

約40年ぶりに製材所「木挽ラボ」がフル活動

今回新設された工場内の製材所「木挽ラボ」では、地産の広葉樹とカラマツを中心に製材しています。自社開発した廃材を利用する薪ボイラー式低温除湿乾燥機の活用により、色艶・香りの残る乾燥材作りを実現。あさまのぶんぶんファクトリーは、製材所が加わることでその機能がさらに高まり、地産材の計測・仕分け・製材・乾燥・仕上げ加工までを行うことができるようになり、最終商品(家具・建築・薪など)にすることができる林産加工場に生まれ変わりました。

ラボ内での加工

また、加工された地産材は自社キャンプ場や建築事業での活用に加え、国産広葉樹の家具材・フローリング材など、多く流通していない希少木材を中心に販売をしていく考えです。材料持ち込みの製材も順次サービス提供をしていく予定としており、地域産業のインフラとしての機能も目指しています。

角材

グッドデザイン金賞を受賞。北軽井沢で地域の未来を持続可能なかたちで創造

同社は、活火山浅間山の麓「北軽井沢」で事業を展開。地域資源の多面的な価値化とキャンプ場をはじめとする場づくりで、地域の未来を持続可能なかたちで創造していくことを目指しています。また、2021年度のグッドデザイン賞において「グッドデザイン金賞」を受賞しました。「今後は同じ質の志をもつ他地域の方々との緩やかな連帯を果たすことで、日本の中山間地域における産業モデルの構築を目指していきたい」と述べています。