森林破壊の原因や現状は?保全対策や私たちにできる取り組みとは

森林破壊の原因や現状は?保全対策や私たちにできる取り組みとは

森林破壊とは、森林伐採や森林火災などで森林面積が減少することです。森林破壊の現状や起きる原因、またその影響が気になる方もいるのではないでしょうか。今回は、森林破壊を食い止めるための世界的な取り組みや、私たち個人が日常生活でできる森林保全対策などをご紹介します。ぜひご参考ください。

森林破壊とは、さまざま原因により世界各地の森林が減少する状況のこと 

森林破壊とは、森林伐採や森林火災などが原因で森林面積が減少する状況のことです。森林が減ることで、生態系への影響地球環境などさまざまな方面への影響があります。

森林破壊の現状。森林はどのくらい減少している?

まずは森林破壊について、現状と世界各地での状況をみていきましょう。

世界の森林は年間約470万ha減少

国際連合食糧農業機関(FAO)の「世界森林資源評価2020:Global Forest Resources Assessment2020(FRA2020)」によると、2020年の世界の森林面積は約40億haあります。世界の陸地面積のうち、森林面積が約3割を占めています。

世界の森林面積は、2010年から2020年の間に年平均470万ha減少しています。1990年から2000年の間の森林が純減する速度は年平均780万ha、2000年から2010年の間が517万haなので、森林が純減する速度は低下傾向にありますが、1990年から2020年の30年間をみると、1億7800万ha(日本の国土面積の約5倍)が減少しています。

森林の増減は地域によって異なる。アフリカ、南アメリカ、東南アジアで減少

森林減少といっても、世界各地すべての地域において減少しているわけではなく増加している地域もあります。

減少地域として挙げられるのが、アフリカと南アメリカです。この両地の熱帯の森林を中心に面積が減少しています。アフリカでは、森林面積の純減速度は増加し続けており、特にアフリカ東南部で顕著な傾向が見られます。また、全体では森林が増加しているアジアでも、カンボジア、インドネシア、ミャンマーなどの東南アジアでは減少しています。一方、森林が増加している地域としては、アジアに加えオーストラリアが挙げられます。

地域別森林面積の推移

参考:林野庁『世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート概要』

日本は世界有数の森林大国。しかし、森林環境の整備が課題に

では、日本はどうでしょうか。日本は国土面積3,780万haのうち、66%にあたる2,505万haが森林面積です。森林面積2,505万haのうち、約50%(約1,348万ha)が天然林、約40%(約1,020万ha)が人工林、残りが無立木地、竹林などです。日本の森林率は、先進国(OECD諸国)の中では、フィンランドに次いで第2位。世界でも有数の森林国です。ちなみに、森林率の世界平均は約31%となっています。

しかし、森林大国にもかかわらず、日本は世界有数の木材輸入国でもあります。それは長い間、国内にたくさんの木材があるのにもかかわらず、比較的安く、一度の大量に入手できる輸入材を利用していたからです。1945年頃に植林した木材が順調に成長しても供給できず、間伐材の大きな利用先だった建材にアルミ製などが使われるようになったことなどから間伐材の需要も大幅に減少。近年は、林業従事者も減って高齢化が進み、技術継承が難しくなり、深刻な人手不足にも陥っている状況です。

林野庁では2005年度から「木づかい運動」を推進。日本の木を積極的に利用することにより、日本の森林を活性化し、環境保全を推進するための国民運動として展開し、木育教室やパネル展などのさまざまなイベントや啓蒙活動を行っています。

さらに、 2011年7月からは「10年後の木材自給率50%以上」という指標を掲げた取り組みも開始されました。木材自給率は2020年に41.8%となり、2011年以降は10年連続で上昇しています。

森林破壊の原因

ところで、森林破壊はなぜ起こるのでしょうか。その主な原因をみていきましょう。

原因①違法伐採

違法伐採とは、それぞれの国の法令に反して行われる伐採のことです。具体的には次のような伐採が「違法伐採」となります。

・許可された量や面積・区域等を超えた伐採、国立公園や保護区の森林など伐採禁止の場所での伐採
・盗伐(所有権・伐採権がない森林の伐採)
・許可を受けない・許可証を偽造した伐採
・木材取引、先住民族などの権利を不当に侵害した伐採 など

原因②農地などへの用途転換

世界の人口は年々増加しており、それに伴い食料やエネルギー需要が増えています。その結果、森林が農地など他の用途に転換されている現状もあります。

一例として、東南アジアにおけるアブラヤシのプランテーションへの転換、アマゾンでのサトウキビ農園や牧場などへの転換が挙げられます。農地以外の転用としては、放牧地、ゴルフ場やスキー場などのレジャー施設があります。

原因③配慮のない非伝統的な焼畑農業の増加

自然の回復力に配慮しない非伝統的な焼畑農業も森林破壊の原因のひとつです。焼畑農業とは農業のひとつの方法で、森林の草や木を伐採して焼き払い、1年から数年間農地として活用後、自然の回復力によって森林に戻すことを繰り返します。しかし、森林がしっかり回復する前に再び焼いてしまうと、自然のサイクルを乱し土地が劣化してしまいます。

原因④燃料用木材の過剰な利用

世界では開発途上国を中心に多くの地域で、日々の暮らしを送るための燃料として薪や炭を使っています。日本では電気やガスを使うことが多いですが、世界全体では、木材の使用目的の約50%が燃料としての利用です。人口増加などにより、過剰な木材摂取が森林の減少や劣化を引き起こしています。

原因⑤森林火災による消失

森林火災も森林破壊の一因です。落雷などによる自然発火に加え、焼畑農業や土地開発のため燃やした草木が広がってしまう火災、焚き火やタバコの不始末による火災など人為的なものも挙げられます。日本でも、2015年から2019年までの平均で1年間に約1,200件の森林火災が発生しています。

森林破壊による影響。森林が減り続けるとどうなるのか?

では、森林が減り続けると、地球や私たちの生活はどうなるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

気候変動が起こる

森林の樹木は、育つ過程で光合成により空気中にある二酸化炭素を取り込んで、大量に蓄えています。火災や伐採によって、森林が失われると空気中にある二酸化炭素の取り込みができない状態になります。空気中にある二酸化炭素濃度が高まると、気候変動、地球温暖化の一因となり、干ばつが進んだり、集中豪雨や洪水が起こりやすくなるとされています。世界の温室効果ガス排出量の約11%は、森林が農地など他用途への転用により起こった森林破壊が原因とされています。

生態系が崩れ、野生動物が絶滅の危機に

森林には、これまで発見されている野生生物種の半分以上が生息しています。多くの野生生物は、森林の消失により絶滅の危機に直面してしまいます。現在、森林で暮らす野生生物のうち、絶滅の危機が高いとされる種の数は1万4,000種以上と言われています。野生生物は森林で暮らす野生生物はもちろん、森以外の環境にすむ他の野生生物とも共生の関係や食物連鎖でつながっています。そのため、野生生物の絶滅はさらに多くの生命存続の危機にもつながってしまうのです。

シカ
image by Matthieu Joannon on Unsplash

さまざまな社会問題が発生する

動物由来感染症には、森林破壊が大きくかかわっていると言われています。新型コロナウイルス感染症やエボラ熱、ハンセン病、ラッサ熱、MERS、SARSなど新興および再興感染症の推定70%が動物に由来するそうです。森林破壊により、人や家畜が、さまざまな病原体を持っている野生生物と接触する機会が増えるために起こってしまうのです。

また、森は木材や薬の原料、農作物の原種など人々の暮らしに欠かせない恵みをもたらしてくれます。現在も世界中に森などの地域に住んだり森の恩恵を受けて生計を立てている人がいるのです。森林が破壊されるということは、森で暮らす人々の生活を脅かし、人権をも奪うことになると言えるでしょう。

森林破壊を防ぐための対策・取り組み

このまま見過ごすことのできない森林破壊。防止するための対策や取り組みをみていきましょう。

世界で取り組んでいること

まずは世界において、森林破壊を防ぐために取り組んでいることをみてみましょう。

地球サミットで「森林原則声明」を採択

1992年にブラジルで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において、持続可能な森林経営の推進に向けた「森林原則声明」が採択され、以下の2つなどが合意されました。

「リオ宣言」(環境と開発に関する基本原則)
・各国は自国資源の開発主権を有するとともに他国の環境に損害を与えないようにする責任があること
・地球環境悪化に関しては、先進国と途上国とでは、共通だが差異のある責任を有すること など

「アジェンダ21(Agenda 21)」
・持続可能な開発に向け、森林減少対策などの実施計画を盛り込む

国連森林フォーラムの実施

2000年に経済社会理事会の下に国連森林フォーラムが設置され、現在でも継続的に世界の森林についての論議が行われています。2007年には世界の持続可能な森林経営の達成に向け、各国や国際社会が取り組むべき事項を記した「全てのタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書」の合意がなされました。2015年には国連持続可能な開発サミットが国連本部(ニューヨーク)で開催され、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」が採択されるなど、年々さまざまな動きがあります。

森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言

2021年10月31日から11月13日まで英国グラスゴーで国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催されました。その中で催された、英国ボリス・ジョンソン首相主催の「世界リーダーズ・サミット」では、森林減少を終わらせ森林を回復させることに対する機運を高めるために「森林・土地利用イベント」が開催されました。

このイベントでは、「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言」が発表されました。この宣言では、2030年までに森林消失と土地劣化をストップさせ、さらにその状況を好転させるべく、森林保全とその回復促進などの取組を強化することが掲げられています。

新芽
image by Francesco Gallarotti on Unsplash

SDGsの目標設定「 陸の豊かさも守ろう」

森林保全は、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」とも関連があります。この目標のテーマは、「持続可能なかたちで森林を管理し、砂漠化や土地の劣化を防ぐとともに、生物多様性の損失を阻止する」こと。

この目標を達成するために、世界全体で新規植林及び再植林の大幅増加、生物多様性を含む山地生態系の保全などといった12のターゲットが定められています。

日本国内での取り組んでいること

次は、森林破壊を食い止めるために行われている、日本での取り組みについてみていきます。

クリーンウッド法の施行

クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)とは、日本や原産国の法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材・その製品の流通及び利用促進を目的とした法律で、2017年5月20日に施行されました。

対象となる木材や木材関連事業者などの登録制度などを定めたり、国や木材関連事業者が取り組むべき措置について定めています。日本はもちろん地球全体の環境の保全に資することを目指しています。

グリーン購入法の施行

グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)は、国等の機関にグリーン購入を義務づけるとともに、地方公共団体や事業者・国民にもグリーン購入に努めることを求める法律で、2001年4月に施行されました。製品やサービスを購入する際に、環境を考慮して、必要性を考え、環境への負担ができるだけ少ない製品やサービスを選び、環境負担の軽減に努める業者から優先して購入することが大切と謳っています。

個人や消費者として私たちにできること

では、私たちは消費者として何ができるのでしょうか。次のようなことが挙げられます。

・買う前に本当に必要かどうか考える
・原材料がリサイクルされている物を選ぶ(再生紙など)
・植物や動物を採りすぎず、生き物の棲家を脅かしていない商品を選ぶ
(森林保護に関する第三者認証マークを取得した製品や、植物の由来の説明が表示された商品の購入など)
・低・無農薬、有機肥料で育てた材料を使った物を選ぶ
・旬の物や地場の物を選ぶ
・サイズ調整ができる洋服など長く大切に使える物を選ぶ
・共同利用やレンタルを積極的に利用する
・修理や部分交換しやすいもの、リフォームできる物を選ぶ
・過剰包装されていない物を選ぶ
・詰め替えができる商品を選ぶ
・マイバッグやマイボトル、マイ箸を使う
・リユースびんを選ぶ
・どうしてもゴミになるものは正しく分別する

森林破壊の現状や原因を知って、私たちにできることを考えよう

森林破壊について、現状や原因、世界や日本での取り組みについてご紹介しました。森林破壊と聞くと、なかなか身近なことに感じられない人もいるかもしれませんが、実は私たちの日常生活と深く関わっていることに気付いたのではないでしょうか。限りある資源を大切にし、豊かな未来を実現するためには、地球上に住むみんなの意識が大切です。ぜひみなさんも自分にできることから始めてみませんか。