森林の働きとは?森林が果たす役割について詳しく紹介【イラスト入り】

森林の働きとは?森林が果たす役割について詳しく紹介【イラスト入り】

森林は、私たちの日々の生活にさまざまな恩恵をもたらしてくれています。だからこそ、森林の働きや、森林の機能を維持・向上していく方法について、詳しく理解しておくことが大切です。今回は、森林の8つの機能について、イラスト入りで解説します。子ども向けの教育コンテンツも紹介していますので、お子さんたちにもぜひ案内してみてください。

森林の働きや役割。森林の8つの機能

森林には、さまざまな働き・役割があるとされています。森林の8つの機能について、見ていきましょう。

森林の8つの機能

森林の機能

①:水を蓄え、水害を防ぐ「水源かん養機能」

1つ目の機能は、水を蓄え、水害を防ぐ「水源かん養機能」です。森林の土壌は、有機物やさまざまな生物によって、スポンジのような構造となっています。スポンジが多くの水を蓄えられるのと同様に、森林の土壌も多くの雨水を蓄えることが可能です。

草が1本も生えずに土がむき出しになっている「裸地」と森林の土壌を比較した場合、森林には雨水を地中に浸透させる力が約3倍もあるとされています。土壌に十分蓄えられた雨水はゆっくり河川に流れていくため、川の水量が一定に保たれ、洪水や渇水といった水害を防ぐことができます。また、雨水が土壌を通る中で水が濾過・浄化され、私たちの飲水となるのです。

②:土壌の流出や土砂崩れを防ぐ「土砂災害防止・土壌保全機能」

2つ目の機能は、土壌の流出や土砂崩れを防ぐ「土砂災害防止・土壌保全機能」です。森林の土壌は樹木や落枝・落ち葉、草などに覆われているため、雨水が直接当たることがありません。そのため、雨水が土壌を削ったり、土壌が流出したりすることを防げます。また、地中にはりめぐらされた樹木の根には、土壌を森林の斜面にしっかりとつなぎとめる機能もあります。このように、森林は土砂災害を未然に防ぐ役割を担っているのです。

③:二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を防ぐ「地球環境保全機能」

3つ目の機能は、二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を防ぐ「地球環境保全機能」です。森林は、地球温暖化の主要因である二酸化炭素を蓄えることができます。私たちの日常生活において、二酸化炭素排出を完全に「ゼロ」にするのは困難だとされています。しかし、植樹や育樹を適切に行うことにより、森林による二酸化炭素の吸収効果を高めることができるのです。

④:生き物のすみかや生態系を守る「生物多様性保全機能」

4つ目の機能は、生き物のすみかや生態系を守る「生物多様性保全機能」です。さまざまな植物が生い茂る森林は、動物たちにとっては、「食べ物を採れる場」であると同時に、「眠る場所」や「敵から身を守る場所」でもあります。

また、日本の国土の約7割を占める森林には、草花や苔などの植物や、キノコを始めとする菌類、微生物、昆虫、爬虫類、哺乳類、鳥類など多種多様な動植物が、豊かな生態系を形成しています。こうした理由から、森林を守っていくことは、生物多様性を保全していくことにつながるのです。

花と蝶
image by Matthew Bargh on Unsplash

⑤:音や風などを防ぎ、快適な生活環境を作る「快適環境形成機能」

5つ目の機能は、音や風などを防ぎ、快適な生活環境を作る「快適環境形成機能」です。樹木の上の方に葉が生い茂っている部分である「樹冠」には、ちり・ほこりや汚染物質などの吸収機能や防音機能があります。森林には風を弱める効果もあるため、日本各地に防風林が存在しています。

また、森林の蒸発散作用により夏場の気温が低下するため、都市部におけるヒートアイランド現象の抑制にもつながるでしょう。私たちが快適に生活するために、森林はなくてはならないものなのです。

⑥:健康増進や気分転換に効果的な「保健・レクリエーション機能」

6つ目の機能は、健康増進や気分転換に効果的な「保健・レクリエーション機能」です。森林に出かけた際、心身ともに「安らぎ」や「癒やし」を感じたことがある人も多いでしょう。実際、「精神的・肉体的ストレスがある人にとって、森林は安らぎ・癒やしの場であること」や「樹木が発散する揮発性物質が健康増進につながること」などを示した実証的な研究データもあります。こうした効果があるため、森林は多くの人々に愛されているのです。

⑦:行楽や芸術の対象としての「文化・教育機能」

7つ目の機能は、行楽や芸術の対象としての「文化・教育機能」です。森林は、「森林浴」や「キャンプ」「山登り」といった行楽の対象だけにとどまりません。日本人の「自然観の形成」や「伝統文化の伝承」においても、重要な役割を担っています。幼少期に自然に触れる経験をすることが、「学びに対する意欲向上」や「道徳観・正義感の形成」につながるとされていることもあり、環境教育や体験学習の場として、森林を訪れたことがある方も多いでしょう。このように、文化・教育という観点でも、森林は活用されているのです。

⑧:木材やキノコなどを生み出す「物質生産機能」

8つ目の機能は、木材やキノコなどを生み出す「物質生産機能」です。森林は、住宅や薪などを作るのに欠かせない「木材」や、食卓を豊かにする「キノコ」「山菜」、実用品・工芸品に用いられる「竹」など、さまざまな資源を私たちに提供しています。森林を適切に管理することにより、こうした資源は、半永久的に繰り返し使用できる「循環型資源」となります。こうした豊かな資源を生み出す森林は、私たちの暮らしを支え続けているのです。

木材
image by Pär Pärsson on Unsplash

森林の機能を維持・向上していくために

さまざまな機能を有する森林は、私たちにとって、とても大切なものです。私たちの子どもたち・孫たちの代にまで豊かな森林を残していくためには、森林の機能を維持・向上していく必要があります。

まずは、私たち一人ひとりが、森林の働きを理解し、その重要性を再認識することから始めましょう。例えば、「森林破壊」を始めとする森林の現状や、森林の恩恵を人々の暮らしにもたらす「林業」の現状・課題について学ぶことも重要です。その上で、「再生紙を使用する」「森林保護に関する第三者認証マークを取得した製品を選ぶ」「林業や関連した事業に携わる」など、森林を守るためにできることを一人ひとりが考え、実行していけるとよいでしょう。

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森林の緑
image by Zoltan Tukacs on Unsplash

森林の働きを、子どもたちに伝えるには?

森林の機能を維持・向上していくためには、私たち大人だけでなく、未来を担う子どもたちにも、森林の働きを知ってもらうことが大切です。森林の働きを子どもたちに理解してもらうためには、動画やマンガ、キッズ向けのHPなどを活用するとよいでしょう。

おすすめの教育コンテンツを紹介します。

動画でわかりやすく学ぶ

NHKの小学校5年生向け学校放送番組『未来広告ジャパン!』のHPでは、『森林とわたしたちのくらし』という動画を公開。森林の大切さや林業の現状などを、子どもたちにもわかりやすい言葉で伝えています。

(参考:NHK for School「未来広告ジャパン!|森林とわたしたちのくらし」)

マンガで楽しみながら学ぶ

林野庁のHPでは、『マンガで知ろう!森林(森の働き) 森林づくり』というコーナーで、複数のマンガ・イラストを公開。タッチがかわいい作品も公開されており、森林の働きについて、楽しみながら学ぶことができます。

(参考:林野庁「マンガで知ろう!森林(森の働き) 森林づくり」)

キッズ向けのHPで詳しく学ぶ

林野庁の関東森林管理局は、森林について学べるキッズ向けのHP『キッズページ』を公開。森林のイラストをクリックすると、森林のさまざまな働きについて、詳しく知ることができます。

(参考:林野庁関東森林管理局「キッズページ」)

森林を歩く子どもたち
image by Jamie Taylor on Unsplash

私たちの未来のために、森林の働きを高めよう

森林には、「土砂災害防止・土壌保全機能」や「地球環境保全機能」「生物多様性保全機能」など、さまざまな機能があります。森林の機能を維持していくためには、大人も子どもも、森林の働きを理解し、その重要性を再認識することが大切です。私たちの未来のためにできることを一人ひとりが考え、実行し、森林の働きを高めていきましょう。