株式会社ADXが日本初の木造ハイブリットビル「KITOKI」を日本橋兜町に建設。都市建築における木の可能性を開拓

株式会社ADXが日本初の木造ハイブリットビル「KITOKI」を日本橋兜町に建設。都市建築における木の可能性を開拓

株式会社ADXは2022年7月12日、平和不動産株式会社が推進する日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトにおいて、日本初(※)となる木造ハイブリット・都市型高層建築「KITOKI」が完成したと発表しました。SRCメガストラクチャーと耐火木造を組み合わせた“ハイブリッド構造”を採用した同ビルは、国土交通省「令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されています。

※同社調べ(2020年5月時点、「日本国内のSRCメガストラクチャーと耐火木造を組み合わせた建築物」として)

SRCメガストラクチャー×耐火木造の“ハイブリッド構造”

ADXは、「森と生きる。」をフィロソフィーとし、自然と共生する建築を最重視。自然に戻しやすい素材だけを使う工夫や建材のトレーサビリティの設計、さらには建築が増えるほど森が豊かになっていく「リジェネラティヴ」な環境再生型の事業展開を目指しています。今回完成した「KITOKI」は、RC造による3層飛ばしのメガストラクチャーの内側に、3層ごとの木造建築を組み合わせることで、10階建てのオフィス兼店舗を建設しました。

KITOKI全景

建物全体の構造性能はRCメガストラクチャーにより担保し、その中に木造3階建ての建物を自立させることで建物全体の軽量化に成功。地震力や基礎等への負担を軽減できるうえ、将来的な増改築が容易になるなど合理的な構造になっています。

KITOKIの構造図と断面図

 ”バイオフィリック・デザイン”で自然とのつながりを重視 

木材を多用し自然を感じられるようにデザインすることで、無機質なイメージの強い都心の金融街に温かみのある空間を生み出すことを目指したそう。

KITOKIのデザイン画像2点

ビルの外観を印象付ける4本の柱には、それぞれカブトムシ・トンボ・テントウムシ・バッタの4種類の昆虫の羽のデザインが施されています。これは、デザインデータとNC加工機を連動し製作した木製型枠にコンクリートを打設・転写させることで実現。従来のコンクリート柱に比べて、表面を有機的で柔らかな表情に仕上げられています。またこの木製型枠は内装材や館内アートピースに転用されており、木材が無駄なく活用されているのも特徴です。

エントランス部分を含む1〜3階部分の梁には、秋田県産の栗の木を丸太のまま使用。改質水と抗火石を使った日本初の木材乾燥機「woodbe(ウッドビー)」を用いて人工乾燥させているため、通常だと天然で数年必要とされる広葉樹の乾燥期間を大幅に圧縮し、コストも削減しているとのこと。

館内アートピースと秋田県産の栗の木を使った梁

RC造と比べて約27%のCO2削減を実現

建築のライフサイクル全体の環境負荷のうち、50〜60%が材料調達から建設までの過程で発生すると言われています。そのため、建築におけるCO2削減を実現するためには、建設段階でどれだけ環境負荷を低減するか、どのようなマテリアル(建材)を使用するかが重要になると言います。CO2削減に積極的に取り組む同社は、デンマーク・コペンハーゲンの環境建築コンサルティング会社「henrik-Innovation(ヘンリック イノベーション)」の協力のもと、初期的なライフサイクルアセスメントを実施。木造を組み合わせることによって、同規模のRC造と比べて約27%のCO2削減を実現しました。

木の温かみが感じられるオープンテラス空間にも注目

同ビルの1階には、外構をまちの人が集う公共空間として活用することを目的にオープンテラスが整備されています。

オープンテラス

オープンテラスには、同社がデザイン・制作し、多様なシーンでの活用が可能な木材のブロック「Kabulock(カブロック)」を組み合わせたウッドテーブルとベンチを設置。木の温かみを感じられる空間は、ワーカーや来街者が読書や食事、待ち合わせなど自由に使うことができ、憩いやにぎわいの場となることが期待されています。

木材のブロック「Kabulock(カブロック)」