森林を守る「FSC認証」とは?マークの意味や仕組み、商品事例を紹介

森林を守る「FSC認証」とは?マークの意味や仕組み、商品事例を紹介

商品パッケージなどについた「FSC認証マーク」を見たことがある方も多いのではないでしょうか。FSC認証は、森林管理協議会(Forest Stewardship Council)によって発行される国際的な認証システムです。

この認証は、森林が環境的に適切で、社会的に有益であり、経済的にも持続可能な方法で管理されていることを保証するものです。今回の記事では、FSC認証について、マークの意味や認証の仕組み、メリットのほか、企業の商品事例などを交えてわかりやすく解説します。

FSCとは?

FSC(森林管理協議会/Forest Stewardship Council)は、責任ある森林管理を普及させるために設立された国際的な組織です。

1990年代、国際的に加速する大規模な森林破壊とそれに伴う環境破壊や社会的問題に対し、世界的な森林認証システムが必要であるという機運が高まりました。そうした中で、1994年に法人として正式に発足し、メキシコのオアハカにFSC事務局が設置されました。

FSC認証の仕組み

FSCが定める「FSC認証」は、環境や社会、経済において、責任ある管理がなされている森林をはじめ、適切に管理された森林の木を使用した製品に対して認められる証です。

「環境を守り、悪影響を抑えている」「労働者の権利や安全が守られている」といった世界共通の規格「10の原則と70の基準」が設けられており、この規格に沿って審査されます。

なお、審査はFSCが承認した「独立した第三者認証機関」が行います。規格を満たしていると判断された場合に、FSC認証が与えられる仕組みです。

FSC認証の10の原則

先に述べた、FSC認証における「10の原則」は、下記のとおりです。

原則1: 法律の順守(法律や国際的な取り決めを守っている)
原則2: 労働者の権利と労働環境(労働者の権利や安全が守られている)
原則3: 先住民族の権利(先住民族の権利を尊重している)
原則4: 地域社会との関係(地域社会の権利を守り、地域社会と良好な関係を保っている)
原則5: 森林のもたらす便益(森林のもたらす多様な恵みを大切に活かして使っている)
原則6: 森林の多面的機能と環境への影響(環境を守り、悪影響を抑えている)
原則7: 管理計画(森林管理を適切に計画している)
原則8: モニタリングと評価(管理計画の実施状況を定期的にチェックしている)
原則9: 高い保護価値(HCV)(保護すべき価値のある森などを守っている)
原則10: 管理活動の実施(管理活動を適切に実施している)

(引用:FSCジャパン公式サイト「原則と基準」)

上記は、責任ある森林管理の原則であり、この原則に加えて70の基準と、各国の状況を考慮した200~300の指標が定められています。これら原則、基準、指標が認証審査におけるチェック項目となっています。厳しい基準をクリアしたうえで、認証されているということがわかりますね。

FM認証とCoC認証

FSC認証の仕組みには、大きく分けて2つの認証があります。FM認証(Forest Management/森林管理認証)とCoC認証(Chain of Custody/加工流通過程の管理)です。それぞれの違いを、簡単にご説明します。

FM認証

FM認証は、責任ある森林管理に対する認証です。これはFSCの理念である「環境保全の点から見ても適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理」を具体化したものとなっています。

CoC認証

CoC認証とは、FM認証を受けた森林から生産された木材が、他の不適格な木材と混ざらないよう、適切に管理・加工されていることを認証する制度です。FSC認証製品に、「FSC認証」の表示を付けて販売および宣伝するには、関係する全ての業者が必ずCoC認証を取得していなければなりません。CoC認証を取得していない業者を経た場合、認証製品とは認められません。

FSC認証マークと3種類のラベル

FSC認証マークには、「FSCロゴ」「ラベルタイトル」「ラベルテキスト」「メビウスループマーク」「ライセンスコード」が記載されています。ライセンスコードとは、認証取得者の番号です。FSCのホームページ内で番号を検索すると認証取得者に関する詳細な情報を確認することができます。またラベルタイトルには3種類あり、「FSC100%」「FSCミックス」「FSCリサイクル」いずれかが掲示されています。それぞれのラベルの意味は下記の通りです。

①FSC100%

FSC100%は、FSC認証林から生産した原料を100%使用している製品に付けられています。

②FSCミックス

FSCミックスは、FSCが認める的確な原材料が複数組み合わされている製品に付けられています。

③FSCリサイクル

FSCリサイクルは、回収原材料を100%使用している製品です。木材製品の場合、回収原材料の70%が消費者に使用され、回収された原材料である場合にのみ付けられます。

FSC認証の取得の流れ

FSC認証を取得するには5つのステップがあります。

<ステップ1>認証機関への問い合わせ
<ステップ2>認証機関の決定
<ステップ3>認証機関による審査
<ステップ4>認証機関による認証判断
<ステップ5>FSC認証取得

FSC認証は、FSCが直接認証を行うのではなく、独立した第三者認証機関が提供しています。日本国内でFSC CoC認証サービスを提供している認証機関は、6社あります。そのうち、FM認証の実績を持ち、新規顧客を受け付けている認証機関は2社です(2023年10月現在)。

FSC認証について検討している企業や団体の方は、まず認証機関へ問い合わせることから始めてみましょう。

【商品例あり】日本国内におけるFSC認証の企業事例

日本国内でもFSC認証を導入している企業や自治体があります。ここでは具体的な事例についてご紹介します。

スターバックス コーヒー ジャパン

スターバックス コーヒー ジャパンでは、2013年より、ペーパーカップやペーパーナプキン、ドリンクに使うミルクパックといった幅広い紙製品にFSC認証紙を導入を開始。現在では主な紙製品がFSC認証紙に置き換わり、さらにスターバックスでは紙そのものを減らす取り組みとしてタンブラーやリユーザブルカップの利用促進に努めています。

ポプラ社

児童書などを手掛けるポプラ社では、2019年よりFSC認証紙を使用した児童書の出版を開始。アニメ化もされ、子どもたちに人気の児童書『おしりたんてい』(作・トロル)が、FSC認証製品として刊行されました。ポプラ社は、将来的にFSC認証製品を書籍製造のスタンダードにすることを目指しています。

日本郵便

日本郵便では、2022年用年賀はがきからFSC認証紙を採用しています。2022年用年賀はがきは、当初発行枚数18.3億枚。膨大な量の紙がFSC認証紙となりました。また年賀はがきだけでなく通常のはがきについてもFSC認証紙への切り替えを進めています。

宮城県南三陸町

宮城県南三陸町では、「自然と共生するまちづくり」を基本理念の一つに掲げ、震災復興に取り組んでいます。取り組みの中で南三陸杉のブランド化と適切な森林管理を目指し、町有林を含む複数の森林でFM認証を取得。また南三陸町では、養殖水産業版のFSCとも言われるASC認証(Aquaculture Stewardship Council: 水産養殖管理協議会)も取得しており、森林だけでなく海の自然環境に対しても配慮を行っています。

静岡県浜松市

静岡県浜松市では、徳川家康にゆかりがある「浜松城」と、児童施設「浜松こども館」のリニューアルにあたり、国産的森林認証制度FSC認証木材である浜松市の天竜材を使用しました。このリニューアルプロジェクトは株式会社乃村工藝社と共に行われ、城および公共の類似児童施設としては、全国初のFSCプロジェクト認証を取得しました。浜松市は、2010年3月にFSC認証を取得し、FSC認証材の生産量は全国トップクラスの自治体となっています。

FSC認証が企業・個人にもたらすメリット

では、実際にFSC認証は私たちの暮らしにおいてどのようなメリットがあるのでしょうか。企業・個人にもたらすメリットについてご紹介します。

企業に対するメリット

FSC認証が企業にもたらすメリットは、以下が挙げられます。

  • 森林環境の保全に努められる
  • 森林破壊に加担するリスクを減らすことができる
  • 他社との差別化が図れる
  • 消費者や投資家にアピールできる

木や紙製品を扱う企業以外でも、名刺やパンフレット、製品カタログにFSC認証紙を導入するといった企業もあります。FSC認証を受ける、または受けた製品を導入することで森林環境の保全に貢献できるだけでなく、企業として消費者や投資家にもアピールすることができるでしょう。

個人に対するメリット

FSC認証が個人にもたらす最大のメリットは、森林破壊に加担せずに済むことです。FSC認証製品を選び、購入することで間接的に環境保全に貢献することができます。導入事例で挙げた企業の製品を選ぶ、あるいは木や紙製品を購入時にFSCのラベルがついているかチェックするといったアクションは、森林環境を守る行動へとつながります。

例えば、長野県にある齋藤木材工業株式会社では、FSC-CoC認証を取得し、信州唐松材をいかしたビジネスを行っています。同社では、構造用集成材を生産する際に発生する、建材として活用できない約7割の部分を「信州産カラマツ薪」として加工し、通販サイト「森の中ストア」にて販売しています。これも、持続的な森林循環の維持を目指した取り組みです。森林環境を守る行動の一つとして、薪の購入を検討してみるのはいかがでしょうか。

FSC認証の取り組みを応援しよう

FSC認証は、適切に管理されている森林を認証し、そこから生産された木材や製品が目に見える形で消費者へと届けるための仕組みです。FSC認証製品を選ぶ、FSC認証を受けている企業を応援することは、森林環境を守るアクションにつながります。

知らずに森林破壊に加担してしまうようなことを避けるためにも、FSC認証の取り組みを応援しましょう。まずは、手に取った製品にFSCラベルが付いているかどうか、チェックすることから始めてみませんか。