持続可能な社会とは?基礎知識から個人ができることまでを解説

持続可能な社会とは?基礎知識から個人ができることまでを解説

近年、持続可能な社会を目指し、さまざまな取り組みが進められています。しかし、「言葉は聞いたことあるけれど、具体的に何をしたらいいのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。今回は、地球環境や将来世代のためにも目指すべき持続可能な社会について、基礎知識から個人ができることまで解説します。

持続可能な社会とは

持続可能な社会とは、現役世代のニーズを満たしつつ、将来世代のために地球環境や自然を保全していく社会を指します。「持続可能」という考え方は、1987年「国連の環境と開発に関する世界委員会(WCED)」の最終報告書にて提唱されました。以来、持続可能な社会あるいは持続可能な開発という考え方は、環境問題における世界的な取り組みの基礎となっています。

持続可能な社会が求められている背景

持続可能な社会が求められている背景には、世界的な人口増加や経済活動に伴う気候変動をはじめ、海洋汚染や生物多様性の減少といった数々の危機的状況が挙げられます。しかし、すべての社会活動や経済活動を地球環境のために停止することは困難です。そこで「持続可能な社会」という考えが注目され、SDGsをはじめとする取り組みが世界的に行われるようになりました。

持続可能な開発目標(SDGs)について

持続可能な社会を目指すために立てられた目標が「SDGs(持続可能な開発目標)」です。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年の国連サミットにおいてすべての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。SDGsは、2030年までにその目標を達成し、持続可能なよりよい社会を目指すことを目的にしています。

17の目標と169のターゲット

SDGsは、17の目標と169のターゲットで構成されています。SDGsにおける17の目標は以下の通りです。

目標1:貧困をなくそう
目標2:飢餓をゼロに
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標6:安全な水とトイレを世界中に
目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
目標8:働きがいも経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標12:つくる責任つかう責任
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう
目標16:平和と公正をすべての人に
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ターゲットは、17の目標を実現するために設定されており、目標ごとに数個から数十個のターゲットが設定されています。例えば、「目標1:貧困をなくそう」のターゲットは、以下の通りです。

1-1.2030年までに、世界中で「極度に貧しい」暮らしをしている人をなくす。
1-2.2030年までに、それぞれの国の基準でいろいろな面で「貧しい」とされる男性、女性、子どもの割合を少なくとも半分減らす。
1-3.それぞれの国で、人びとの生活を守るためのきちんとした仕組みづくりや対策をおこない、2030年までに、貧しい人や特に弱い立場にいる人たちが十分に守られるようにする。
1-4.2030年までに、貧しい人たちや特に弱い立場にいる人たちをはじめとしたすべての人が、平等に、生活に欠かせない基礎的サービスを使えて、土地や財産の所有や利用ができて、新しい技術や金融サービスなどを使えるようにする。
1-5.2030年までに、貧しい人たちや特に弱い立場の人たちが、自然災害や経済ショックなどの被害にあうことをなるべく減らし、被害にあっても生活をたて直せるような力をつける。

3つのバランス

SDGsにおける17の目標は、3つの層に分類し、「SDGsウェディングケーキモデル」として総合的に捉えることができます。これは、ストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム氏らによって提唱されたモデルです。このモデルでは、「環境」が土台としてあり、その上に「社会」、社会の上に「経済」が成り立っていることを示しています。

目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
経済目標8:働きがいも経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標12:つくる責任つかう責任
社会目標1:貧困をなくそう
目標2:飢餓をゼロに
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標16:平和と公正をすべての人に
環境目標6:安全な水とトイレを世界中に
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう

参考:Stockholm Resilience Centre『The SDGs wedding cake

5つのP

SDGsの17の目標を、5つのキーワード(People, Planet, Prosperity, Peace, Partnership)に分類することにより、それぞれの目標の関係性がイメージしやすくなります。それぞれの分類は下記の通りです。

人間
 (People) 
すべての人の人権が尊重され、尊厳をもち、平等に、潜在能力を発揮できるようにする。貧困と飢餓を終わらせ、ジェンダー平等を達成し、すべての人に教育、水と衛生、健康的な生活を保障する目標1:貧困をなくそう
目標2:飢餓をゼロに
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標6:安全な水とトイレを世界中に
地球
 (Planet)
責任ある消費と生産、天然資源の持続可能な管理、気候変動への緊急な対応などを通して、地球を破壊から守る目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
目標8:働きがいも経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標11:住み続けられるまちづくりを
豊かさ
 (Prosperity)
すべての人が豊かで充実した生活を送れるようにし、自然と調和する経済、社会、技術の進展を確保する目標12:つくる責任つかう責任
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう
平和 
(Peace)
平和、公正で、恐怖と暴力のない、インクルーシブな(すべての人が受け入れられ参加できる)世界を目指す目標16:平和と公正をすべての人に
パートナーシップ
 (Partnership)
政府、民間セクター、市民社会、国連機関を含む多様な関係者が参加する、グローバルなパートナーシップにより実現を目指す目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

参考:公益財団法人 日本ユニセフ協会『持続可能な開発目標(SDGs)』『SDGsって何だろう?

持続可能な社会に向けた世界の取り組み

持続可能な社会に向け、どのような取り組みが行われているでしょうか。まずは、世界の取り組みについてご紹介します。

ドイツ

image by Christian Wiediger on Unsplash

長年、持続可能な開発に取り組んできた環境先進国ドイツ。2002年に「国家持続可能性戦略」を策定し、2016年にはSDGsの17目標に基づいた改訂を実施しました。またSDGsに関する専用のページを開設し、達成状況をグラフでわかりやすく可視化しています。ドイツの企業においても持続可能な製品やサービスを展開しており、スポーツ用品の大手メーカーであるアディダスでは、海岸などで回収されたプラスチック廃棄物から作ったアップサイクルの糸から靴を製造、販売までを行っています。

参考:独立行政法人日本貿易振興機構『多様な分野で持続可能な製品・サービスの投入進む(ドイツ)

フランス

プラスチックや繊維・靴製品の廃棄物削減を中心にSDGsに取り組んできたフランスでは、2016年にレジ袋、2020年からはグラス、コップ、皿など、2021年にはストローやカトラリーなどで使い捨てプラスチックの使用を段階的に禁止してきました。また2010年からはリサイクル促進のためのイノベーションを支援する「イノベーションチャレンジ賞」を実施するなど、繊維・靴製品の廃棄物削減にも取り組んでいます。

参考:独立行政法人日本貿易振興機構『プラスチック、繊維製品の廃棄物削減に向けて進む官民の取り組み(フランス)

アメリカ

アメリカでは、「2030年までに米国の温室効果ガス排出量を2005年比で50~52%削減する」ことを目標として掲げています。この目標に基づいて「連邦サステナビリティ計画」が策定され、計画の主要目標として「2030年までに連邦政府の施設を太陽光や風力といった炭素排出のない電力で運営する」などを設定。また2020年には米国プラスチック協定を制定し、2025年までにアメリカ国内のプラスチックパッケージを再利用可能、リサイクル可能、あるいは堆肥化可能にする計画と戦略を設けています。

参考:独立行政法人日本貿易振興機構『北米企業のSDGsに対する取り組みに関する調査

持続可能な社会に向けた日本の取り組み

次に、日本における持続可能な社会に向けた取り組みについてご紹介します。

ジャパンSDGsアワード

ジャパンSDGsアワードとは、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行っている企業・団体等を、SDGs推進本部として表彰する仕組みです。2017年に創設され、これまでに企業をはじめ、NPO法人、学校や地方自治体などさまざまな団体が、受賞し、その活動が認められています。

地方創生SDGs

地方創生SDGsでは、持続可能なまちづくりや地域活性化に向けた取り組みにSDGsの理念を取り入れることで、SDGsにおける17の目標や169のターゲットなどが行政や民間事業者、市民との共通言語になり得ると考えられています。また地方創生SDGsに関する取り組みでは、「経済」「社会」「環境」の3つの側⾯における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現する可能性が⾼い都市・地域を「SDGs未来都市」として選定しています。

持続可能な社会のため私たちにできること

持続可能な社会の実現に向け、私たち一人ひとりにもできることがあります。ここでは今日から取り組めるアクションについてご紹介します。

節電や節水を心がけよう

節電や節水は、地球の資源を守ることだけでなく、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出抑制にもつながります。普段何気なく使用している水は、私たちのもとに届く過程で電力を必要としています。そのため節水は、節電に加えてCO2排出抑制にもつながる、持続可能な社会に向けたアクションといえるでしょう。

フードロスを減らそう

フードロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。日本では、1日1人あたりお茶碗1杯分(約124g)もの食品ロスが発生しているといわれています。「目標2:飢餓をゼロに」や「目標12:つくる責任つかう責任」に向けて、フードロスを減らすことは効果的と考えられます。具体的なアクションとしては「食材別の保存方法を調べる」「消費期限内に使い切る」といったことが挙げられます。

グリーン購入に取り組もう

グリーン購入とは、商品をはじめ、サービスの必要性や環境および社会への影響を十分に検討した消費行動のことです。環境に考慮した消費は、エコな商品開発や流通することにつながり、持続可能な社会へと発展していくと考えられています。中でも「エコマーク」や「MSC認証・ASC認証」、「FSC認証」といった認証マークは、環境や社会に配慮されている商品かを判断する基準として有効です。

家事や育児を分担しよう

image by PlanetCare on Unsplash

家事や育児をパートナーと分担することは、SDGsにおける「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」につながります。日本では「夫は外、妻は家庭」といったジェンダー不平等な現状があり、家事や育児の負担が女性に偏っているといわれています。家事をリストアップし、それぞれの役割を決めるといった具体的なアクションを通して、パートナーとの価値観の共有や、負担の偏りを減らして行くことが大切です。

身近な不平等に対して声をあげよう

持続可能な社会を目指す上で、SDGsでは「誰一人取り残さない」ということを大切にしています。「目標10:人や国の不平等をなくそう」とあるように、国や人びとの間には不平等といえる状況があります。ジェンダーギャップや差別、いじめや家庭内暴力といった身近な不平等に声をあげることで、より持続可能な社会につながるでしょう。

持続可能な社会を目指してできることに取り組もう

持続可能な社会を目指すことは、将来世代だけでなく、現代を生きる私たちにとっても大切なことです。気候変動をはじめとする危機的状況に対し、持続可能な社会への理解を深め、一人ひとりがアクションを起こす必要があるでしょう。今回の記事を参考に、できることから持続可能な社会を目指してみるのはいかがでしょうか。