カーボンオフセットとは?種類やメリット、取り組み事例などを解説
カーボンオフセットとは、排出を避けることができないCO2などの温室効果ガスを、他のところで削減・吸収する活動で埋め合わせを行うこと。再生可能エネルギーの利用や省エネルギーの推進によるCO2排出削減、植林・森林保護活動によるCO2の吸収などによって、大気中のCO2量を相殺します。この記事では、カーボンオフセットの概要や、カーボンニュートラルとの違い、国内企業・団体の取り組み、個人でできるカーボンオフセットなどを紹介します。
Contents
カーボンオフセットとは
環境省は、カーボンオフセットを以下のように定義しています。
日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方 参考:環境省『J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて』 |
わかりやすくいうと、二酸化炭素(炭素=カーボン、carbon)を含む温室効果ガスについて、投資あるいは他の場所で削減して、相殺(オフセット、offset)することです。2009年3月に環境省がカーボンオフセットの認証基準を策定し、同年4月より、気候変動対策認証センターが、第三者認証機関としてカーボン・オフセット認証制度を実施しています。
カーボンオフセットの種類
カーボンオフセットには、次のような種類があります。
オフセット製品・サービス
商品の製造や販売、サービスを提供する企業が、製品・サービスのライフサイクル(原材料調達から廃棄・再利用、企画・準備から撤収まで)を通じて排出される温室効果ガス量をオフセットします。
会議やイベントによるオフセット
会議・イベント・スポーツ大会・コンサートなどで、主催者などが、開催に伴って排出される温室効果ガスをオフセットします。
自己活動によるオフセット
企業などが、自らの事業活動で排出される温室効果ガス量を、直接オフセットします。例えば、自社のオフィスで使用する電気や出張に伴って排出される温室効果ガスを、クレジットの購入でオフセットするなどの方法です。
クレジット付の製品やサービスによるオフセット
商品の製造・販売やサービス提供を行う企業、イベント主催者などが、商品やサービスにクレジットを付けて、購入者・消費者の日常生活に伴う温室効果ガス排出量をオフセットします。
寄付型のオフセット
商品の製造・販売やサービス提供を行う企業、イベント主催者などが、購入者・消費者に寄付を募ってオフセットを行います。製品・サービスの売り上げの一部をクレジット購入に用いることを宣言する、キャンペーンを行いアクセス数に応じてクレジットを購入・無効化するなどの方法があります。地球温暖化防止の活動に対して寄付するもので、特定の排出量をオフセットするものではありません。
カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違い
カーボンオフセットと似ている言葉に「カーボンニュートラル」があります。どちらも地球温暖化を抑える目的で進められている取り組みです。
カーボンオフセットは、排出される温室効果ガスについて、排出量に見合う投資や他の活動で削減を行うものです。一方、カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を、森林活動や海洋保全などで吸収・除去する量でバランスを取り、「実質ゼロ」にするという違いがあります。
カーボンオフセットに取り組むメリット
企業がカーボンオフセットに取り組むことには、さまざまなメリットがあります。
自社の温室効果ガス削減が難しくても実施できる
先述のとおりカーボンオフセットは、排出が避けられない温室効果ガスについて、他の活動で埋め合わせをするものです。自社単体では温室効果ガスの排出量削減が難しい場合でも、カーボンオフセットで排出量を相殺することが可能です。無理な設備投資などを行わずに排出量を削減(相殺)できるのは、カーボンオフセットに取り組むメリットといえるでしょう。
企業のイメージアップが期待できる
カーボンオフセットに取り組んでいることを外部に示すことは、自社のイメージアップにつながります。企業の環境問題に対する活動は、株主などステークホルダーが投資先を選ぶ際のポイントの一つとなっており、カーボンオフセットによって支援を受けやすくなる可能性が高まります。
クレジットとして他者に売却できる
国が認証する「J-クレジット制度」により、省エネルギー設備導入や森林管理などで削減・吸収された温室効果ガス量について、クレジットとして売買が可能です。そのため、自社が排出した温室効果ガスの量が想定よりも少なかった場合は、余った排出枠をクレジットとして他社に売却できます。カーボンオフセットのために行った設備投資などをクレジットの売却によって補い、さらなる投資に活用するなども可能となります。
参考:J-クレジット制度『認証済みのクレジット_売り出しクレジット一覧』
国内企業・団体におけるカーボンオフセットの取り組み事例
日本ではカーボンオフセットについて、どのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは国内企業や団体の事例を紹介します。
コベルコ建機株式会社
建設機械・運搬機械の製造と販売を行っているコベルコ建機株式会社は、自社独自の「カーボン・オフセット」プログラムを実施しています。顧客は、森林吸収クレジットが付加された建設機機を使用することで、機械の稼働で発生する温室効果ガスの一部をオフセットできます。
参考:コベルコ建機 日本サイト『コベルコ「カーボン・オフセット」プログラム』
ミドリ安全株式会社
ミドリ安全株式会社は、オフィスのユニフォームや安全靴・ヘルメットなどの製造・販売を行っている企業です。顧客に向けた環境保全活動の機会提供を目的に、温室効果ガス(CO2)排出量をオフセットする「カーボンオフセット・ユニフォーム」を販売しています。顧客は、当該ユニフォームを購入するだけで、温室効果ガスの削減に貢献することになります。具体的には、ユニフォームの製造工程で発生する温室効果ガスのうち、1点あたり3kgの温室効果ガスを「カーボンオフセット」で相殺します。
参考:ミドリ安全株式会社『地球温暖化を防ぐための、カーボンオフセット』
東北楽天ゴールデンイーグルス
プロ野球チームの東北楽天ゴールデンイーグルスは、2023年7月4日に東京で開催した試合で、観客1人あたり1kgの温室効果ガスを削減する「ブルーカーボンオフセット付チケット」を販売しました。岩手県洋野町のブルーカーボンを活用したもので、試合の開催に伴って排出される温室効果ガスについて、株式会社楽天野球団・楽天グループ株式会社・楽天エナジー株式会社・岩手県洋野町が連携してオフセットしました。
参考:楽天グループ株式会社 公式コーポレートブログ『野球観戦のチケットを買うと東北で海藻が育つ…?「ブルーカーボンオフセット」とは』
全日本ダートトライアル選手権
北海道砂川市で開催された全日本ダートトライアル選手権(2023年北海道ダートスペシャルinスナガワ)では、カーボンオフセット運動を実施しました。道有林と石狩市有林が創出している森林吸収のオフセットクレジットを活用したものです。競技用車両・運営管理者の車両・電力用発電機などによって発生する温室効果ガスの量を算定して、大会で発生した排出量を相殺。この大会では、会場での寄付と大会主催者により、オフセットクレジット3トン分が購入されています。
参考:AGメンバーズスポーツクラブ北海道『カーボンオフセット 2023年北海道ダートスペシャルinスナガワ』
カーボンオフセットのために個人でできること
カーボンオフセットは、設備投資や排出権の売買が必要なものばかりではなく、個人でできる取り組みもあります。例えば、カーボンオフセットクレジット付きの商品やサービスを購入する、カーボンオフセットの証明書を発行している「ふるさと納税」を利用するなどです。
その他に、節電を意識する、自家用車ではなく公共交通機関を使うなども重要です。カーボンオフセットはさまざまな方法があるため、無理なくできそうなことを探してみると良いでしょう。そもそものCO2排出量を減らす努力をした上で、カーボン・オフセットに取り組むことが大切です。
カーボンオフセットを取り入れて温室効果ガスの削減を
カーボンオフセットは、削減しきれない分の温室効果ガスを相殺して、自社の排出量削減につなげる取り組みです。地球温暖化を止めるのはもちろん、自社にメリットのある取り組みの一つとして、カーボンオフセットを検討してはいかがでしょうか。