循環型社会とは?企業の取り組み事例や個人ができることをわかりやすく解説

循環型社会とは?企業の取り組み事例や個人ができることをわかりやすく解説

循環型社会とは、資源の消費を抑えつつ環境への負荷を低減する社会のこと。従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会から脱却し、資源を有効活用しながら、環境への負荷を減らすことが目的です。この記事では、循環型社会の仕組みと、日本や世界の取り組み、国内企業の事例、個人でできることなどを解説します。

循環型社会とはどのような社会か

出典:環境省『循環型社会への新たな挑戦』1ページより抜粋

循環型社会とは、“大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会に代わるものとして提示された概念”と定義されています。わかりやすく説明すると、限りある資源をなるべく使わないようにしながら、再利用・再生で循環させてごみを減らし、環境にやさしい社会をつくることです。

参考:環境省『循環型社会への新たな挑戦

循環型社会が求められている背景

循環型社会が求められる背景には、従来の大量生産・大量消費型の経済による弊害が大きくなっていることが挙げられます。具体的には、気候変動(地球温暖化)による異常気象、天然資源の枯渇、廃棄物が環境に及ぼす深刻な影響などです。これらの問題に対応するため、世界的にも循環型社会への転換が求められており、日本でも循環型社会の実現に向けた取り組みが必要となっています。

循環型社会の実現に必要な「3R」とは

image by Teslariu Mihai on Unsplash

「3R(スリーアール)」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。3Rとは、「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の頭文字をとったものです。近年では、3Rからより環境配慮への取り組みを進めた「5R(ファイブアール)」を実践している自治体や企業もあります。5Rは、3Rに「Repair(リペア)」「Refuse(リフューズ)」を加えたものです。

  • Reduce(リデュース):ごみを減らす
  • Reuse(リユース):捨てずに繰り返し使う
  • Recycle(リサイクル):資源として再利用する
  • Refuse(リフューズ):不要な物(ごみになる物)を買わない・もらわない
  • Repair(リペア):修理・修繕しながら使い続ける

(※使った物を販売店に返す「Return(リターン)」や、大切に長く使う「Respect(リスペクト)」を取り入れている自治体もあります。)

環境と経済が両立した循環型社会を実現するには、事業者と個人が、それぞれの立場で3R・5Rに取り組むことが重要です。

参考:環境省『【特集】3R徹底宣言!』、江東区『今日からはじめる5R~5Rでごみを減量しましょう!~

「SDGs」との関係性

循環型社会とSDGsには、深い関わりがあります。SDGs(Sustainable Development Goals)とは、日本語で「持続可能な開発目標」と訳される、全世界共通の目標です。このSDGsでは、17の目標と169のターゲットが設定されています。

SDGs目標12の「つくる責任・つかう責任」は、限りある資源を守るために生産・消費のバランスを取り、持続性の確保を目指すものです。SDGs目標12の中には資源の有効活用や廃棄の削減などが明確に掲げられており、廃棄物の抑制や循環資源の利用など、循環型社会への取り組みを進めることで、SDGs目標達成に寄与すると考えられます。

日本の取り組み|「循環型社会形成推進基本計画」とは

循環型社会への取り組みの一環として、2000年に「循環型社会形成推進基本法(循環基本法)」が制定されました。この法律に基づいて「循環型社会形成推進基本計画」が策定され、おおむね6年ごとに見直しが行われています。

現在は「第四次循環型社会形成推進基本計画(2018年6月閣議決定)」が進められており、進捗状況の点検結果は、環境省のサイトで公開されています。

参考:環境省『循環型社会形成推進基本法』『循環型社会形成推進基本計画』『中央環境審議会循環型社会部会(第43回)審議結果

推進すべき7つの柱

政府は計画の中で、今後推進すべき「7つの柱」を掲げています。点検を実施するそれぞれの年度において、国が実施すべき取り組みや指標、評価及び点検を行うとともに、重点点検分野を定めるものです。

第四次循環基本計画における7つの柱は、次のとおりです。

出典:環境省『第四次循環型社会形成推進基本計画』3ページより抜粋

7つの柱それぞれに、将来像や取り組み、指標が設定されています。

例えば、「持続可能な社会づくりとの統合的な取組」では、シェアリング等の2R(リデュース、リユース)ビジネスの促進・評価、「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」では、再生材の利用拡大、プラスチック使用の削減などです。

循環型社会の実現にはより多くの人の協力が不可欠なため、国の取り組みに加えて、各自治体や企業の取り組みも重要となります。

参考:環境省『第四次循環型社会形成推進基本計画

世界的にさまざまな取り組みが行われている

循環型社会への移行は世界的に進められており、各国でさまざまな取り組みが行われています。

【アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム】
アジアの経済成長と環境保全の両立を図り、3Rを推進して循環型社会の構築を目指す会合。3Rと循環経済に関するハイレベルな政策対話の促進、各国における3Rプロジェクト実施への支援促進、循環経済構築に貢献する制度や技術の情報共有、関係者のネットワーク化などを目的に開催されます。2023年2月にカンボジアで第11回会合が開催され、第12回はベトナムで開催される予定です。 

参考:環境省『アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム第11回本会合の開催結果について

【欧州グリーンディール】
2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「気候中立」を目指して、雇用の創出と排出量の削減を促進する、EUの成長戦略。経済成長と資源利用を切り離して考え、EU経済における全ての産業・分野で、持続可能な経済へ移行を図ります。

参考:駐日欧州連合代表部(EEAS)『欧州グリーンディール

【事例】循環型社会を目指す企業の取り組み

国内企業で行われている、循環型社会を目指す取り組みを紹介します。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、循環型社会の実現に向けて、携帯電話サービスにおける「3R」活動に取り組んでいます。

  • リデュース:取扱説明書や請求書の電子化、店頭でのiPad活用など、紙資源の使用量を削減
  • リユース:携帯電話やタブレットの下取りを推進、新興国での再利用も実施
  • リサイクル:使用済み携帯電話の本体や電池パックなどを回収し、再資源化

また、同社の関連企業では、製品の小型化や軽量化による資源の使用量削減のほか、解体・分解しやすい構造とすることで部品の再使用・リサイクルを促進するなど、環境に配慮した製品設計・開発を行っています。

参考:ソフトバンク株式会社『循環型社会の推進

サラヤ株式会社

洗剤や消毒薬などの製造・販売が主幹事業のサラヤ株式会社は、開発から廃棄まで全ての工程で、持続可能な製品づくりを目指しています。環境負荷の低減を目指し、容器のリデュースや、環境に配慮した商品の新規開発などを実践。商品を使用する事業所に向けて、折りたたんで捨てられる容器を開発し、ごみの容積率を約70%削減することに成功しました。また、容器の厚みを薄くすることで、従来比で約50%のプラスチック使用量削減も実現しています。

参考:サラヤ株式会社『プラスチック廃棄物削減と循環型社会に向けて

循環型社会に向けて個人ができること

循環型社会をつくるには、個人(消費者)の努力も重要です。具体的にどのようなことができるのか、個人でできる取り組みを紹介します。

環境に配慮した商品を選ぶ

環境に配慮した商品を選ぶことが、循環型社会の実現につながります。「グリーン購入法適合」「FSC認証」「MSC認証・ASC認証」がついている商品や、次のようなものを選ぶと良いでしょう。

  • 原材料がリサイクルされているもの
  • 廃棄物を出すことなく再利用したもの
  • 修理・修繕が可能で、長く使えるもの
  • 資源やエネルギーの使用が少ないもの
  • 廃棄する際に処分が簡単なもの など

長野県にある齋藤木材工業株式会社は、3Rにつながる薪を販売しています。丸太を集成材に加工する際に出る端材を、薪ストーブやキャンプの焚火などで使用できる「信州産カラマツ薪」として製品化。建築資材と同様の人工脱脂乾燥を行っているため、含水率が低く、火が点けやすいのが特徴です。また、自然乾燥の薪と異なり、室内保管で虫が出にくいというメリットもあります。薪を購入する際は、森の循環に貢献できる良質な薪を選んではいかがでしょうか。

ごみを出さないようにする

ごみ(廃棄物)を出さないようにすることも、大切な取り組みです。身近なところでは、マイバックやマイボトルを持参するなど、使い捨て容器の使用を控えることでごみの削減につながります。食事の準備でも、予め献立を考えて材料を購入する、食べきれる量を調理するなどの工夫で、生ごみを減量できるでしょう。過剰包装や試供品のような自分が使わない物をもらわないことも、ごみを出さない取り組みとなります。

再利用を考える

何気なく捨てているものを捨てずに再利用することも大切です。例えば、修理サービスのある商品を購入して長く使う、自分が使わなくても他の誰かが使えるものはリサイクルショップに提供するなど、繰り返し長く使える方法を考えてみましょう。

循環型社会のために、できることから取り組もう

循環型社会は、日本を含め世界各国が関連法規を整備するなど、実現に向けて取り組んでいます。廃棄物の再資源化あるいは再利用、適正な処分など、自治体や企業の取り組みだけでなく、個人で取り組むことも重要です。限られた資源を大切にしながらごみを減らし、再利用あるいは再資源化できる工夫を行うなどして、環境への負荷を減らす生活をしていきましょう。