間伐材ってなに?使い道や商品の見分け方、使用するメリット・デメリットとは

間伐材ってなに?使い道や商品の見分け方、使用するメリット・デメリットとは

間伐材とは、森林整備のため樹木を間引くときに切られた木材のことです。“間伐材”とは耳にするものの、「そもそも間伐とは何か」「間伐材はどのような使い道があるのか」と気になる方もいるでしょう。今回の記事では、間伐材や間伐についての詳細とあわせて、間伐材の使い道や見分け方、使用するメリット・デメリットなどを紹介します。

間伐材とは樹木を間引くときに切られた木材のこと

間伐材とは、森林整備を行うときに切られた木材のことです。間伐された木々は、木材(間伐材)として利用する方法と、そのまま山に残す方法があります。

しかし、間伐した木々を山に放置すると土砂災害が発生したときに一緒に流れてしまい、被害が増してしまう可能性も。こうした被害や間伐した木の放置をなくすため、昨今では間伐材の有効活用が注目されています。

間伐材の利用率は少ない

林野庁による「木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の「木質バイオマスの発生量と利用料の状況」を見ると、日本では「林地残材」の利用料が2014年の9%から年々増加しており、2017年には24%にまで上昇しています。

しかし、少しずつ上昇しているものの依然として利用量は少なく、課題となっていることがわかります。

出典:林野庁『令和元年度 森林・林業白書』の「第1部 第3章 第2節 木材利用の動向(3)」より

これを受け、林野庁は「バイオマス活用推進基本計画」にて、2025年には30%以上とすることを目標と設定しました。今後は間伐材の活用方法をさらに検討していく必要があるといえるでしょう。

そもそも間伐とは?

出典:林野庁「令和4年度 森林・林業白書」

間伐とは、木々の成長を阻害しないよう一部を伐採して森林を整えることです。健全な森林を保つためには、森林資源を「植える」「育てる」「収穫する」「使う」の循環利用サイクルを確立させることが重要となります。

木を「育てる」ためには日光や水など環境を整える必要があり、そのために行うのが間伐です。間伐を行わずにいると、光が地表まで行き届かないため森林の中が暗くなり、木々の成長が制御されてしまうことで背の低い植物である下層植生が育たなくなってしまいます。

さらに、下層植生が消失することで土壌が流れやすくなり、地中の機能も低下。地中の機能が低下すると、樹木の成長が妨げられ根がもやし状に浮き上がった森林となったり、雨水を吸収して川の水へと還元する「かん養機能」が崩れたりするなどさまざまな影響が及びます。

間伐を行い過密となった木々の密度を調整することで、光が地表に届くようになり、低い位置に生息する植物である下層植生にも発達が促されるのです。これにより水や草木が流れにくくなるため、風害や山地災害にも強くなるでしょう。健全な成長を促すためにも、間伐は非常に重要な作業といえます。

間伐の方法は大きく分けて2種類

間伐の方法は大きく分けて、樹木の形状や品質を考慮して伐採する「定性間伐」と、樹木の品質にかかわらず直線的に伐採する「定量間伐」の2種があります。

また「定性間伐」はさらに、成長が芳しくない樹木(劣勢木)を切り取る「下層間伐」と、価値のある樹木(優勢木)を切り取る「上層間伐」の2つに分かれます。間伐の方法によって伐採される樹木の質や形状は異なるのが特徴です。

間伐方法方法の例対象となる木間伐実施後
定性間伐下層間伐劣勢木・被圧木※1・優勢木が残る
・均等な配置となる
定性間伐上層間伐優勢木・暴れ木※2・劣勢木が残る
・不均一な配置となる
定量間伐列状間伐伐採列全ての木・形質等に関係なく直線的に残る
・優勢木と劣勢木の比率は変わらない

※1被圧木:優勢木に圧迫されて成長が悪くなった木
※2暴れ木:周囲の木に比べて著しく成長の悪いまたは良すぎる木、隣の木に影響を与える木など

間伐材の使い道や商品の見分け方

間伐材にはさまざまな活用方法があります。例えば、以下のような使い道が挙げられます。

●紙類(名刺、はがき、封筒など)
●割り箸
●建築用材や集成材
●土木用材
●ペット用のトイレチップ
●木質バイオマス燃料(薪、木材チップなど)
●木炭

最近では、おもちゃ、木製タンブラー、コースターといった国産間伐材を利用したノベルティやギフトなどにも活用されています。

間伐材を使った製品を見分けるときは、製品に間伐材マークがあるかを見てみましょう。例えば、セブン-イレブンのコーヒーカップなど身近な日用品にも付いています。

ほかにも、インターネットで検索してみると間伐材を使った製品を知ることができるので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

間伐材を使用するメリットとデメリット

間伐材の使用にあたっては、以下のようなメリットやデメリットが挙げられます。

間伐材を使用するメリット

間伐材を使うことは環境維持に効果的です。適切な間伐作業を行うことは、森林環境を健全に保つのに欠かせません。しかし、間伐材を処分してしまっては、経済・環境ともに大きな負荷がかかります。

実際に、人手や資金の不足により現在の再造林費用は伐採材販売収入を上回っているのが現状です。また、手をつけられないままの森林もあるといいます。間伐材をさまざまな産業で活用することで林業や製材業の収入源が増え、環境保全や林業の活性化につながるでしょう。

さらに、間伐材を使った材木や木製品は、通常の木材よりも比較的リーズナブルなのが特徴です。間伐材を利用することで、資材のコストを抑えられるでしょう。

間伐材を使用するデメリット

前述したように、間伐方法によっては木の形状や質が異なるため、木材として使用できないことも。木そのものの質感を使用したい場合や無垢材として使用したい場合には、向かない可能性もあるでしょう。

また、間伐は木を伐採することに費用が発生しますが、伐採した木を処分することにも費用を要します。そのため伐採した木を処分せずに、そのまま放置しているケースも少なくありません。間伐材自体の流通量が少ないことから、必要量の確保が難しい場合もあるでしょう。

間伐材の利用はSDGsに貢献する

間伐材の利用は、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献するといわれています。二酸化炭素(CO2)を吸収したり、国土を災害から守ったりと、森林の持つ多くの働きを発揮させるためにも、木を使うことや育てることは大切な行動です。

森林・林業・木材産業では、「植える」から「使う」までのサイクル循環を前提として、SDGs17の目標のうち「15.陸の豊かさも守ろう」を中心に取り組んでいます。さらに、間伐材を利用することで水源かん養機能を整えること(6.安全な水とトイレを世界中に)や、持続可能な産業となること(12.つくる責任 つかう責任)などの目標達成にも貢献できるでしょう。

あわせて、昨今は動植物などから生まれた生物資源である「バイオマス」にも注目が集まっています。これは木材を原料とする木質バイオマスの“マテリアル利用”(9.産業と技術革新の基盤をつくろう)や、環境にやさしい“エネルギー利用”(7.エネルギーをクリーンに そしてみんなに)にも効果が期待できるでしょう。

参考:林野庁「森林×SDGs」

実際に、長野県にある齋藤木材工業株式会社では、集成材を生産する際に発生する端材を薪にして販売しています。集成材の使用が難しい部分を、木質バイオマスとして利用することで、廃棄物の量を抑制。持続的な森林循環を維持していくため、薪として付加価値を見出し、収益を長野県の山へと還元しています。

間伐材を活用して環境問題の解決に取り組もう

間伐材とは、森林保全のために伐採された木を利用した木材のことで、紙類や割り箸、集成材、バイオマス燃料など、さまざまな活用方法があります。しかし、間伐後に放置される木も多く、流通量も少ないのが現状です。

間伐材の利用は環境保全やSDGsの達成にも貢献できるため、「間伐材マークのついたものを買う」など、身近に取り組めることから始めてみるとよいでしょう。また、木材の購入や活用を考える際は、間伐材の利用を検討してみてはいかがでしょうか。