FSC認証制度におけるCoC認証を解説。取得のメリットや事例、林業・水産での違い
CoC認証とは、FSC認証制度を構成する認証の一つです。FSC認証とは、適切な森林管理および管理された森林の木材を使用した製品を認める森林認証制度で、CoC認証とFM認証の2つから成り立っています。今回は、FSC認証におけるCoC認証について基礎知識から取得するメリット、また水産におけるCoC認証との違いについても解説します。
Contents
CoC認証とは
CoC認証は、Chain of Custody(加工流通過程の管理)の略で、林業においてはFM認証(Forest Management/森林管理認証)とともに、FSC認証(Forest Stewardship Council/森林管理協議会)を構成する認証制度となっています。
FM認証が「責任ある森林管理を認証している制度」であるのに対し、CoC認証は「FM認証を受けた森林から生産された木材が、認証材以外の木材と混ざらないよう、適切に管理・加工されていることを認める制度」となっています。
FSC認証製品を販売および宣伝する場合、必ず関係する全ての業者がCoC認証を取得していなければなりません。流通過程でCoC認証を取得していない業者を経た場合、認証製品とは認められない仕組みとなっています。
なお、CoC認証の有効期限は5年間となっています。有効期限が切れる前に更新審査を受け、認証を更新する必要があり、またFSC認証基準を継続的に守っているかを確認するために、1年毎に年次監査を受ける必要もあります。
水産のCoC認証との違い
CoC認証は、水産業界においても取り入れられています。水産業界では、天然の水産物に対する認証であるMSC認証(Marine Stewardship Council/海洋管理協議会)と、養殖の水産物に対する認証であるASC認証(Aquaculture Stewardship Council/水産養殖管理協議会)の2つがあります。
それぞれ、水産資源や環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業を行っている証です。
MSCおよびASC認証におけるCoC認証は、水産物の水揚げ以降、認証された水産物が適切に管理され、非認証の物が混入することなく流通し、消費者へと届くことを目的としています。
FSC認証同様、MSCエコラベルもしくはASCラベルを表示する場合においても、関係する事業者がMSCあるいはASCのCoC認証を取得する必要があります。
CoC認証を取得するメリット
適切に管理された森林の木材を使用し、消費者に届くまでの過程を管理するCoC認証。CoC認証を取得した場合、下記のようなメリットがあるといえます。
1.FSC認証製品として販売可能になる 2.製品の差別化や新たな販路獲得が可能なる 3.流通における関係性やマネジメントの強化につながる 4.SDGsやCSR(企業の社会的責任)などにつながる
環境への配慮が求められる昨今、SDGsやCSRにつながるというメリットは大きいといえるでしょう。またFSC認証製品を販売および宣伝する場合、関係する全ての業者がCoC認証を取得しなければならないことから、流通における関係性が強化されることもメリットの一つです。
CoC認証を取得するには
木材を扱う事業者の中には、「これからCoC認証を取得したい」という方もいるかもしれません。ここでは、CoC認証の取得に関して、「種類」「費用」「取得の流れ」の3つのポイントからご紹介します。
なお、CoC認証はFSCが直接行うのではなく、認定を受け独立した第三者認証機関が行っています。
CoC認証の種類
CoC認証には3種類の取得方法があります。1つの組織単独で認証を取得する単独認証。複数の小規模組織が共同で1つの認証を取得するグループ認証。同一組織が同じ国内の複数の組織を管理・運営している場合に、1つの認証としてまとめて取得できるマルチサイト認証です。CoC認証は、単独・グループ・マルチサイト認証のいずれかで取得する形になります。
なお、グループ認証の場合、審査がサンプリングにより行われることから、各メンバー組織が単独認証を取得するよりも、認証取得・維持にかかる費用を抑えることができるでしょう。ただし、グループ認証の場合、認証管理の責任をもつグループ体は、各グループに参加するメンバーがCoC規格の要求項目を満たせるよう義務を果たしているか、監視する責任があります。
取得にかかる費用
CoC認証の取得にかかる費用は、事業所の規模、業務形態、単独・グループ・マルチサイト認証などによって異なります。費用の内訳には以下が挙げられます。
1.審査費用 2.年間管理費用 3.FSC認定管理料 4.訪問審査にかかる旅費・交通費 5.事前のマニュアル審査費用(希望した場合のみ)
CoC認証の取得にかかる費用は、依頼した認証機関との交渉によっても変動があるため、費用に関しては認証機関へ問い合わせましょう。
取得の流れ
それでは、実際にCoC認証を取得するまでの流れについて解説します。取得までには、5つのステップがあります。
<ステップ1>認証機関への問い合わせ <ステップ2>認証機関の決定・契約 <ステップ3>認証機関による審査(事前審査・本審査) <ステップ4>認証機関による認証判断 <ステップ5>認証取得
先ほども述べたように、FSC CoC認証はFSCが直接認証を行うのではなく、独立した第三者認証機関が実施しています。日本国内でFSC CoC認証サービスを提供している認証機関は7社あります(2024年4月現在)。詳しくは、公式サイトをご確認ください。
参考:FSC「認証を取得するには」
FSC CoC認証を取得している企業・団体
それでは、実際にFSC CoC認証を取得している企業・団体と取り組みについてご紹介します。
キンコーズ・ジャパン株式会社
有人接客型のプリントサービスを提供するキンコーズ・ジャパン株式会社では、2023年にキンコーズ直営店および生産施設においてCoC認証を取得。
これにより同社では、FSC認証マーク入り印刷物の提供が可能となり、ユーザーはキンコーズにFSCラベルをつけたパンフレットや名刺、封筒やポスターなどの印刷を依頼することができるようになりました。
参考:キンコーズ『キンコーズ FSC®の「CoC認証」を取得 オンデマンドプリントによるFSC®認証マーク入り印刷物の提供が可能に』
三菱製紙株式会社
コート紙やインクジェット用紙などの生産を行う三菱製紙株式会社では、環境配慮の観点から2001年よりFSC森林認証に取り組んでいます。
同年、八戸工場において、製紙工場としては日本で初めてCoC認証を取得。その後も国内外の工場でCoC認証を、国内社有林でFM認証を取得するなど精力的な活動を通して森林保護に努めています。
参考:三菱製紙『サステナビリティ [環境への取り組み] FSC®森林認証』
宮崎県東臼杵郡諸塚村
日本で初めて、村ぐるみでFSC認証におけるFM認証およびCoC認証を取得した諸塚村。江戸時代前半からシイタケの原木栽培が行われ、原木シイタケ栽培発祥の地として知られています。同村は、そのシイタケを認証製品としてCoC認証を取得。
2013年には、認証シイタケなど特産品を使用したオリジナルスープのコンテストを開催するなどユニークな取り組みを実施しました。また都会の建築家と協力し、コナラやクヌギなどの広葉樹を活用した家具の商品開発なども行っています。
参考:宮崎県東臼杵郡諸塚村『森林認証制度について』/FSC『諸塚村』
宮城県南三陸町
宮城県南三陸町は世界で初めて森林と水産、2つの国際認証を取得した自治体です。東日本大震災後、「自然と共生するまちづくり」を目指してきた南三陸町。町内にある団体がFSC FM認証とCoC認証、ASC養殖場認証とASC CoC認証を取得し、森林資源の適切な管理と利用、海の豊かさや恵みを守るため力を入れています。
FSC CoC認証を受けた「南三陸杉」は、町役場の新庁舎の建築などに使われています。
参考:南三陸森林管理協議会『南三陸杉とFSC認証』/FSC『南三陸森林管理協議会』
齋藤木材工業株式会社
長野県で「信州唐松材」など地元産の木材を利用した集成材の製造加工から販売等を行っている齋藤木材工業株式会社は、FSC CoC認証を取得し、持続可能な森林経営と地域経済の活性化に取り組んでいます。
同社では、構造用集成材を生産する際に発生する建材として活用できない約7割の部分を「信州産カラマツ薪」として加工し、通販サイト「森の中ストア」にて販売しています。
CoC認証を理解して導入を検討しよう
森林保全につながる取り組みであるFSC認証。そのFSC認証マークがついた製品を取り扱うには、CoC認証が欠かせません。認証を受けるためには費用や時間などさまざまなハードルがありますが、取得することにより製品の差別化や社会的責任を果たせるといったメリットが得られるでしょう。森林をはじめとする環境への配慮が求められる現代社会において、CoC認証取得は大切な取り組みです。木材を扱う企業では、制度の内容を理解し導入を検討してみてはいかがでしょうか。