J-クレジット制度をわかりやすく解説。メリットや注意点、創出者・購入者の申請方法

J-クレジット制度をわかりやすく解説。メリットや注意点、創出者・購入者の申請方法

J-クレジット制度は、温室効果ガスを吸収する取り組みを、「クレジット」として認証する制度です。日本では「2050年カーボンニュートラル」を目指してさまざまな取り組みが行われており、J-クレジットもその一つです。この記事では、J-クレジットの概要や売買メリット、利用方法と注意点、国内企業の事例などをご紹介します。J-クレジットの利用を検討している企業の担当者は、参考にしてみてください。

J-クレジット制度とは?

J-クレジット制度とは、温室効果ガスを削減・吸収する取り組みに対し、国が「クレジット」として認証する制度です。2008年から開始されていた「国内クレジット」と「オフセット・クレジット(J-VER)」を統合したもので、2013年より経済産業省・環境省・農林水産省が運営を開始しました。

英語で「信用」を意味するクレジット(credit)は、ほかに「地球温暖化対策の取り組みで、政府間や企業間で取り引きされる温室効果ガスの排出権」という意味もあります。J-クレジットにおいては、この意味で使われています。

J-クレジットを活用することは、「カーボンニュートラル」や「カーボン・オフセット」の実現につながります。

【カーボンニュートラル】温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる。温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにする考え方
【カーボン・オフセット】自らの経済活動や日常生活の中で排出される温室効果ガスの削減に努めるとともに、削減が困難な排出量については、購入や投資によって埋め合わせるという考え方

J-クレジットの仕組み

J-クレジットは、J-クレジット創出者(企業や自治体、森林所有者など)が創出するJ‐クレジットを、J-クレジット購入者(企業や自治体など)が購入します。

自社の努力のみでは温室効果ガスの排出削減が難しい企業は、J-クレジットを購入することで自社のカーボン・オフセットなどに役立てることができます。一方、クレジット創出者は、クレジットを売却して利益を得ることが可能です。

つまり、売る方・買う方の双方にメリットをもたらす仕組みとなっているのです。

J-クレジットの仕組み
(出典:J-クレジット制度『J-クレジット制度とは』)

J-クレジットの活用方法

J-クレジットの主な活用方法としては、以下が挙げられます。

活用方法内容
温対法温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)の調整後温室効果ガス排出量や、調整後排出係数の報告に利用できる
省エネ法共同省エネルギー事業の報告や非化石エネルギーの利用に関する報告で利用できる
再エネ調達量NGOなどに対して、再エネ調達量として報告できる
カーボン・オフセット カーボン・オフセットに利用できる
カーボンニュートラル 経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成に利用できる
出典:J-クレジット制度『J-クレジットの活用方法

J-クレジットを創出するメリット

森林
image by Marita Kavelashvili on Unsplash

J-クレジット創出者には、次のようなメリットがあります。

コストの削減

J-クレジット創出のメリットの一つは、コスト削減です。省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用などJ-クレジットの取得につながる活動は、ランニングコスト削減につながります。また、J-クレジットの購入額は国などへの寄付として損金に算入できるため、法人税の節税効果も期待できます。

クレジット売却益が得られる

J-クレジットは、自社で創出したクレジットを売却できます。例えば、自社工場で省エネ活動を行い余剰クレジットを売却する、森林管理を実施して創出したクレジットを売却するなどすれば、新たな収入源となります。売却額は、プロジェクトの種別や地域などで異なります。

ブランドイメージ向上につながる

J-クレジットの創出を、自社のブランドイメージ向上へつなげることも可能です。CO2排出削減量などが数値化されるJ-クレジットは、国が運営しており、信頼性が高い制度といえます。J-クレジットの創出は、自社のCSR活動につながり、環境への取り組みを通して自社のイメージを高められます。

J-クレジットを購入するメリット

一方、J-クレジットを購入する側には、次のようなメリットがあります。

製品・サービスの差別化ができる

J-クレジットを購入して自社の製品・サービスに付加価値をつけることで、競合との差別化を図ることができます。J-クレジットを活用した商品・サービスは、環境保全に関心の高い消費者のニーズに応えることができるためです。

例えば、J-クレジットを活用した「カーボン・オフセット付き商品」を販売する取り組みは、自社の商品(サービス)がCO2排出削減につながっていることを示し、競合他社との差別化ができます。

投資家や消費者へアピールできる

近年、投資家の環境問題への関心は高く、投資先を選ぶ際に企業の環境問題への取り組みをポイントとしている場合もあります。J-クレジットの購入・活用は、こうした投資家や環境負荷の少ない商品を求める消費者など、あらゆるステークホルダーにアピールする手段ともいえるでしょう。

具体的なアピール方法としては、J-クレジット購入量やCO2排出量削減量を企業情報として開示したり、投資家向け説明会でJ-クレジットの活用事例を紹介したりすることが挙げられます。

また、商品のラベルにJ-クレジットのロゴを記載する、自社サイトにJ-クレジットの取り組みを紹介するといったアピールもできます。

新たなビジネスチャンスにつながる

J-クレジットの購入は、新しいビジネスを創出する可能性があります。クレジット購入が、これまでなかったネットワークを構築し、そのつながりが新たなビジネスをもたらす機会になるのです。

あらゆる産業分野で環境保全の意識が高まる昨今、環境問題に積極的に貢献することで、新たなビジネスを創出するチャンスにつながるでしょう。

参考:環境省『環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書の公表について

J-クレジット制度の利用方法

J-クレジットの売買は、クレジットを創出・販売する側と購入する側で、利用方法が異なります。それぞれの利用方法を見ていきましょう。

J-クレジット創出者となり、制度に参加する

J-クレジット創出は、CO2(温室効果ガス)排出削減・吸収事業が対象で、企業や団体、個人など、誰でも創出者になれます。手続きは専用システムを利用する電子申請となるため、参加するには口座の開設が必要です。

<申請手続きの流れ>

申請手続きの流れ
出典:J-クレジット制度『申請手続の流れ』を加工して作成

プロジェクト登録やクレジット認証などを審議する「認証委員会」は、年6回開催されます。計画書の作成〜承認に6カ月、モニタリング期間が12カ月以上、報告準備作成に3カ月ほどかかることを把握しておきましょう。

J-クレジットを売る方法は、以下の3パターンです。

売却方法特徴
仲介クレジットの仲介事業者(J-クレジットプロバイダーなど)を通して、クレジットを売却。仲介事業者との相対取引によって、価格や方法を決定
売り出しクレジット一覧に掲載    
J-クレジット制度の「売り出しクレジット一覧」に、創出した(または創出予定)クレジットの量・希望価格・希望価格・連絡先などを掲載し、購入希望者を募集。クレジットの売買は、事業者間の相対取引によって決定
入札への参加Jクレジット制度事務局が実施する入札販売で売却。入札は年に1~2回程度で、落札価格がそのまま売却価格となる。対象は、「売り出しクレジット一覧」掲載後、6カ月以上が経過したもので、入札と一覧掲載の同時参加は不可

J-クレジット購入者となり、クレジットを使う

J-クレジットを購入して使用する手順は、以下の図のとおりです。

購入使用手順
出典:J-クレジット制度『クレジットの活用手続き』を加工して作成

J-クレジットの購入方法は、売却方法と同様に「仲介」「売り出しクレジット一覧」「入札」の3通りがあります。

その後購入したクレジットを使用するには、目的に関わらず無効化(一度使われたクレジットが再利用・再販売されないようにする)の手続きが必要です。無効化の手続きは、J-クレジット登録簿システムで行います。

J-クレジット制度を利用する際の注意点

J-クレジット制度を利用するには、以下のような点に注意が必要です。

認証・発行まで時間がかかる

クレジットを創出してもすぐ売却できるわけではなく、認証・発行までに数年かかることもあります。プロジェクトの登録手続きが複雑で、計画書作成や妥当性確認など、3カ月~6カ月ほどかかるといわれています。また、プロジェクトを登録してから認証申請までの間に、原則12カ月以上のモニタリングが必要なことも時間がかかる理由の一つです。

創出したクレジットの売却は相対的取引が主のため、即時に売買が成立することはほとんどありません。申請の準備からクレジットの売却収入を得るまで、約4年間を要するのが実情です。

無効化手続き後は変更・追加・修正ができない

クレジットを使う際の無効化手続きの後に、内容の変更・追加・修正はできません。クレジットの再販売や二重利用など不正利用を防ぐ目的で行うため、一度行った手続きには制限がかけられます。無効化手続きする際は、内容に誤りがないか、よく確認することが重要です。

入力内容について、事前に事務局で確認してもらうことも可能です。入力に不安がある場合は、依頼することをおすすめします。

参考:J-クレジット制度『無効化手続きの注意点

活用方法により、使用できるクレジットの種類が限られる

活用方法によっては、使用できるクレジットの種類が限られています。ルール変更等により取り扱いが異なる場合もあるため、必要に応じて活用先の最新情報を確認しましょう。

参考:J-クレジット制度『J-クレジットの活用方法

J-クレジットの活用事例

実際にJ-クレジットはどのように活用されているのでしょうか。3社の活用事例をご紹介します。

新幹線
image by Fikri Rasyid on Unsplash

株式会社日本旅行

株式会社日本旅行は、鉄道・飛行機による移動で排出されるCO2を実質ゼロにする、カーボン・オフセット付き商品「Carbon−Zero(カーボンゼロ)」を提供しています。

顧客が対象の旅行商品代金を支払うと、日本旅行が顧客に代わって、旅行先エリアの企業・自治体が保有するJ-クレジットを購入。顧客は、移動によって排出されるCO2をオフセットすることで、旅行しながら地球温暖化対策に貢献できます。

参考:日本旅行株式会社『JRセットプラン・航空利用 カーボンゼロ

コニカミノルタジャパン株式会社

コニカミノルタジャパン株式会社は、デジタル印刷機の導入によって排出されるCO2量を、J-クレジットを活用して実質ゼロにするサービスを展開しています。製品の素材・製造・物流・製品利用・廃棄に至るまでの全工程で排出されるCO2量を算出して、カーボン・オフセットに必要なCO2量に相当するJ-クレジットを活用するものです。これにより、顧客はカーボン・オフセットが実施済みの製品を利用できます。

また、同サービスでは、カーボン・オフセット証明書を発行しています。顧客はこの証明書を、自社の公式サイトや印刷物などに記載して、CO2低減やSDGsへの取り組みとしてアピールすることも可能です。

参考:コニカミノルタジャパン株式会社『カーボンオフセットサービス

国際労働組合

国際労働組合は、ハイヤー・タクシー・バス産業に従事する労働団体として、温室効果ガス削減に取り組んでいます。同組合は、2012年よりJ-クレジット(旧J-VER)の利用を開始。長野県にある小海県有林(長野県南佐久郡小海町)の、森林整備により創出されたJ-クレジットを購入して、カーボン・オフセットに努めています。

参考:国際労働組合『KOKUSAI No.426

J-クレジット制度を活用し、脱炭素化に貢献しよう

J-クレジット制度は、温室効果ガスの排出削減・吸収量を「クレジット」として、企業や自治体などが売買取り引きできる制度です。自社の環境経営をアピールしながら、クレジットの売却利益を得ることや、購入による新ビジネスの獲得も期待できます。まだJ-クレジットを導入していない企業は、この制度を積極的に活用し、脱炭素化への貢献を検討してみてはいかがでしょうか。