日本初!100%薪火アランビック(蒸留器)による精油蒸留所を本格稼働
QUSUYAMA LLC.(合同会社楠山)は2022年2月3日、100%薪火アランビック(蒸留器)を利用した精油蒸留所「楠山(くすやま)蒸留所」を、同社のある宮崎県の三股町にて本格稼働したと発表しました。同社の調べによると、100%薪火アランビックを利用した精油蒸留所の稼働は、日本初となります。
蒸留所開設の背景
東日本大震災直後の2011年4月に、インドヒマラヤより帰国したQUSUYAMA LLC.代表の吉水氏は同社を設立。海外で学んだ精油制作技術を日本国内の山林の森林活用に活かすため各地へ赴き、開発に協力的な地元の森林事業者の方々と共に、日本固有種のアロマの製作および研究活動を開始したそうです。
研究を行う中で、植物は樹種ごとに好む繁殖環境が違うにもかかわらず、日本においては単一樹種を植えて育てて収穫するという、自然のサイクルに逆らった慣行農業的な森づくりが主流となっているという気付きを得たそうです。そこで吉水氏は、探している森は日本にほぼ無いことに気がつくと共に、「自然の摂理に寄り添いながら森林資源を有効活用した、精油蒸留所を作りたい」との考えに至ったそうです。
同氏は、蒸留所稼働の第一歩として、日本中から求める森づくりをしている林業事業体探しを開始。今回、自然の摂理に寄り添った流れの上で森づくりを行う林業事業体にたどり着いたことから、100%薪火を使った純銅製のアランビックで蒸留する、精油蒸留所の開設に至ったとのことです。
「楠山蒸留所」では、森の手入れと収穫を同時にする林道整備のために伐採した木々を燃料とし、蒸留所の燃料を得るための伐採はしないそうです。また、化石燃料(炭素分)を熱量として使わず、大気中に存在していたCO2を木々が取り込んでいたものを火力にしてするため、CO2の増加量はゼロ。地球温暖化防止の観点でも非常にメリットがあるとしています。
楠山が求める“森づくり”
「楠山蒸留所」を有する森では、「皆伐」と呼ばれる森の丸刈りをしないといいます。
皆伐には、土に負担をかけ多様性に欠けた森になるというデメリットがあるからです。加えて、鹿などの獣害被害などに鑑みて「植えて育てる」といった従来型の林業に限界を感じた山主の意向もあり、自然の摂理に沿った森づくりを行っているといいます。自然の摂理に沿う森づくりは、自然と無駄に戦わないということ。これにより、大きな経費削減にも繋がっているとしています。
蒸留所で生産していくもの
同社ではスギ、ヒノキの2種類の針葉樹と、カナクギノキという広葉樹の3種類のみの精油を製造するとのこと。収穫期を迎えた膨大な量のスギ、ヒノキの間伐を進め、伐採した樹々の健康な部分だけを厳選して、精油を収穫するといいます。