台湾のクリエイターChialing Chang氏が個展を開催。木の皮や樹皮布を使った作品を展示。

台湾のクリエイターChialing Chang氏が個展を開催。木の皮や樹皮布を使った作品を展示。

台湾のクリエイターであるChialing Chang氏は、「DESIGNART tokyo 2019」の期間中、「メタファーとしての自然」と題した個展を開催しました。作品は、自然への関心と、有機的な素材を用いた最近の実験を反映したものとなっています。硬さと柔らかさ、鈍さと緊張、精密さと偶然性といった二項対立に関する、Chialing Chang氏の探求結果を紹介する展示だと言います。

個展の様子

工業デザインに関する教育を受けたChialing Chang氏は、「素材に関する研究」と「機能的かつ美的な特徴を持つオブジェ」との橋渡し役となることを目指しています。緻密な設計手法と多様な素材により、自然そのものの本質とそこから生まれる風景の可能性を追求しているそうです。

東京で開催された個展では、古代の手工芸品である樹皮布を研究した「scalloping series」や、柔らかく平らにした木の皮を探求した家具のシリーズ「floating pattern」などの作品が展示されました。

「scalloping series」の特徴

「DESIGNART tokyo 2019」で発表した「scalloping series」のために、Chialing Chang氏は、古代の手工芸品である樹皮布作りを研究しました。樹皮布作りには、桑の木の繊維質の内皮を水で濡らしてシート状にしたものを叩き、さまざまな布や素材に仕上げていく技術が使われます。このプロセスを経ることで、樹皮は、オセアニア全域で日常生活や儀式に使われる薄い布に生まれ変わっていきます。Chialing Chang氏は、徐々に失われつつあるこの職人技のさらなる様式を探ろうとしました。

Chialing Chang氏は、それぞれの樹皮布の特徴を生かすため、さまざまな技法を採用しました。枝の構造をそのままに、生地の一部が木製のハンドルに繋がっているのが、このシリーズの特徴です。このシリーズは、さまざまな形と質感を持つ12種類の扇子と箒で構成されています。繊維の自然な状態を明らかにすることを意図して、フラワーモチーフに由来するフォルムを採用しているそうです。

「floating pattern」の特徴

Chialing Chang氏の最新コレクション「floating pattern」は、柔らかく平らにした樹皮の表現・応用をさらに追求したものです。作品には、杉の樹皮を乾燥、精製、レベリング、圧縮し、細いストランドボードで結合した複合材料を使っています。一見すると、自然をそのまま受け継いだような生々しい質感のように感じられます。しかし、実際の無垢材は一切使われておらず、代わりに丁寧に加工された木材が何層にも重ねられている作品となっています。

制作過程では、樹皮の不規則な形状を「円弧」から「硬質な直方体」へと変化させます。「floating pattern」では、ボトムアップのアセンブリアプローチを採用。作品は、幾何学的なパーツで構成されています。このモジュールデザインにより、質感のある樹皮の板をランダムなリズムでずらすことが可能。空洞と閉じた空間の相互作用により、先入観にとらわれない自由なパターンが生み出されます。これらの自然のテクスチャーは、やがて、樹木のイメージを表現する2mの細長いタワーとなるのです。

このプロジェクトで使用する樹皮は、製材所から排出される産業廃棄物から採取したものです。製材の前に、高圧水ジェットで丸太の皮を剥ぐことで、表面のざらつきが取り除かれ、その後の加工を容易にできるようになります。

通常、商業的価値のない樹皮は、廃棄物とみなされ、焼却処分されてしまうものです。樹皮は、一般的に過小評価されている素材であると言えます。その樹皮を、木材としての本来の文脈に戻すことを目的として生み出されたのが「floating pattern」なのです。

【参考】https://www.designboom.com/design/chialing-chang-tree-bark-barkcloth-shelves-fans-brooms-designart-tokyo-11-04-2019/