地域木材と伝統的な木組み・継ぎで、 レストハウスを設計。社会課題に応える人材を育成。工学院大学

地域木材と伝統的な木組み・継ぎで、 レストハウスを設計。社会課題に応える人材を育成。工学院大学

工学院大学の学生グループ「WA-K.pro」(以下、ワークプロ)は2022年5月16日、同グループが設計を担当した、八王子キャンパス内のテニスコート用レストハウスの引き渡し式が完了したことを発表しました。大学1・2年生が基本設計を担当し、地元企業が多摩産の木材と伝統的な木造建築の工法を手掛けたもの。同年4月9日に引き渡し式が実施されています。

レストハウス設計・施工を通じ、地域課題の解決方法を学ぶ

工学院大学建築学部の1・2年生を中心としたグループであるワークプロは、八王子キャンパス内に点在する老朽化した倉庫を、地元多摩産の木材を使用した木造建築に建て替える活動を続けています。今回完成したレストハウスは4棟目です。

完成したレストハウスの模型と学生

リニューアルに際し、通気性と日陰の確保が要望としてあがりました。これに対し、限られたコストの中でリクエストに応えるため、壁面を極力少なくしてシンプルな形状にまとめ、建築面積を拡張。その結果、広い休憩スペースからコート内の様子を伺うことができるような造りが実現しました。また、南側に設けたルーバーにより、直射日射を抑制しつつ通風を堅持し、道路からの視線の遮断にも成功。倉庫部分は左右横開き扉にして間口を広くしたことで、用具の出し入れがしやすくなり利便性が向上しました。

同プロジェクトでは、木材の組み上げや、土壁材の土を練るなどの作業も学生が手掛けていましたが、今回は基本設計と模型作りを通して「追掛大栓継ぎ」「竿車知継ぎ」「鎌継ぎ」をはじめとする、伝統的な木造建築での工法を学習しました。

伝統工法

また同プロジェクトの中で、学生たちは東京都檜原村で林業及び製材所の現場を見学。木材が持ち込まれレストハウスが組みあがる過程を、間近で体験しました。手入れの行き届いた人工林に足を運び、林業における人手不足、廉価な輸入木材の存在、輸送におけるガソリン値上がりの影響など、過程にある問題を肌で感じたことで、社会的課題を自分事と捉え、建築を通して解決できる方法を考えるきっかけになったということです。

活動を進めるにあたり同大学は、2016年に株式会社結設計室、株式会社東京チェンソーズと10年間の木材購入協定を締結しています。3者はこの活動を通して、木材や林業を知る人材の増加による、各地での地元材使用の促進と、関連する社会問題の解決を目指しています。

今後も地元多摩産の木材を構内で継続的に使用し、地産地消のものづくりと、長期的なスパンで近隣企業との産学連携を図る考えです。

学生と関係者 

レストハウス詳細

面積52.41m3(幅9.10m、奥行き5.75m、高さ3.26m)
工法伝統的木造木組み 追掛大栓継ぎ、竿車知継ぎ、鎌継ぎ
壁面材スギ(檜原産、八王子産)
屋根ガルバリュウム鋼板 縦はぜ葺き
工期2022年1月10日~3月20日
携わった学生数のべ30名