森林認証制度とは?認証マークの種類や意味、製品例や自治体の取り組み事例を紹介

森林認証制度とは?認証マークの種類や意味、製品例や自治体の取り組み事例を紹介

森林認証制度は、持続可能な森林の利用と保護を目的につくられた制度です。環境保全や社会的な観点から見て、持続可能な森林であることを独立した第三者機関が検証し、認証材であることを証明するマーク等を付与します。この記事では、森林認証制度の仕組みや認証機関ごとのマーク、自治体での取り組み事例などを分かりやすくご紹介します。

森林認証制度とは?

SDGsに注目が集まる昨今、より健全な森林管理や木材加工流通に向け、森林認証制度を受ける団体や事業者が増加傾向にあります。森林認証制度はどのような目的で定められたのでしょうか。まずは、その意義や認証の仕組みについて解説します。

森林認証制度は、持続可能な森林の利用と保護を目的としたもの

地球上の面積の約3割を占めるといわれている森林。私たちは日々の生活の中で森林からさまざまな恩恵を受けていますが、一方で、近年は熱帯の国々を中心に森林破壊が問題となっています。

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そのような状況下における解決策の一つとして設けられたのが「森林認証制度」です。森林認証制度は、森林破壊の防止をはじめ、森林との共存を目指した持続可能な開発・経営をしていくことを目的につくられました。認証を受けた木材や木材製品に「認証マーク」を付けることにより、消費者の選択的な購買を通じて持続可能な森林経営を支援することができる仕組みです。森林認証制度は、SDGsの達成にも大きく貢献し、サステナビリティな社会づくりにつながることとして注目されています。

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森林認証を受けた製品が私たち手に届くまでの仕組み|FM認証とCoC認証について

ここからは、森林認証を受けた製品が生産者から消費者へ流通する仕組みを見ていきましょう。森林を対象とした「FM認証」と、FM認証を受けた森林からの生産物を対象とした「CoC認証」について、くわしく解説します。

FM認証:森林管理認証

FMとは「Forest Management(和訳:森林管理)」を略したもの。FM認証とは、適正な森林管理や環境保全への配慮に関する一定の基準に基づいて、森林を認証する制度です。木材の供給や水資源の保全、生物の生息域の提供など、さまざまな森林の働きを将来的に引き継ぐことを目的としています。

CoC認証:生産物認証

CoCとは「Chain of Custody(和訳:管理の連鎖)」を略したもの。CoC認証は、加工(一次・二次)および流通過程で、「FM 認証を受けた森林から産出された木材等」と、「認証を受けていない森林から生産されたもの」が混ざらないよう、適切に分別管理されていることを認証する制度です。ラベルやマーク等によって認証材と非認証材を分別することで、消費者は選択的な購入が可能となる仕組みになっています。

CoC認証には、森林所有者や事業者、消費者それぞれにメリットがあります。森林所有者は、一定の森林管理方針があることで、「持続可能な森林管理」や「資源利用」を図ることができます。認証製品の市場に参入して、林産物の差別化を講じることも可能でしょう。

つづいて事業者は、認証材を取り扱うことで森林保護の支援や地球環境の保全に貢献できるほか、企業の姿勢やCSRへの取り組みをアピールできることなどがメリットです。消費者は、認証製品を選び購入することで環境保全などに貢献できるでしょう。このように、森林認証製品があることで森と人、山とまちが結ばれ、循環型社会が構築されていくのです。

(参考:林野庁「森林認証材普及促進ガイド」)

森林認証の種類とマーク

FM認証やCoC認証を受けた事業者や製品であることを証明する「認証マーク」は、独立した第三者機関(認証機関)の実施する審査に合格することで付与されます。認証機関は複数あり、それぞれの機関によって基準やマークが異なります。ここでは、森林認証機関ごとに認証基準やマークをご紹介します。

FSC認証(森林管理協議会)

FSCは、「森林管理協議会(Forest Stewardship Council)」の頭文字をとったもので、1993年に発足した国際的組織です。FSC認証は、「地域社会の権利を守り、地域社会と良好な関係を保っている」「森林のもたらす多様な恵みを大切に活かして使っている」といった世界共通の規格「10の原則と70の基準」を設けており、この規格に沿って審査しています。FSC製品として販売するには、FM認証からCoC認証まで、生産・加工・流通のすべてに関わる組織が認証を受けていることが条件となります。

2021年9月現在、FM認証された森林は2億2800万ヘクタール(228万 km2)以上、CoC認証件数は4万9000件を超えており、世界各国において広がりを見せています。

FSC認証マークがついた箱

(参考:FSCジャパンホームページ
(参考:林野庁計画課「主な森林認証の概要」)

PEFC認証(森林認証制度相互承認プログラム)

PEFCは、ヨーロッパ11ヵ国の認証組織が1999年に「Pan Europian Forest Certification 」を設立したのが始まりです。国際化が進んだことで2003年に「森林認証制度相互承認プログラム(Programme for the Endorsement of Forest Certification Scheme)」と改称、現在は世界各国の認証制度との「相互承認」を行う国際認証組織となっています。

FSCが世界共通の規格に基づいて審査されるのに対し、PEFC認証は世界統一の規格や基準を設けておらず、国別で定められた審査基準を加盟国間で相互認証する仕組みです。

PEFCは、2022年3月時点で加盟国55ヵ国、FM認証された森林は約3億ha、CoC認証件数は1万2,000件を超えています。

PEFCマークのついたコピー用紙

SGEC認証(緑の循環認証会議)

SGECは、「緑の循環認証会議(Sustainable Green Ecosystem Counci)」のことで、日本独自の森林認証機関です。2003年に森林・林業・木材業界に関連する諸団体のほか、NGOや市民団体などから発起人を募り、参加団体の同意のもと国内認証制度として創設。日本国内において持続可能な森林経営を実現することを目指しています。
SGECは日本の森林認証制度として2016年にPEFCに相互認証されており、「認証対象森林の明示及びその管理方針の確定」や「生物多様性の保全」など「SGECFM 認証規格7つの基準」に沿って審査を行っています。2019年12月31日現在、FM認証された森林は約203万ha、CoC認証件数は547件となっています。

(参考:SGEC/PEFCジャパンホームページ
(参考:林野庁「主な森林認証の概要」)

森林認証制度の普及に向けた取り組み

森林・林業の成長産業化に寄与し、地域振興や資源循環型の社会の実現を目指す「森林認証制度」。各自治体でも、さまざまな取り組みを行っています。ここでは、3つの自治体の取り組み事例と、消費者が取り組めることをご紹介します。

森林認証制度を活用した自治体の取り組み事例

東京都:とうきょう森づくり貢献認証制度

東京都では、森林整備活動に関心のある企業や都民の方々による、森づくり活動への参加と多摩産材の利用をより一層促進させることを目的として、「とうきょう森づくり貢献認証制度」を実施しています。

同制度は「森づくり」および「木材利用」による森林整備の促進を目的とした、次の3つの制度から構成させれています。

  • 森林整備サポート認定制度
  • 多摩産材製品による二酸化炭素固定量認証制度
  • 多摩産材製品による二酸化炭素固定量認証制度

東京都は、この認証制度により東京の森林整備が促進されるとともに、地球温暖化防止にも貢献したいとしています。

(参考:東京都産業労働局「とうきょう森づくり貢献認証制度

静岡県:浜松市におけるFSC認証の推進

静岡県では、2010年に浜松市内の天竜区および北区引佐地域の森林のうち1万8,400haがFSC認証林として認められました。その後、認証面積は拡大し、2021年時点で4万9,441haとなり、市町村別取得面積では国内第1位の認証森林面積を有しています。

また、「浜松城」および「浜松こども館」は、施設リニューアルにおいてFSC認証材である「天竜材」を使用しており、全国初のFSCプロジェクト認証を取得しました。「浜松城」は3階の「情景の層」の床材、「浜松こども館」は遊具・床・壁にFSC認証材を使用しています。

静岡県浜松市では、「価値ある森林の共創」を目指し、森林や林業に関わる人や山村に暮らす人に加え都市部の市民も協働し、森林資源を活かした価値ある森林を創っていきたいとしています。

(参考:浜松市「はままつのFSC」)

群馬県:SGEC普及拡大事業

群馬県は、森林認証の普及が全国最低クラスである課題を解決するため、「利根沼田森林組合」(FM認証)と、「群馬県森連」(CoC認証)が連携し、2017年にSGEC認証を取得しました。

SGEC認証後の主な取り組みとして、認証森林から産出されるスギ・ヒノキ・カラマツ等多様な樹種を活用した学習机天板やベンチ、遊具、フローリングなどさまざまなSGEC製品を開発しています。また、開発したSGEC製品は群馬県森連の受注案件への採用や、木育・自然環境教育活動への提供、各種PRイベントに出展するなどして普及を図っています。

群馬県森連は、この事例に続く森林組合の認証取得を支援し、県内における森林認証と認証材の浸透を図り、拡大する認証材マーケットに群馬県産認証材を供給できる体制を構築していきたいとしています。

(参考:群馬県森林組合連合会「SGEC森林認証」)

一人ひとりが取り組めること

森林認証制度に対し消費者が協力できるのは、「森林認証マークの付いた商品を選んで購入すること」です。身近な製品例として、ティッシュ紙パック、鉛筆、コピー用紙、紙ストローなどに認証マークが付いていることがあります。

認証マークの付いた製品は、適正に管理された森林に由来するものであると認められた、環境配慮型の商品であることの証明です。木材生産に直接関わっていない消費者でも、FSCやPEFC、SGECマークのついた製品を選択することで、森林環境を守る取り組みを支えることができます。

森林認証の取り組みを知り、サポートしよう

少しずつ身近になってきたように感じる森林認証ですが、現在日本で認証取得している森林の割合は、国内の森林全体の1割程度に過ぎないと言われています。森林認証の先進国では8割を超えている国もあることから、まだ発展途上の取り組みといえるでしょう。持続可能な森林経営を支援するために、まずは森林認証の仕組みを知り、できることから始めてみてはいかがでしょうか。