サステナビリティとSDGsの違いは?企業と個人が取り組むメリットもご紹介
近年関心が高まっているサステナビリティとSDGsについて、「言葉は知っているけれど違いがよくわからない」という方もいるのではないでしょうか。サステナビリティやSDGsは、将来の持続可能社会実現に向けて求められている概念や目標を表す言葉です。今回は、サステナビリティとSDGsの違いや、似た用語について詳しく解説します。加えて、企業や個人が取り組むメリットについてもご紹介します。
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「サステナビリティ」と「SDGs」の違い
国際的に取り組みが進んでいるサステナビリティとSDGs。それぞれの違いはあるのでしょうか。それぞれの用語の意味と違いについて解説します。
サステナビリティとは
サステナビリティ(Sustainability)とは、「sustain(持続する)」と「able(〜できる)」を合わせた造語で、「持続可能性」のこと。1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が発表した報告書の中で取り上げられた概念です。
「サステナビリティ」と似た用語の「サステナブル(sustainable)」は、サステナビリティが名詞、サステナブルが形容詞という点が違うものの、同じ意味合いで使われます。
サステナビリティの概念は、「環境」「社会」「経済」などの観点から、将来にわたって機能を維持し続けることが求められており、近年では、国際社会全体でサステナビリティへの取り組みが行われています。
また、企業においても、社会的責任として持続可能な状態を実現するための経営方針や、活動への取り組みが求められています。
SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略語で、「持続可能な開発目標」を意味します。2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能なよりよい世界を目指す国際目標です。「誰一人取り残さない」という理念を掲げているSDGsは、「17のゴール」とそれを実現するための「169のターゲット」から構成されています。
サステナビリティとSDGsの違いは?
サステナビリティとSDGsは、「目標達成における具体的な設定」に違いがあります。サステナビリティの場合、「環境」「社会」「経済」という3つの大きな柱に分かれており、期限がなく長期的な取り組みが求められているのが特徴です。一方で、SDGsは、2030年までの目標を掲げ、目標を17に細分化し、それらの具体的な行動指針を定めています。サステナビリティを実現するための具体的な目標を示したのがSDGsだといえるでしょう。
サステナビリティの3つの要素
サステナビリティは、「環境保護」「社会開発」「経済発展」の3つが相互に補強し合うものであるとされています。それぞれについて以下で詳しくご紹介します。
①環境保護
環境保護は、生物多様性の保全や、自然資源の循環の維持や汚染、枯渇への対策などが求められています。地球環境のバランスを保つことは、人や生物が生活するうえで重要な課題です。特に、近年では、化石燃料から再生可能なエネルギーへの転換や、温室効果ガスを排出しない脱炭素社会に向けての動きが活発化しています。
②社会開発
ジェンダーや人種差別、教育機会の創出など社会課題の解決や、医療、交通といった社会サービスの向上や多様性の推進などを指す社会開発。具体的には、旅行先の文化を尊重し、環境を損なわない旅行をする「サステナブルツーリズム」や、材料や製造工程、作業者の労働条件まで配慮した洋服を作る「サステナブルファッション」の取り組みなどが挙げられます。
③経済発展
経済発展は、企業が労働環境の整備や社会貢献になる取り組みを行うとともに、長期的にパフォーマンスを維持し、成長を続けることや地域社会の生産性拡大といった経済成長を目的とした取り組みです。環境や社会に配慮した企業に投資する「サステナブル投資」や持続可能な取り組みを自社のマーケティングに取り入れる手法の「サステナブルマーケティング」が経済発展に該当します。
SDGsのゴールとターゲット
SDGsは、ゴールとターゲットが具体的に示されています。それぞれの内容について見ていきましょう。
17のゴール
17のゴールは「5つのP」で考えられており、以下のように分類されます。
人間(People) | 豊かさ(Prosperity) |
・貧困をなくそう ・飢餓をゼロに ・すべての人に健康と福祉を ・質の高い教育をみんなに ・ジェンダー平等を実現しよう ・安全な水とトイレを世界中に | ・エネルギーをみんなにそしてクリーンに ・働きがいも経済成長も ・産業と技術革新の基盤をつくろう ・人や国の不平等をなくそう ・住み続けられるまちづくりを |
地球(Planet) | 平和(Peace) パートナーシップ(Partnership) |
・つくる責任つかう責任 ・気候変動に具体的な対策 ・海の豊かさを守ろう ・陸の豊かさも守ろう | ・平和と公正をすべての人に ・パートナーシップで目標を達成しよう |
SDGsの17の目標は、「人間(People)」「豊かさ(Prosperity)」「地球(Planet)」と、各分野に横断的に必要となる「平和(Peace)・パートナーシップ(Partnership)」に分けることができます。各国が、17項目の達成に向けて行動することが、SDGsの期限である2030年以降の持続可能社会の継続につながるといえるでしょう。
169のターゲット
SDGsの「169のターゲット」とは、先述の「17のゴール」を実現するための具体的な達成基準のことです。例えば、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の目標のターゲットには、「2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する」や「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」などがあります。
SDGsについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
参考:外務省『JAPAN SDGs Action Platform』
サステナビリティやSDGsに関連する用語
サステナビリティやSDGsに関連する言葉として、「CSR」や「ESG」があります。それぞれの用語の意味について以下で詳しく解説します。
①CSR
CSRとは、「企業の社会的責任」のことです。企業は利益への追求だけでなく、顧客や従業員、投資家、取引先などへの配慮から社会貢献まで、幅広い事柄に対して適切な意思決定を行う責任のことを意味します。
CSRは、企業が社会にいい影響をもたらすための活動を指す概念なのに対し、サステナビリティは、企業が長期的な経営を続けるために、社会や環境にもたらす負荷を最小限に抑える行動を指します。また、CSRは「企業のみ」に求められる責任、サステナビリティやSDGsは「社会全体」に求められる課題と目標という点において違いがあります。
②ESG
ESGとは、「Environment(環境)」「Society(社会)」「Governance(企業統治)」に配慮した経営や事業活動のことです。企業が長期的に成長を続けるためには、ESGの観点が重要だという考え方が広まっています。
地球温暖化などの環境問題や貧困などの社会問題の課題に直面している近年では、財務情報に加え、ESGを重視した経営に取り組んでいる企業に投資する「ESG投資」の注目が高まっているのです。
ESGはサステナビリティやSDGsの持続可能な発展を実現するための経営戦略の一つと言えるでしょう。
企業がサステナビリティやSDGsに取り組むメリット
サステナビリティやSDGsに取り組むことは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。以下でご紹介します。
企業イメージが向上する
サステナビリティやSDGsに積極的に取り組む企業は、消費者や投資家などからのイメージが上がり、企業価値向上の可能性が高まるでしょう。近年では、環境問題や社会問題の解決に向けた取り組みに関心を寄せている人が多く、企業にはサステナブル経営が求められている傾向にあります。サステナブル経営をすることで、周囲からの信頼を得られるほか、社会から評価された企業で働く社員は、自社へのエンゲージメントが高まり、生産性の向上や離職率の低下が期待できます。さらに、採用の面でも優秀な人材の確保につながるでしょう。
新規事業の機会創出が期待できる
新しい事業機会の創出が期待できるのもメリットの一つです。SDGs が掲げるターゲットは、将来に変化が起きる可能性のある分野でもあり、ビジネスにおいても新たな需要が見込まれるかもしれません。サステナビリティやSDGs関連事業によって、行政や教育機関、取引先などの新しいつながりが生まれる可能性もあります。
事業の継続につながる
事業を継続するうえで、ステークホルダーや地域からの評価は非常に重要な要素です。サステナブル経営をすることで「社会的責任を果たしている」というイメージがつき、評価の向上につながると考えられます。加えて、ESG投資に注目している投資先からの資金調達においても有利になるでしょう。
個人がサステナビリティやSDGsに取り組むメリット
サステナビリティ、SDGsに取り組むことは、私たち個人にも以下のようなメリットがあります。
節約につながる
環境に配慮した行動を心がけることで、結果として節約につながることがあります。例えば、買い物にエコバッグを持参した場合、石油から作られているレジ袋の消費やゴミの削減になります。加えて、レジ袋の有料化を導入している店舗の場合は、レジ袋を買わない選択をすることによって家計の節約にもなるでしょう。
個人ができる具体的な行動について詳しく知りたい場合は、下記の記事も参考にしてみてください。
知識や視野を広げられる
サステナビリティやSDGsに興味を持って取り組むことで、自分の知識や視野を広げられるでしょう。経済や環境、人権など、幅広いジャンルの目標があるSDGsは、取り組む企業や個人によって理由がさまざまです。それぞれの考え方や価値観を知ることで、視野が広がるかもしれません。また、現在進んでいる多様性社会への理解が深まったり、多くの知識が身についたりすることにもつながります。
社会貢献の実感を得られる
「自分の行動で社会貢献できている」と実感しやすい点もメリットの一つです。サステナビリティやSDGsは現代社会の課題解決を目指すものであり、個人の取り組みもすべて社会貢献に結びつきます。自身の行動が社会貢献になっていると感じることで、日常生活でのモチベーションが上がったり、幸福感が高まったりするでしょう。
サステナビリティやSDGsの体験型イベントもある
企業・個人向けに開催している研修や体験イベントもあります。サステナビリティやSDGsに合わせた企業経営を疑似体験することによって、利益を考えながらも環境や社会のことにも配慮する視点が培われるでしょう。また、個人対象のワークショップでは、身近なことから楽しく学ぶことで、生活の中で取り組めるヒントが見つかるかもしれません。
「企業で社員研修をどのように進めたらよいかわからない」「子どもにSDGsについて知ってもらいたい」などと考えている方は、こういった体験型イベントに参加することもおすすめです。
サステナビリティやSDGsへの理解を深めよう
サステナビリティやSDGsは、「概念」と「具体的な目標」という部分で違いはありますが、「持続可能な社会の実現」に向けた考え方は同じです。これらに取り組むことは、企業にとっても個人にとっても多くのメリットになるでしょう。今回の記事を参考にサステナビリティやSDGsへの理解を深め、できることから始めてみてはいかがでしょうか。