エシカルとサステナブルの違いは?身近な暮らしから環境のためにできる行動とは
環境問題に対する意識の高まりから、エシカルやサステナブルといった言葉を目にすることが増えました。一方で、「それぞれの意味や違いがわからない」という方もいるでしょう。どちらも、環境や人などに配慮し、より良い社会を目指すための考え方です。今回は、エシカルとサステナブルの違いや、似た用語との関係を詳しく解説します。また、個人が実践できることに加え、企業が取り組む事例などもご紹介します。
Contents
エシカルとサステナブルの意味と違い
まずは、エシカルとサステナブルの具体的な意味とその違いを解説します。
エシカルとは
エシカル(ethical)は、直訳すると「倫理的な」や「道徳上の」という意味を指します。倫理や道徳とは、社会生活を営む上で、自分の良心のもと一人ひとりが守るべき行為のこと。つまり、エシカルとは、地球環境や社会、人、地域などの存在に配慮した良識的な考え方や取り組みです。
エシカルを実践する身近な行動に「エシカル消費」があります。これは、環境への負荷や労働者の人権、動物福祉などに配慮され作られた商品やサービスを選ぶことです。
具体的には、「どこで・誰が・どのように作ったのか」「誰かにとって不都合はないか」といった生産背景にも着目した消費行動のため、エシカル消費を実践することで環境問題や社会問題の解決につながると言われています。
サステナブルとは
サステナブル(Sustainable)は、直訳すると「持続可能な」「維持できる」という意味の形容詞です。つまり、サステナブルとは地球の環境や資源、人に配慮し、将来にわたって自然環境を守り「平和で豊かな社会の維持」を目指した取り組みのことです。
持続可能な社会を実現するための具体的な取り組みとしては、資源の有効活用や省エネルギーの実践、再生可能エネルギーの利用などが挙げられます。また、サステナブルの考え方はエネルギー問題に限らず、ファッションや食品などあらゆる分野に浸透しています。
企業においては「生産・製造・物流・廃棄」に至る全ての工程において、自然環境や労働者の人権、動物福祉に配慮した取り組みを実施しているかが重要視されています。
エシカルとサステナブルは視点が異なっても目指す未来は同じ
エシカルとサステナブルは、どちらも環境や人に配慮し、より良い社会の実現を目指した考え方ではありますが、以下のような違いがあります。
エシカル | 個々の倫理的な行動を重視 |
サステナブル | より大きな視点で社会全体の持続可能性を目指す |
重視する点が異なるといっても、サステナブルな社会を作るためには、個々のエシカルな行動は欠かせません。
例えば、フェアトレード商品の購入は、労働者の人権を守るだけでなく、自然環境に配慮された持続可能な生産を促進することにもつながります。なお、フェアトレードとは発展途上国との貿易において、生産者と取引先の公正な取引によって労働環境の改善を図る取り組みのことです。
一人ひとりが毎日の生活の中でエシカル消費に取り組むことで、サステナブルな社会の実現に貢献するのです。
エシカルとサステナブルにおけるSDGsとの関係性
サステナブルやエシカルと混同されやすい言葉に「SDGs」があります。SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略語で「持続可能な開発目標」のこと。持続可能でより良い世界を目指すため、2015年9月の国連サミットで「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年までに達成すべき具体的な国際目標が掲げられています。17のゴール・169のターゲットから構成されており、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。
エシカル・サステナブル・SDGsは、全て目指す方向性が共通しています。サステナブルな社会の実現に向け、具体的な目標を定めているのがSDGsです。そして、SDGsの内容を実現するための、企業や個人における行動の規準となるのがエシカルと言えます。
エシカルでサステナブルな社会のためにできること
エシカルでサステナブルな社会を目指すために、私たち一人ひとりにできることは数多くあります。ここでは、身近な生活の中でもできる具体的な行動をご紹介します。
節水や節電を意識する
節水や節電は、最も手軽にできる取り組みの一つです。世界には水不足に悩む国や地域が存在し、今後人口の増加によってさらに深刻化すると言われています。また、生活に必要な電気の原材料となる石油や石炭は、枯渇資源と呼ばれ限りがあります。
水や電気はいつも・いつまでも使えるものとは思わず、「こまめに電気を消す」「水を出しっぱなしで使わない」といった小さな心がけから始めてみましょう。
ゴミを減らす
ゴミを燃やし処分する際に排出される二酸化炭素は、環境汚染や地球温暖化の原因となります。そのため、ゴミを出さないようにしたり、減らしたりすることも大切です。現在、日本では食品ロスが大きな問題となっています。
食品ロスは、食べ残しや賞味期限切れの食品、皮の剥きすぎから発生する食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。消費者庁の資料によると、家庭では、年間に244万トンが食品ロスによって廃棄されているとのデータがあります。食品ロスを防ぐために「食べきれる量を購入する」「皮を過剰に剥かない」など、日々の食生活から工夫してみましょう。
また、ゴミを減らすためにはゴミの分別も大切です。空のペットボトルや古紙などはリサイクルに出すことで、資源の有効活用につながります。
参考:消費者庁『食品ロスって何?』
繰り返し使える日用品を活用する
ゴミの削減につながる行動として、繰り返し使える日用品の活用も挙げられます。効率性を重視し使い捨ての商品を多く使用することは、ゴミを出しやすい要因となっています。そのため、以下のようなアイテムを生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
・マイバック
・マイボトル
・マイ箸
・マイストロー
長く使えるアイテムを購入することで、使い捨てのプラスチック製品を利用する回数が軽減し、結果的にエネルギー消費の抑制にも貢献できるでしょう。
エシカルな商品を選ぶ
エシカルな商品を選んで購入することも、サステナブルな社会に貢献する行動です。エシカル商品は、主に「環境・社会・人・地域」に配慮した商品やサービスが当てはまります。具体的な商品の内容は以下の通りです。
<環境に配慮された商品> ・リサイクル可能な素材で作られている ・天然由来の成分や素材で作られている ・製造工程が自然環境に配慮されている ・環境に良いエコ商品 ・繰り返し使える ・認証ラベルのある製品 <社会に配慮された商品> ・フェアトレード製品 ・売り上げの一部が寄付される商品 <人に配慮された商品> ・障がい者支援につながる商品 <地域に配慮された商品> ・地産地消を実現した商品 ・被災地の特産品 |
「環境・社会・人・地域」に配慮された商品は世の中に多くあり、ここに挙げたものはほんの一例です。私たち消費者一人ひとりがエシカル消費を意識することで、社会にもたらす効果は多大です。日々の生活から見直してみてはいかがでしょうか。
エシカル商品について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
フリマアプリやリサイクルショップの活用する
自宅で使わない物を、フリマアプリやリサイクルショップに出すことも資源の有効活用につながります。また、子ども用品や使うタイミングが限られる家電製品など、使用頻度の少ない物はリユースで補うこともおすすめです。
新たに新しい商品を購入する必要がなくなることで、商品の製造過程における原材料の消費や二酸化炭素の排出を抑制する効果が期待できるでしょう。
「必要になったら新品を購入する」「いらなくなったから捨てる」というサイクルは、大量生産・大量消費・大量廃棄の原因となります。自分にとって本当に必要な商品なのかを見極め、物のリサイクルと新たな消費の抑制の両面からサステナブルな行動に貢献していきましょう。
エシカルやサステナブルな活動に取り組む国内企業の事例
ここからは、エシカルやサステナブルな活動に取り組む国内企業を紹介します。
【自動車業界】トヨタ自動車株式会社
日本の自動車メーカーを代表するトヨタ自動車株式会社では、創業以来、事業活動を通じて世界中の人たちが幸せになるモノやサービスの提供を目指しています。2020年には「幸せの量産」をミッションに掲げ、「社会・地球の持続可能な発展への貢献」に取り組んでいます。
具体的には、SDGs達成に向け、水素エンジンの開発や生産現場における二酸化炭素の排出量削減などの取り組みを実施。他にも、東北の復興支援やあらゆる人が働きやすい職場環境作りなど、多方面からサステナブルな社会の実現に貢献しています。
参考:トヨタ自動車株式会社『サステナビリティ関連方針・ガイドライン』
【アパレル業界】株式会社UNIQLO
実用衣料品の製造小売を展開するUNIQLOでは「服のチカラを、社会のチカラに。」をコンセプトに掲げ、さまざまなサステナブル活動に取り組んでいます。
例えば、使わなくなったユニクロ商品を回収し次に活かす取り組みとして、服から服へのリサイクルを目指す「RE.UNIQLO」活動や災害時の緊急衣料支援などを実施。他にも、難民雇用や障がい者支援の取り組みなど、社会問題の解決に向けてさまざまな活動を行っています。
参考:株式会社UNIQLO『ユニクロとSDGs』
【食品業界】サントリーホールディングス株式会社
洋酒や清涼飲料水などの製造・販売等を行うサントリーホールディングス株式会社では、2019年に「サントリーグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定しました。そこでは、2030年に向けて「水・温室効果ガス・容器や包装」に関する具体的な目標を掲げています。
例えば、水においては「自社工場の水使用量の原単位をグローバルで35%削減」「自社工場の半数以上で使用する水の100%以上をそれぞれの水源に還元」など、具体的数値を示し、実績を公表。美しい地球環境を次世代に引き継ぐことを責務とし、グループ一丸となってサスティナビリティ活動に取り組んでいます。
参考:サントリーホールディングス株式会社『サントリーグループのサステナビリティ』
日本で身近な森林からサステナブルな社会を目指す
サステナブルな社会の実現に向けたさまざまな取り組みがある中で、近年では森林環境の整備を通じた持続可能な取り組みも注目されています。日本は国土の約3分の2を森林が占める世界でも有数の森林国です。木材の有効活用は、二酸化炭素の吸収や地球温暖化の防止、国土を災害から守るといった働きが期待できるため、木材を活かした取り組みが国内で進んでいます。
日本の森林の約4割は人が植え育てた人工林であり、伐採して活用することで森林の持続的なサイクルを生み出すことができます。しかし現在、その多くが本格的な利用時期を迎えているものの、林業の衰退に伴い十分な利用が進んでいない状況です。
そのため、林野庁では国産木材を利用する意義について伝え、暮らしに木材製品を取り入れることで日本の森林を守る「木づかい運動」という取り組みを展開しています。
また、木材の活用を推進する企業もあります。長野県の齋藤木材工業株式会社では、集成材の使用が難しい丸太部分の7割の端材を薪として販売し、木の価値の最大化を図っています。この取り組みによって「木を伐り、使い、植え、育て、また使う」という持続的な森林サイクルを実現。これまで十分に活用できなかった端材に付加価値を与えることで、放置林の減少や健全な森林環境の整備を進め、循環型社会の構築を目指しています。この機会に、「信州産カラマツ薪」の購入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:農林水産省林野庁『木づかい運動でウッド・チェンジ!』
サステナブルな社会実現のためエシカルやSDGsにつながる行動を
今回は、エシカルとサステナブルの違いについて紹介しました。エシカルとサステナブルは重視する点に違いはあるものの、双方は密接な関係にあり、持続可能な開発目標であるSDGsの達成には欠かせない概念です。
サステナブルな社会の実現に向けて、私たちにできることは多くあります。今回紹介した内容を参考に、日々の生活を見直し、企業の取り組みに目を向けながら、エシカルやSDGsにつながる消費行動を実践しましょう。