SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の具体的な取り組み。企業事例や個人でできること

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の具体的な取り組み。企業事例や個人でできること

「陸の豊かさも守ろう」とは、SDGsに掲げられた目標の一つですが、具体的な取り組み内容に興味を持つ方もいるのではないでしょうか。今回は、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の概要とともに、世界・日本の動きや企業の取り組み事例、個人ができる行動について詳しくご紹介します。

「陸の豊かさも守ろう」はSDGsの目標の一つ

「陸の豊かさも守ろう」は、SDGsに掲げられた17の目標の一つで、「陸上の生態系を保護し、豊かな環境を維持しよう」という内容になっています。

なおSDGsとは、Sustainable Development Goalsの略語で、日本語に直訳すると「持続可能な開発目標」を意味します。持続可能でよりよい世界を目指すため、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年までに達成すべき具体的な国際目標として示されました。

SDGsは、17の「ゴール(目標)」で構成されており、17の目標は以下の通りです。

SDGs17のゴール(目標)
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
参考:外務省『持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組』

SDGs目標15「陸の豊かさ」における現状の問題点

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の具体的な取り組みを知る前に、陸の豊かさにおける現状を把握することが大切です。ここからは、目標15が生まれた背景にある、森林や陸上の野生動物などの危機的状況をご紹介します。

陸域生態系の破壊

陸域生態系とは、自然生態系と人工生態系の2種類に分けられます。自然生態系は、森林や草地などの自然界に存在する生態系を指し、人工生態系は、耕作地や都市緑地など人工的な生態系を指します。

現在、陸域生態系の約75%の領域が、作物栽培または畜産のために、人の手によって著しく改変された人工生態系です。結果、自然生態系である天然の森林や湿地帯、草地の破壊につながりました。過度な土地利用の開拓によって生物の生息地が喪失し、もともとの生態系に備わっていた水や大気の浄化作用、防災機能の低下をもたらしたといわれています。

森林の消失

世界の森林面積は約41億ヘクタールあり、これは世界の陸地面積の約3割に相当します。しかし、現状世界の森林は減少し続けており、年間で約470万ヘクタールが消失しています。

森林破壊の主な原因は「人口増加による都市化の進行」「過剰な森林伐採」「気候変動の影響」などです。森林破壊がこのまま進行すると、食糧生産に影響を与え人々への生活に悪影響を及ぼす懸念があります。さらには、地球温暖化からなる気候変動を引き起こすなどと考えられています。

参考:林野庁『森林・林業分野の国際的取組』

砂漠化の進行

砂漠化の進行も問題となっています。国連の資料によると、現在、年間約1,200万ヘクタールの砂漠化が進んでおり、今後10年間で約5,000万人が住む場所を失い、避難せざるを得ない状況になると指摘しています。

砂漠化の人為的要因は、家畜による過放牧や無計画な森林伐採、農業用水による塩害、過剰な化学肥料の使用など、許容範囲を超える人間活動です。さらに、気候的要因として、地球的規模で進行する気候変動が追い打ちとなり、干ばつや乾燥化をもたらすとされています。

参考:国際連合広報センター 『毎年1,200万ヘクタールの生産的な土地が失われる、事務総長が砂漠化フォーラムで発言、大規模な回復努力と賢明な政策を求める』『砂漠化と干ばつと闘う世界デー、6月17日』
参考:環境省『砂漠化する地球 -その現状と日本の役割-』

生物の大量絶滅

陸域生態系の破壊や森林破壊、砂漠化によって生物の大量絶滅も進行しています。現代は「第6の大量絶滅時代」といわれ、土地開発や乱獲などの人間活動によって、地球上の生物多様性が失われています

世界には175万種の生き物が生息しているといわれています。絶滅のおそれのある野生生物のリストを示すレッドリストによると、そのうち約4万4,000種以上の野生生物が絶滅の危機に瀕していると指定。生物多様性の喪失は、生態系のバランスを崩し、農林水産業や人々の生活にも影響を及ぼすとされています。

参考:国際連合広報センター『地球環境の限界と持続可能な開発目標(SDGs)』
参考:国際自然保護連合『レッドリスト』

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の具体的な取り組み

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」を詳しく解説。企業の取り組みや個人でできること
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ここからは、SDGs目標15の具体的な内容を見ていきましょう。国際連合が掲げるSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の内容は、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」です。

この内容を分かりやすくまとめると、目標達成に向けたポイントは以下の5つです。

●陸の生態系を保護しながら、再生する
●陸の生態系を持続可能な方法で利用する
●土地の劣化を防ぎ、再生する
●森林を適切に管理し、砂漠化を阻止する
●生物の絶滅を抑え、生物多様性を守る

これらのポイントの達成に向け、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では以下の「12のターゲット」が示されています。なお、ターゲットとは、数値など可視化したより具体的な目標のことです。

ターゲット
15.12020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
15.22020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
15.32030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。
15.42030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
15.5自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
15.6国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
15.7保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
15.82020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
15.92020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
15.10生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。
15.11保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
15.12持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。
引用:農林水産省『SDGsの目標とターゲット』

これら12の取り組みをすべて実施することで、森林や生態系に依存する人々の生活を守ることができると考えられています。また、生物多様性を豊かにし、未来の世代に天然資源の恩恵を与えることにも役立つといわれています。

陸の豊かさを守るための世界や日本の動き

SDGs15の目標達成に向けては、世界や日本でさまざまな取り組みが行われています。ここからは、「陸の豊かさも守ろう」に関連する世界や日本の動きを解説します。

世界の取り組み

世界では、絶滅が危惧される野生動植物を保護する目的で、1975年にワシントン条約が発効されました。2022年時点で加盟国は184カ国です。

また、2005年に開催された国連気候変動枠組み条約では、REDD+(レッドプラス)が提案されました。REDD+とは、途上国における森林減少・劣化を抑制し、気候変動を食い止めようという取り組みです。

他にも、砂漠化を防ぐために国連で結ばれた国連砂漠化対処条約(UNCCD)や地球に優しい持続可能な産業を目指すグリーン・コモディティ・プログラムなどが実施されています。

参考:経済産業省『ワシントン条約について(条約全文、附属書、締約国など)』
参考:REDD研究開発センター『REDD基礎知識』

日本の取り組み

日本では、環境省が2014年4月に「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」を策定しました。これは、日本国内で絶滅のおそれのある野生動植物種を指定し、自然再生や生息地外保全、野生復帰などさまざまな手法で野生生物の保全を図ることを目的としています。

また、里山など人の営みによって自然が守られている場を促進するOECMの取り組みも、環境省主導で進められています。OECMは2021年のG7サミットで締結された30by30(サーティ・バイ・サーティ)に貢献する手段として注目され、あらゆる企業・団体が連合し30by30の目標達成に尽力しています。

なお、30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、生物多様性の損失を抑制し回復するというゴールに向け、2030年までにそれぞれ陸と海の30%以上を自然保護区域にするという目標です。

参考:環境省『絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略』
参考:環境省『30by30』

SDGs目標15の達成に向けた企業の取り組み事例

SDGs目標15の達成に向けては企業も動き出しています。ここからは、企業独自の取り組み事例をご紹介します。

公益財団法人イオン環境財団

イオン環境財団は、1990年に国内で初めて地球環境をテーマにした企業単独の財団法人を設立。この団体では、「森づくり」「環境活動助成事業」「環境教育の推進」「パートナーシップ」の4つの柱のもと、持続可能な社会の実現を目指しています。代表的な活動として、アジアを中心とした世界各国に植樹を実施。さらには、里山の保全・利活用を促進し「新しい里山」の構築を図っています。

参考:公益財団法人イオン環境財団『イオン環境財団について』

キリンホールディングス株式会社

ビールや清涼飲料水の製造を手掛けるキリンホールディングス株式会社では「共通価値の創造」を掲げ、社会と共に持続的に成長するため、取り組むべき課題を明確化しています。具体的には、酒類メーカーの責任として、まずはアルコール関連問題に着手。その上で「健康」「コミュニティ」「環境」の3つの社会課題の解決に事業を通じて取り組み、心豊かな社会の実現を目指しています。

参考:キリンホールディングス株式会社『社会との価値共創』

イケア・ジャパン株式会社

オランダに本社を置く世界最大の家具量販店であるイケア・ジャパン株式会社では、「毎日をサステナブルに」をコンセプトに掲げSDGsに取り組んでいます。イケアでは、手ごろな価格で資源・エネルギー効率の高い製品を提供し、消費者自身が家庭からサステナブルな暮らしを実現できるような商品開発を実施。そのほか、100%再生可能電力の活用やゼロエミッション配送などに取り組んでいます。

参考:イケア・ジャパン株式会社『毎日をサステナブルに』

陸の豊かさを守るために私たちにできること

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」を詳しく解説。企業の取り組みや個人でできること
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SDGs目標15を達成するために、私たちにできることはたくさんあります。ここからは、身近な生活から意識できる行動をご紹介します。

生態系に配慮された認証マークのある商品を購入する

地球環境の保護に貢献するには、生態系に配慮された認証マークのある商品を購入する方法があります。認証マークとは、商品やサービスの差別化を図るために使用されるマークのこと。一般的に品質や性能、安全性を証明するものがあり、認証マークの中には、地球環境へ配慮されたマークもあります。代表例は以下の通りです。

●国際フェアトレード認証ラベル
●レインフォレスト・アライアンス認証マーク
●クルエルティフリー認証
●FSC認証ラベル
●RSPO認証ラベル
●有機JASマーク など

このように、生態系に配慮した商品を証明するため、さまざまな認証制度が存在します。認証マークに興味を持ち、認証商品を購入することで企業の取り組みを支援することで、環境保全に貢献できるでしょう。

森林認証制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

食事における消費活動を見直す

陸上の生態系へ影響をもたらす大きな原因は、食料生産といわれています。そのため、地元の食材を上手に取り入れるなど、食事における消費活動の見直しは個人でできる取り組みの一つです。地元で生産された食材を地元で消費することを「地産地消」、旬の食材を旬の時期に食べることを「旬産旬消」と呼びます。これは、生産・輸送・保存に関わる二酸化炭素などのエネルギーを抑える効果が期待できます。

また、牛や豚などの生産は、飼育段階で穀物など飼料の栽培として、多くの土地と水を必要とします。一方の植物は、少ない土地や水で生産でき環境負荷が抑制できます。肉の消費を抑え、ライフスタイルに合わせて意識的に野菜を取り入れることで、生物多様性の保全に貢献できるでしょう。

参考:環境省『サステナブルで健康な食生活の提案』

ごみを減らす

資源の有効活用・再利用を進め循環型社会を実現するためには、日常生活において5Rを意識し、ごみを減らすことが大切です。5Rとは、Reduce(リデュース)Reuse(リユース)Repair(リペア)Refuse(リフューズ)Recycle(リサイクル)の5つの単語の頭文字です。それぞれ、ゴミを減らす行動として注目されています。

●Reduce(リデュース)ごみを発生させない
●Reuse(リユース)使い捨てせず繰り返し使う
●Repair(リペア)修理・修繕して使う
●Refuse(リフューズ)ごみとなるものを事前に断る
●Recycle(リサイクル)資源として再利用する

5Rの取り組み以外にも、自宅での家庭菜園の実施や生ごみで堆肥を作るコンポストなどの取り組みも、自然環境に配慮する行動としておすすめです。

環境に優しい事業や取り組みを知る

地球に優しい活動をしたい時は、国や自治体、企業によってどのような取り組みが行われているか知見を広めることも大切です。国や自治体が取り組む事業が何に役立つのかを見定めることで、生活を見直したり、ボランティアで直接的に関わったりすることもできるでしょう。

企業に目を向ける際は、SDGs達成に向けた事業を把握したり、商品にある認証マークのチェックをしたりして、消費活動によって企業を支援することも可能です。さらに、自然保護活動を行う団体へ寄付することで、環境保全に向けた効果を期待できるでしょう。

日本の森林における現状を知り循環利用の促進を

日本は国土の約3分の2を森林が占める、世界でも有数の森林国です。その中でも約4割は人が植え育てた人工林であり、人工林を伐採して活用することで森林の持続的なサイクルを生み出すとされています。持続的なサイクルが実現すれば、地球温暖化の防止や生物多様性の保全、国土を災害から守るといった働きが期待できるでしょう。

しかし実際は、人工林の多くが本格的な利用時期を迎えているものの、林業の衰退などに伴い十分な活用が進んでいない状況です。

そのため、林野庁では、林業及び木材産業を安定的に成長発展させることが重要だとしています。具体的には、山村などにおける就業機会の創出と所得水準の上昇など、「成長産業化」を早期に実現させ、適切な森林管理で循環利用を行うことを目指しています。

また、森林サイクルの促進に取り組む企業もあります。長野県の齋藤木材工業株式会社では、集成材の使用が難しい丸太部分の7割の端材を「信州産カラマツ薪」として販売し、丸太価値の最大化を図っています。この取り組みによって「木を伐り、使い、植え、育て、また使う」という持続的な森林サイクルを実現。これまで十分に活用できなかった端材に付加価値を与えることで、多方面で木に触れる機会の創造や健全な森林環境の整備を進め、循環型社会の構築を目指しています。

陸の豊かさを守る取り組みを知り、身近なことから見直そう

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」は、森林などの陸地環境の保護や、生物多様性の維持を目的とした目標です。目標達成に向け、世界や日本、企業はさまざまな取り組みを実施しています。一方、未来の世代まで豊かな自然資産を残すためには、私たち一人ひとりの意識的な行動が不可欠です。今回紹介した内容を参考に、日々の生活を通じてできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。