温室効果ガスを減らすには?重要性や企業がすべきこと、個人でできることをご紹介
「温室効果ガス」は地球温暖化の原因の一つとされ、減らすための取り組みが世界各国で実施されています。昨今の環境意識の高まりもあり、「温室効果ガスとは何か」「どのような影響があるのか」などを知りたい方もいるでしょう。この記事では、温室効果ガスの概要や環境への影響を分かりやすく解説するとともに、日本企業の取り組み事例、企業や個人で温室効果ガスを減らすためにできることをご紹介します。
Contents
温室効果ガスとは?
「温室効果ガス」(Greenhouse Gas、略称GHG)とは、大気を構成する成分のうち、温室効果をもたらすとされているものを指します。主に、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン類です。
そもそも温室効果とは、太陽の光で暖められた地表の熱を保持して、地表を一定の温度に保つ仕組みのこと。地球は赤外線(温かさを感じる太陽の光)を吸収して、再び地球の外へ熱を放出します。このとき、放出される熱の一部を吸収して、地球の表面から熱が逃げすぎないようにしている気体が「温室効果ガス」です。
現在、世界の平均気温はおよそ14℃です。もしも温室効果ガスが全くなかったら、太陽の熱は全て宇宙へ放出されてしまうため、平均気温は氷点下19度まで下がってしまうといわれています。
参考:気象庁『温室効果ガス』
温室効果ガスによる影響
地球を暖かく保つのが温室効果ガスの役割ですが、近年、この温室効果ガスが増えすぎたことで問題が生じています。大気中の温室効果ガスが増えると温室効果が強くなり、地球全体の平均気温が上昇します。この気温上昇を「地球温暖化」と呼んでいます。
地球温暖化による環境への影響として、海水の温度上昇とそれによる海水の膨張・氷河の融解、台風(ハリケーン)の巨大化、砂漠化・水不足などがあります。
地球温暖化は、私たちの身近なところにも影響を及ぼしています。例えば、降水量不足による農作物へのダメージ、ゲリラ豪雨の発生、スキー場の雪不足などです。
「脱炭素」「カーボンニュートラル」との違い
温室効果ガスに関連して耳にする言葉に、「脱炭素」「カーボンニュートラル」があります。どちらも地球温暖化の防止を目的とした取り組みで、同様の意味として扱われることもあります。
「脱炭素」は、二酸化炭素の排出量ゼロを目指すものです。
一方の「カーボンニュートラル」は、温室効果ガスの排出量と吸収量の全体でプラスマイナスゼロを目指すものです。温室効果ガスの排出量が、植物や森林などによる吸収量を超えないようにするため、カーボンニュートラルの達成には、排出削減だけでなく温室効果ガスの吸収作用を強化をすることも必要になります。
温室効果ガスを削減するための日本政府の取り組み
日本政府は、環境省の主管で「地球温暖化対策推進法」を策定しており、この法律に基づいて「地球温暖化対策計画」が閣議決定されています。直近では2021年10月22日に改訂されており、地球温暖化対策計画に位置付ける主な対策・施策を定めています。
その計画の中で、“2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく” と、中期目標が掲げられています。(出典:令和3年10月22日閣議決定『地球温暖化対策計画』)
ただし一律な対応を求めるものではなく、具体的な対策は産業部門・業務その他部門・運輸部門・エネルギー転換部門に分かれており、各業界の事情や事業内容に合わせた内容が明示されています。
参考:環境省『地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画』
企業が温室効果ガス削減に取り組むべき理由
温室効果ガスを減らすには、企業の取り組みも重要です。なぜ企業が取り組むべきなのかについては、次のような理由が挙げられます。
パリ協定による目標設定とSDGs
「パリ協定」とは、2015年にフランスのパリで開催された「第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」において採択された、温室効果ガス排出・削減のための、国際的な枠組みです。日本や途上国を含む多くの国が参加しており、協定を締結した国々では、温室効果ガス削減に対する取り組みが加速しました。
加えて、パリ協定と関係があるのが、2015年9月に国連サミットで採択された「SDGs」です。SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」と訳され、17の目標が設定されています。
目標13の「気候変動に具体的な対策を」は、気候変動によるリスクへの対策を求めるものとなっています。目標達成には高いレベルの努力が必要なため、国や個人だけでなく、企業も気候変動対策を意識した行動が重要です。
関連記事:『SDGsとは?わかりやすくSDGsの意味や17の目標などを紹介』
国の「2050年カーボンニュートラル宣言」
2020年10月、菅義偉内閣総理大臣(当時)は所信表明演説において、「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を、2050年までに日本全体で実質ゼロにすることを目指すものです。
政府主導で温室効果ガスを減らす取り組みが実施されることとなり、企業でも、事業活動における温室効果ガスを減らす施策が必要になっています。
参考:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組』
企業の社会的責任とステークホルダーからの評価
上述のパリ協定をきっかけに、企業においても、気候変動対策を織り込んだ事業経営が進展しています。日本は産業による二酸化炭素排出量が多く、世界でも上位の排出量を占めているため、企業は環境に対する社会的責任が求められています。
また、環境配慮への取り組みは自社のイメージアップにつながり、投資の対象にもなっています。機関投資家が投資対象を選ぶ際に、企業の環境面への配慮を判断材料の一つとしているためです。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)に対する企業の取り組みを評価基準としており、「ESG投資」と呼ばれています。企業が温室効果ガスの削減に取り組むことは、ステークホルダーからの評価を押し上げる企業メリットとも考えられます。
顧客企業からの削減要求
顧客企業から、削減を要求されているケースもあります。企業単独で行うよりもさらに効果的な削減を行うために、大企業などがサプライヤーに対して温室効果ガス削減を求めるものです。取り引きの条件として顧客企業から環境対策を提示され、対応できるサプライヤーのみが契約できる場合もあるため、企業は温室効果ガス削減対策が必要となるのです。
温室効果ガスを減らすために企業ができること
企業ができる環境対策にはさまざまなものがあります。ここでは、温室効果ガス削減のためにできることを紹介します。
省エネ対策・節電
電気などのエネルギーを生み出すために化石燃料が使われると大量のCO2が排出されるため、電力の消費量を抑えることで温室効果ガスを削減できます。
例えば、人がいない部屋の照明は消す、エアコンの設置温度を見直す、空気清浄機のフィルターをこまめに掃除するなどで無駄な電力消費を抑えるほか、省エネ性能の高い設備の導入もおすすめです。また、通勤には自家用車ではなく公共交通機関の利用を促進することも、温室効果ガスの削減につながります。
廃棄物量の削減
廃棄物(ゴミ)を減らすことも、温室効果ガスの削減につながります。ごみの焼却処分には化石燃料が必要で、大量のごみを燃やすことによって発生するCO2も増加してしまいます。
また、最終処分場(ゴミの埋立地)では、CO2の25倍もの温暖化効果があるメタンガスが排出されます。メタンガスを利用する発電施設もありますが、そもそも最終処分場の容量には限界があり、あと20年ほどで全ての最終処分場が寿命を迎えるとされています。処分場の新設は難しいため、企業の社会的責任として、廃棄物の削減には積極的に取り組む方が良いでしょう。
再生可能エネルギーの導入
企業が利用する電力について、再生可能エネルギーを導入することも、温室効果ガスの削減につながります。
「再生可能エネルギー」とは、尽きることがなく永続的に利用できるエネルギーのこと。具体的には、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスを指します。主な導入方法は、2つあります。
1つ目は、自社に発電施設を設置する方法です。設備にかかる初期費用は必要ですが、補助金・助成金制度や、固定資産税の優遇もあります。
2つ目の方法は、電力プランの変更です。新たな設備の導入が難しい企業でも、契約している電力を、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを由来とするプランに変更することで、温室効果ガスの削減が期待できます。
再生可能エネルギーの代表的な導入方法について、環境省が企業向けに情報を発信しています。自社で実行できそうなものを探してみると良いでしょう。
参考:環境省『再エネ スタート』
【事例紹介】日本企業の温室効果ガス削減対策
日本の企業では、温室効果ガスを減らすために、実際にどのようなことに取り組んでいるのかを紹介します。
ヤマトホールディングス株式会社
ヤマトホールディングス株式会社は、日本の物流持株会社で、傘下に宅配便サービスのヤマト運輸株式会社があります。2050年温室効果ガス排出実質ゼロを目指しており、2030年の温室効果ガス削減目標を、2020年度比で48%削減することを中期目標に定めています。具体的には、次のような施策を推進しています。
- EV20,000台の導入
- 太陽光発電設備810件の導入
- 2030年までにドライアイスの使用量ゼロの運用を構築
- 再生可能エネルギー由来電力の使用率を全体の70%まで向上
輸送事業者として、温室効果ガスの排出量が少ない車両の導入や、エネルギー効率の高い輸送機器を使用するほか、都市部の近距離輸送では台車や電動アシスト自転車などを使用して、温室効果ガスの排出量を抑えています。
参考:ヤマトホールディングス株式会社『2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向け2030年の削減目標を具体化』
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、コカ・コーラ社製品の製造・販売などを行っています。サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量について、2030年までに、自社による直接排出に加え、他社から供給された電気・熱の使用に伴う間接排出を50%削減。また、バリューチェーンでは30%の排出削減を目指しています(2015年比)。
旗艦製品では100%リサイクルのPETボトル導入を加速して、従来よりも軽量化したラベルレス専用デザインも採用。日本国内に約88万台あるコカ・コーラシステムの自動販売機について、省エネ型に順次切り替えを行い、自動販売機に関連する温室効果ガスの排出量も削減しています。
また、日本における各拠点の再構築、再生エネルギーの導入、低燃費車両への入れ替え、エコドライブの徹底などによって、サプライチェーン全体での温室効果ガス量削減に取り組んでいます。
参考:コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社『「資源」への取り組み』
イオン株式会社
イオン株式会社は、全国にショッピングモールや総合スーパーなどを展開する大手流通グループです。2018年に「イオン脱炭素ビジョン2050」を策定し、店舗で排出する温室効果ガスについて、2040年までに総量ゼロにする取り組みを進めています。同社におけるCO2発生の9割が店舗の電気であることから、店舗屋上に太陽光発電システムを積極的に設置。国内で約160店舗を運営するショッピングモールについて、2025年までに100%再生エネルギー導入を計画・推進中です。
その他にも、設備の省エネ運転を徹底、LED照明や省エネシステムの導入に加えのほか、PHV車・EV車の利用を促進するために、全てのモールに充電器を設置しています。
参考:イオン株式会社『イオン 脱炭素ビジョン』
キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、原材料の調達から商品の販売まで、バリューチェーン全体でCO2排出量削減に取り組んでいます。パウチ製品の包装材料をバイオマスプラスチックに変更して、包装材料の製造にかかるエネルギー消費量を年間18トン削減しました。
輸送については、2018年から、ライオン株式会社・日本パレットレンタル株式会社との3社による共同輸送をスタート。従来は各社がそれぞれ個別にトラックを手配していたために、帰りは積み荷がない状態の空車でしたが、一台のトレーラーを3社共同での利用に変更しました。関東と九州・四国をつなぐことで、空車の区間がほとんどないルートを構築して、温室効果ガスの削減に成功したそうです。
また、船舶の利用でも輸送の効率化を図り、CO2排出の削減に成功。同社単体での輸送と比較して65%の温室効果ガスを軽減しています。
(参考:キユーピー株式会社『気候変動への対応』)
温室効果ガスを減らすために個人でできること
温室効果ガスは、家庭から排出されるものもあります。そのため、個人でも日常生活で温室効果ガス削減に取り組むことが大切です。
ここでは、温室効果ガスを減らすために、個人でできることを4つ紹介します。
節電・節水に努める
節電を意識して電力消費量を減らすことが、温室効果ガスの削減につながります。
個人でできることとして、次のような取り組みがあります
- 冷暖房の設定温度を見直す・自動運転にする
- 照明器具はLEDや省エネタイプにする
- 使わない家電製品は主電源を切る
- 誰もいない部屋の電気は消す など
また、節水に取り組むことも、温室効果ガスを減らすためには重要です。普段の生活では意識しないかもしれませんが、蛇口から水が出るまでの間にも電気が使われるためです。水源地から水を浄水場へ送る、浄水場で水をきれいにする、各家庭にポンプで水を送るなど、設備を動かすために電気が使われることで、温室効果ガスが排出されるのです。
- 手を洗うとき・歯磨き・髪を洗うときに、水(お湯)を流したままにしない
- シャワーヘッドを節水型に取り替える
- お風呂の残り湯を洗濯などに活用する
- トイレは大小レバーを使い分ける
- 食器の油汚れは不要な布などであらかじめ拭きとる
無駄な電気・水の使用を減らす行動が、温室効果ガスを減らすことにつながります。
マイバッグやマイボトルを使う
マイバッグやマイボトルを使用することで、使い捨てのプラスチックごみを減らすことができ、ごみ焼却で発生する温室効果ガスの削減につながります。
最近は、マイ箸やストローなどの持ち歩きも注目されており、飲食店などでプラスチックストローを使わないことで、ごみの削減につなげる動きもあります。
移動は公共交通機関・自転車を使う
移動に電車やバスを利用することも、温室効果ガスを減らすための行動の一つです。公共交通機関は一度に多くの人を運ぶため、自家用車で移動するよりも、一人あたりの温室効果ガスの排出量を抑えることが可能です。
また、自転車は化石燃料を使わないため、温室効果ガスの排出もありません。移動距離が短い場合は、自転車を使うのもおすすめです。
環境に優しい商品を購入する
環境に配慮した商品を購入することも、温室効果ガスの削減へとつながります。例えば、地元産の食材を地域内で消費する「地産地消」です。輸送距離が長いほど排出される温室効果ガスも増加しますが、地域で消費すれば温室効果ガスを抑制できます。また、温室効果ガスの排出抑制に力を入れている企業の製品を購入することも、結果として温室効果ガスを減らすことにつながります。
その他に、暖房器具の使用で排出される温室効果ガスを減らすことも、検討してみましょう。
薪ストーブは化石燃料を使用せず、再生可能エネルギーを利用する点で、温室効果ガスの抑制につながる暖房器具です。薪を燃やすことでCO2が排出されますが、そのCO2は、森の木々が成長するときに吸収されます。加工された木の一部は薪になり、薪ストーブから排出されたCO2を森が吸収するという、地球に優しい循環が期待できます。
齋藤木材工業株式会社の薪は、含水率10±3%とよく乾燥しているため、燃焼時の煙が少ない薪となっています。そのため、薪の中でも特に温室効果ガス(CO2)の排出が少ない、エコな薪といえるでしょう。初心者の方でも簡単に着火が可能で、着火補助材を同梱していることも魅力。集成材の使用が難しい端材も有効活用することで、放置林の減少と森林資源の有効活用につながります。
身近にできるところから温室効果ガスを減らしていこう
温室効果ガスは、地表の温度を適切に保つには必要ですが、増えすぎると地球温暖化を悪化させてしまいます。温室効果ガスの排出抑制に取り組む流れは世界的に加速しており、日本では、2030年までに温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指しています。
企業が温室効果ガスの排出を減らすために、省エネ対策やごみの減量を実施することで、自社の電気代やごみの処分にかかるコスト削減も期待できるでしょう。また、個人で行う節電・節水やマイバッグの使用なども、温室効果ガスを減らすために重要です。温室効果ガスを減らして地球温暖化を食い止めるために、できることから取り組んでみてはいかがでしょうか。