マイクロプラスチック問題とは?原因と対策、一人ひとりにできることを解説
環境問題の一つである海洋汚染。その原因がマイクロプラスチックによるものと聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。今回はマイクロプラスチックとは何か、マイクロプラスチックが引き起こす問題や影響とあわせて、一人ひとりができる対策について解説します。
Contents
マイクロプラスチック問題とは
マイクロプラスチック問題とは、5mm以下のサイズのマイクロプラスチックが引き起こす環境問題です。マイクロプラスチックは、その小ささから回収が難しく、海洋汚染の原因や海の生態系に大きな影響を与えています。
具体的には「海の生きものがエサと間違えてマイクロプラスチックを食べてしまう」「自然には分解されないプラスチックが海面を浮遊・沈殿する」といった問題が起きており、地球温暖化とともに世界的な課題となっています。
マイクロプラスチックの種類
マイクロプラスチックには、「一次的マイクロプラスチック」と「二次的マイクロプラスチック」という2つの種類があります。ここでは、その違いについて解説します。
一次的マイクロプラスチック
一次的マイクロプラスチックは、最初から微小サイズで製造されたプラスチックです。歯磨き粉や洗顔料といったスクラブ剤に使用されていることもあり、生活排水と一緒に家庭の排水溝から海や川へと流出します。一次的マイクロプラスチックは、その小ささから一度流出してしまうと回収が困難とされています。
二次的マイクロプラスチック
二次的マイクロプラスチックは、ビニール袋などの使い捨てプラスチックやペットボトルといった大きなサイズで製造されたプラスチックが紫外線や波にさらされて破砕され、二次的にマイクロサイズになったものを指します。二次的マイクロプラスチックについては、プラスチックごみの排出を抑え、マイクロ化する前に回収するなどの対策も効果的です。
マイクロプラスチック問題の現状
環境省の『環境・循環型社会・生物多様性白書』によると、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しているという試算があり、さらに2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという予測もあります。
また2016年には、九州大学と東京海洋大学、寒地土木研究所の共同研究チームがマイクロプラスチックの浮遊量に関する将来予測を発表。プラスチックごみの海洋流出が増加し続けた場合、マイクロプラスチックの浮遊量は、調査当時から2060年までの間に約4倍の量になると予想され、海洋生物への影響が懸念されています。
参考:環境省『令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』「第3章 プラスチックを取り巻く状況と資源循環体制の構築に向けて」、九州大学『海洋における将来のマイクロプラスチック浮遊量を世界で初めて予測 〜海洋プラスチック汚染の監視と軽減に期待〜』
マイクロプラスチック問題の影響
マイクロプラスチックは、海洋環境を中心にさまざまな場面で影響を及ぼしています。ここでは、マイクロプラスチック問題における影響について解説します。
海の生きものへの影響
マイクロプラスチック問題において、大きな課題の一つが海の生きものへの影響です。海の生きものがマイクロプラスチックをエサと間違えて食べてしまうと、炎症反応や摂食障害につながる可能性があることがわかっています。
2019年にフィリピン沿岸に打ち上げられたクジラの死骸からは、約40kg分のプラスチックが発見されました。このクジラの死因は餓死と脱水。大量のプラスチックを飲み込んだことにより、十分な量のエサが接種できず、またエサから接種していた水分も不足していたと見られています。このようにマイクロプラスチックを含めた海洋プラスチックごみの誤飲により、命を落とす海の生きものがいることが明らかになっています。
参考:政府広報オンライン『海のプラスチックごみを減らし きれいな海と生き物を守る!~「プラスチック・スマート」キャンペーン~』
産業への影響
マイクロプラスチックは、海の生きものだけでなく、産業にも大きな影響を与えているといえるでしょう。例えば、先述したように海の生きものがエサと間違えてマイクロプラスチックを誤飲し、死に至るケースが多発しています。それに伴い、漁獲量が減ることで漁業にも影響し、産業衰退につながっていくと懸念されています。
またマイクロプラスチックを含む海洋ごみが海岸へ漂着することにより海の美しさが失われることも懸念され、観光業にも影響が出ると考えられています。
人体への影響
マイクロプラスチックによる人体への影響は、まだ解明されていません。しかし、マイクロプラスチックには、ダイオキシンをはじめとする海中の有害化学物質を取り込みやすい性質があることが判明しつつあります。そのため、食物連鎖を通じてマイクロプラスチックが人の口に入ることも考えられます。人体への影響は、プラスチックそのものというよりもマイクロプラスチックに吸着した化学物質によるものが考えられますが、その影響がどの程度になるかについてはまだ明らかになっていません。リスクを減らすためにも、マイクロプラスチックを海へ流出させずに、家庭や街で食い止めることが大切です。
マイクロプラスチック問題への国内外の対策
マイクロプラスチック問題に対し、世界各国でさまざまな対策を講じています。ここではそれぞれの国や地域でどのような取り組みが行われているかご紹介します。
各国の取り組み
まず諸外国におけるプラスチック削減に関する取り組みについてご紹介します。
アフリカ諸国
ケニアやルワンダ、エチオピアやタンザニアなどアフリカ諸国は、脱プラスチック先進国とされています。2019年に独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が発表したレポートによるとアフリカ大陸では、54カ国中、30カ国がプラスチック袋の規制を導入。特にケニアとルワンダにおいては、プラスチック袋の使用に対し、罰金もしくは禁固刑という厳しい罰則もあります。
アフリカ社会では、都市部の人口増加、自給自足から食べ物を購入するというライフスタイルの変化、それらに伴って消費拡大が起き、ごみの量が増加しました。しかし、処理能力が追いつかず、ごみの処分が喫緊の課題としてあります。そのような背景からアフリカ諸国ではプラスチックに対する規制が進んでいるとされています。
参考:独立行政法人日本貿易振興機構『世界で一番「エコ」な大陸か?(アフリカ)』
EU(欧州連合)
EU(欧州連合)では、2018年に「欧州プラスチック戦略」を策定。2030年までの具体的な数値目標として「EUに上市する全てのプラ製容器包装は、費用効果的な方法でリユース又はリサイクル可能にする。」「欧州で発生した廃プラの半分以上をリサイクルする。」といったことを掲げています。
さらに2023年9月には、マイクロプラスチック添加製品の原則販売禁止が決定されました。順次、マイクロプラスチックを添加した対象製品の域内販売が禁止されていくとのことです。
参考:環境省『EUの政策概要』、独立行政法人日本貿易振興機構『EU、マイクロプラスチック添加製品の原則販売禁止を決定』
日本の取り組み
日本では、2019年に環境省が「プラスチック資源循環戦略」を策定。基本原則として「3R+Renewable」を掲げています。3R+Renewableとは、Recycle(リサイクル/再生利用)、 Reuse(リユース/再使用)、 Reduce(リデュース/発生抑制)の頭文字を取った3Rに、 再生可能な資源に替える取り組みであるRenewable(リニューアブル)が加えられたものです。
リニューアブルな取り組みの例として、プラスチック製のレジ袋をバイオマスプラスチック製に替えることなどが挙げられます。レジ袋などのプラスチック製買い物袋の使用量削減を目的にレジ袋有料化法が2020年7月に施行されました。その際、無料提供が認められる袋としてバイオマスプラスチック製のレジ袋が注目されました。
参考:環境省『「プラスチック資源循環戦略」について』『Re-Style』
マイクロプラスチック問題に対し、一人ひとりができること
世界的に大きな影響を与えているマイクロプラスチック問題。しかし、一人ひとりが簡単にできることもあります。ここでは、今日からできる取り組みを紹介していきます。
プラスチック製品を買わない
「プラスチック製品を買わない」と意識することも、マイクロプラスチック問題に対してできることの一つです。使い捨ての物でなくても、プラスチック製品はやがてごみとなります。食器や家具、おもちゃ、お菓子などさまざまな商品を購入する際は、プラスチック製品かどうかを判断基準にし、紙や木、金属など分解あるいは再利用できる素材を選んで購入しましょう。
環境に配慮した商品を選ぶ
環境に配慮した商品を選ぶこともまた私たちにできるアクションの一つです。例えば、食品や日用品などは、紙包装をはじめ、プラスチックによる過剰包装になっていないものを選びましょう。また衣類においては、化学繊維が用いられていると洗濯時にマイクロプラスチックが流出する恐れがあります。そのため、サステナブルな素材が使用されているものがおすすめです。
マイボトル・マイバッグを持参する
マイボトルやマイバックを持参することで、使い捨てプラスチック製品の購入・もらう機会が減ります。特にマイボトルの持参は、マイクロプラスチック対策以外の点においてもメリットがあります。マイボトルを持ち歩くことで、店舗によっては割引サービスを受けられ、環境だけでなくお財布にも優しい行動といえるでしょう。この機会にマイボトルやマイバッグを持ち歩いてみてはいかがでしょうか。
ごみの分別を徹底する
マイクロプラスチックには、レジ袋など大きなプラスチックが劣化し、粉砕されて細かくなるものがあります。回収しやすい大きな状態でしっかりと分別し、処分することで、川や海へと流れるマイクロプラスチックを減らすことができます。ごみは自治体のルールに従って分別を徹底しましょう。
今あるものを大切に使う
今、持っている物を大切に使うことは、マイクロプラスチック問題だけでなく地球環境にも配慮した行動といえるでしょう。修理しながら丁寧に使う、あるいはリメイクして別のものに変えてみる、大切に使い続けることでごみになる物を減らし、またプラスチック製品を消費する機会も減っていくでしょう。「もったいない」の気持ちを大切に、買い替える前に今ある物を見直してみるのはいかがでしょうか。
マイクロプラスチック問題を理解して、できることから取り組もう
マイクロプラスチック問題は、その小ささゆえに回収が困難で、さらに海の生きものをはじめとする海洋環境への影響の大きさが喫緊の課題となっています。海の生態系をはじめとする地球環境の保全のためにも、一人ひとりがマイクロプラスチックに関する問題を理解することが大切です。正しいごみの分別やマイボトルの持参、環境に配慮した商品を選ぶなど、身近にできることからアクションを起こしていきましょう。