サステナブル素材とは。種類や特徴、企業の取り組み事例をご紹介

サステナブル素材とは。種類や特徴、企業の取り組み事例をご紹介

サステナブル素材とは、環境や社会問題に配慮された素材のこと。昨今、地球環境や社会問題への意識の高まりから、商品を選ぶ際に素材や原料などに注目し、社会に貢献したいと考える人が増えています。今回は、サステナブル素材の概要や具体的な種類や特徴、サステナブル素材を活かした商品例をご紹介します。商品を選ぶときの基準として参考にしてください。

サステナブルな素材とは|環境・生き物・社会問題に配慮した素材のこと

サステナブルな素材とは、原料そのものから生産過程・廃棄されるまでの一連の流れにおいて、環境・生き物・社会問題に配慮した素材を指します。

サステナブル(Sustainable)は直訳すると「持続可能な」を意味します。持続可能な素材の定義は、以下の2項目に当てはまるものです。

【1】地球環境や動物に配慮された素材であること
・自然由来の繊維やリサイクルされた材料など、環境負荷の少ない素材
・生産過程において、二酸化炭素や水を多く排出しないものや危険性のある薬品を使用しないもの
・動物の生命に負担をかけないもの

【2】適正な労働環境において生産されていること
・生産に携わった人が、適正な労働環境のもとで働き、適正な賃金で雇用されて作り出された製品

サステナブル素材が注目される背景

サステナブル素材が注目される背景として、「環境への影響」と「SDGsの達成」が挙げられます。

アパレル業界は、大量生産・大量消費・大量廃棄による環境汚染や労働環境問題などから、環境汚染産業であると指摘されています。

具体的には、衣類1着当たりの製造に対して、二酸化炭素は25.5kg排出され、これは500ml約255本の製造分に当たります。また、水消費量も2,300lと言われています。労働環境においては、ファストファッションの流行により、安い人件費を求めた結果、劣悪な環境下での製造も社会問題になっています。

そのような現状から、アパレル業界が抱える環境問題の改善はSDGsの達成に貢献するとして注目されています。SDGsとは、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標です。

サステナブル素材である天然繊維やリサイクル素材の活用は、環境汚染の防止だけでなく、発展途上国の労働改善を図るきっかけにもつながります。今後は、よりよい未来の実現のため、サステナブル素材の役割はますます大きくなることが期待されます。

参考:環境省「SUSTAINABLE FASHION」

サステナブル素材の種類と特徴

image by Trisha Downing on Unsplash

サステナブル素材は大きく分けて「天然素材」「リサイクル素材」「自然や人に配慮がなされた素材」の3つに分けられます。ここからは、サステナブル素材の種類と特徴について解説します。

天然素材

1つ目の天然素材とは、植物由来の繊維で自然界に存在する素材を指します。天然素材は、化学的に作られる素材に比べ、加工における必要エネルギーが少ない特徴があります。また、生分解性と呼ばれる微生物の働きによって自然界に分解される力を持つため、ゴミ廃棄による地球環境汚染も防げる効果があります。代表的な天然素材をご紹介します。

オーガニックコットン

オーガニックコットンとは、農薬や追肥といった化学農薬を使用しない有機農業で生産された木綿のこと。オーガニックコットンに認定されるためには、各国が定めた認証機関で、農薬・肥料・労働者の安全や健康への配慮、児童労働の禁止といった一定の基準をクリアする必要があります。人にも環境にも優しい素材の一つです。

一方で、通常のコットン栽培は、害虫駆除や落葉剤など多くの化学肥料と農薬が使用され、綿花栽培による土壌や水質への環境負荷が大きいです。さらに、栽培時の農薬により栽培する人への健康被害も問題視されています。

バイオマスプラスチック

バイオマスプラスチックとは、とうもろこしやサトウキビなどの動植物を原料とした有機資源です。原材料となる植物は、光合成の際に多くの二酸化炭素を吸収するため、焼却した際に発生する二酸化炭素は実質ゼロとみなされるカーボンニュートラルになります。

さらに、土の中で分解もされるため、残留して悪影響を与えないことから、環境に優しい素材として注目されています。バイオマスプラスチックは、衣類以外に、ブランド名がかかれたタグや洗濯表示のタグ、ワッペンなどにも使用されています。

再生セルロース繊維

再生セルロース繊維とは、植物を原料にして人工的に作られた繊維のこと。木材などのセルロース部分を化学処理で溶かし、再び繊維にすることで作られます。再生繊維とも呼ばれ、代表的な種類はレーヨンやキュプラ、リヨセルなどです。

一般的な化学繊維は原料に石油が使われますが、石油は限りある資源です。また石油から作られる繊維は焼却時に二酸化炭素が発生する問題があるため、地球に優しい素材とはいえません。

再生セルロース繊維でできた衣類は、光沢感があり、吸湿性・放湿性に優れていることから、下着やパジャマ、シーツなどに使用されることが多いです。

リサイクル素材

2つ目のリサイクル素材とは、廃棄予定だった資源を再利用して作られた素材のことです。あらゆる資源の再利用が促進されることで、貴重な資源やエネルギーを守り、廃棄物の減少にも効果をもたらします。代表的なリサイクル素材をご紹介します。

再生ポリエステル繊維

再生ポリエステル繊維とは、廃棄予定のペットボトルやフイルムくず、裁断くずなどを原料として作られた繊維のこと。リサイクルポリエステルと呼ばれることもあります。ペットボトルなどを作るポリエステルの原料は、もともと石油や石炭であるため、再利用することで資源の有効活用につながります。

再生ポリエステル繊維は、耐久性・伸縮性・形状安定性に優れていることから、しわになりにくく型崩れしにくい特徴があります。さらに吸湿性や速乾性も高いため、さまざまな衣類に活用されています。

アニマルフリー素材

アニマルフリーな素材とは、動物由来ではない素材のこと。動物由来である素材には、毛皮や皮、ダウンなどがありますが、これらは動物達の犠牲のもとに成り立った商品です。さらに、毛皮や皮革製品の加工には多くの水や化学薬品を使用するため、環境汚染も指摘されています。

アニマルフリーの代表的な素材には、ヴィーガンレザーやアップサイクル素材があります。ヴィーガンレザーは、植物性原料を使い、革製品の風合いや質感を再現して作られた素材で、原材料には、りんごやきのこ、サボテン、パイナップルなどが使用されています。

アップサイクル素材は、廃棄予定の素材を加工し、新たな製品として生まれ変わった素材のこと。使い古したジーンズや車のシートベルトなどあらゆる製品が、価値を高めて生まれ変わっています。

人や自然環境に配慮された素材

3つ目の人や自然環境に配慮された素材とは、労働環境や環境問題の改善に取り組む素材のことです。代表的な人や自然環境に配慮された素材をご紹介します。

フェアトレード素材

フェアトレードとは、直訳すると「公正・公平な貿易」という意味で、生産者と取引先の対等な関係のもとに作られた製品のことです。発展途上国で生産された商品は、先進国にとっては低価格で手に入れやすいものです。しかし背景には、生産者と取引先の関係が対等ではなく、生産者に対して安い賃金で劣悪な労働環境を強いているケースがあります。

フェアトレードは、適正な賃金の支払い・労働環境の整備などを通して、貧困がなく公正な社会を作り、生産者の生活向上を図ることを目的としています。

無水染色素材

無水染色素材とは、水を使わずに染色した素材のこと。無水染色にはインクジェットプリントや二酸化炭素を使った染色、綿花など脱色・染色をせずに使用する方法があります。

一般的な繊維への染色は、染料を生地に定着させるため、製造工程において多くの水を使用します。さらに、染料の混ざった水はそのまま廃棄されるため、海や河川の生態系への悪影響も指摘されています。

無水染色であれば、大量排水や環境汚染といった問題を抑えることが可能です。 

サステナブル素材を商品開発に活かす企業と商品例

ここからは、上述したようなサステナブル素材を活かして、商品開発を行う企業とその取り組み事例をご紹介します。

NIKE|廃棄素材からのスニーカー製造

スポーツ関連の靴などを手掛けるNIKEでは、既存のプラスチックや糸などを再利用し、新しい素材を開発することで、二酸化炭素の排出量ゼロ・廃棄物ゼロに向けた取り組みを進めています。

例えば、廃棄処理される予定だったレザーの活用法では、再生レザー50%以上使用し、見た目や質感が天然革のような素材を開発しました。他にも、エアソールには製造廃棄物のリサイクル素材を50%以上使用、製造は100%再生可能エネルギーを使用するなど、環境に配慮した取り組みを実施しています。

参考:NIKE「NIKE FORWARD」

UNIQLO|リサイクル・リユース素材で服づくり

実用衣料品の製造小売を展開するUNIQLOでは、SDGsといった社会課題を解決するために「社会貢献室」を発足し、さまざまな活動を行っています。

例えば、ユニクロダウンリサイクルは、着なくなったユニクロのダウン商品を回収し、ダウンとフェザーの100%リサイクルを進める活動です。この活動によって、ゴミの減少だけでなく、無駄な資源を使わず、二酸化炭素の排出量にも貢献しています。他にも、リサイクル素材からの再利用や水の使用量を大幅に抑えたジーンズなど、多様な取り組みで持続可能な社会の実現を目指しています。

参考:UNIQLO「ユニクロとSDGs」

patagonia|環境に望ましい素材を活用したアウトドアウェア

アウトドアブランドを展開するpatagoniaでは、SDGsの問題を「環境的責任」と位置付け、素材や製品、製造方法を見直し、厳格な環境責任と動物福祉プログラムを構築しています。

例えば、patagoniaの製品ラインの72%がリサイクル素材を採用。さらに、コットンは100%有機農法です。他にも、アパレル業界を変えるため、世界中の人々の生活と労働環境の改善に向け、前進的な取り組みにも率先して参加しています。

参考:patagonia「環境的責任プログラム」

サステナブルな取り組みはSDGs達成につながる

SDGsの目標達成は、ファッション業界だけの問題ではなく、他分野の企業活動においても優先順位が高い問題です。

持続可能でよりよい世界の実現を目指すためには、消費者自身が商品を選択する際に、サステナビリティに配慮した取り組みを実施している企業か確認することが不可欠です。SDGsに配慮した取り組みを商品購入という形で応援することで、サステナブルな取り組みのさらなる活性化を図れるでしょう。

なおSDGsの達成には、森林を適切に保護し、二酸化炭素の吸収固定量を増やすことが大切です。一つの例として、長野県の齋藤木材工業株式会社では「木を伐り、使い、植え、育て、また使う」という持続的な森林サイクルを実現しています。集成材の使用が難しい丸太部分の7割の端材は薪として販売し、木を余すことなく活用。さらに、放置林の減少に努め循環型社会の構築に貢献しています。

このように、環境に負荷のかからない解決策やアイデアを模索することで、SDGs達成に向けた動きを加速させることが可能です。企業の取り組みに目を向けることも、SDGs達成に大きく貢献するでしょう。

サステナブル素材を理解して地球に優しい選択をしよう

サステナブル素材とは、生産から廃棄に至るまで、環境や社会問題に配慮した素材のこと。その種類は、「天然素材」「リサイクル素材」「人や自然に配慮された素材」の3つに分けられ、それぞれの素材を活かしたサステナブル商品の開発が進んでいます。

地球に優しい未来の実現には、企業によるSDGsに向けた働きかけや、私たち消費者の商品選びの意識の変化がカギとなります。買い物するときの判断材料として、サステナブル素材への理解や企業のSDGsに対する取り組みに目を向けるところから始めてみてはいかがでしょうか。