環境保全の取り組みを解説。海外と日本の具体例や企業・個人ができること

環境保全の取り組みを解説。海外と日本の具体例や企業・個人ができること

環境保全とは、人の活動による環境汚染を防ぎ、自然のままの環境を維持するための取り組み。自然環境を守るだけではなく、人間の生活環境を守るためでもあります。この記事では、環境保全の概要、国内外の取り組み、地域や企業の事例、個人でできることなどをご紹介します。

そもそも「環境保全」とは

「環境保全」とは、地球環境を維持するために、環境負荷を低減する取り組みのこと。世界的な環境問題である地球温暖化や、プラスチックごみなどによる海洋汚染、生物多様性の損失などから、自然環境を守り維持していくものです。環境問題は、地球上の動植物だけでなく人間の暮らしにも影響するため、自然環境と私たちのためにも、環境保全に取り組むことが必要です。

参考:環境省『環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン

環境保全に対する国内外の取り組み

環境保全のために、国内外ではさまざまな取り組みが行われています。ここでは、国外・国内それぞれの取り組みをご紹介します。

海外の取り組み

海外で横断的に行われている取り組みとして、次のものが挙げられます。

オゾン層保護のためのウィーン条約

オゾン層は、地球を覆っている大気の層の一つです。1982年に日本の南極観測隊が、南極上空で極端にオゾン濃度が低くなる現象を発見し、1984年の国際会議(オゾンシンポジウム)で発表したのが、世界で最初の「オゾンホール」の報告です。

オゾン層は、有害な紫外線を吸収して人や生物を保護するほか、成層圏の大気を暖め気候の形成にも大きく影響するため、保護が必要となりました。その後、1985年にはオゾン層の保護を目的とする国際的な枠組み「オゾン層保護のためのウィーン条約(略称:ウィーン条約)」が採択されました。さらにこの条約を受けて、1987年には、フロンなどオゾン層を破壊する恐れがある物質を規制する「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択されています。

各国がウィーン条約とモントリオール議定書に基づいて、化学物質の規制を強化していることで、現在、オゾンホールは回復傾向にあります。

参考:外務省『オゾン層保護(ウィーン条約/モントリオール議定書)

国連気候変動枠組条約

国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change、略称UNFCCC)とは、1992年5月に採択され1994年3月に発効した、地球温暖化問題に対する国際的な枠組みです。温室効果ガス(CO2)濃度の安定化を最終目標としており、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催されています。

2023年の11月~12月にドバイ(アラブ首長国連邦)で開催されたCOP28では、パリ協定の目標達成に向けて約200カ国の代表が集まりました。

参考:外務省『国連交渉(COP、CMP、CMA、SB)

生物多様性条約

生物多様性条約(正式名称:生物の多様性に関する条約、Convention on Biological Diversity(CBD))は、生物の多様性を保全するための包括的な枠組みです。1992年に開催された「リオ地球サミット」にて採択され、日本は1993年5月に締結しました。

この条約の目的は、次の3つです。

  1. 生物多様性の保全
  2. 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
  3. 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分

2023年4月の時点では、194カ国・欧州連合(EU)・パレスチナが、この条約を締結しています。(※アメリカは未締結)

日本の取り組み

日本の代表的な取り組みとして、次のものが挙げられます。

環境基本法

環境基本法とは、日本における環境政策の指針となる法律です。以前は「公害対策基本法」や、「自然環境保全法」が環境政策の基本でしたが、公害だけでなく大気汚染、都市・生活型公害、廃棄物問題、地球温暖化など、複雑化する環境問題に広く対応するため、1993年に制定されました。

同法の基本理念は、次の3つです。

  1. 現在及び将来の世代の人間が環境の恵沢を教授し、将来に継承
  2. 全ての者の公平な役割分担の下、環境への負担の少ない持続的発展が可能な社会の構築
  3. 国際的協調による積極的な地球環境保全の推進

環境に関する国内のさまざまな法律は、この環境基本法の下位法です。

参考:『環境基本法

生物多様性国家戦略

生物多様性国家戦略とは、「生物多様性条約」と「生物多様性基本法」に基づいて定められた、「生物多様性の保全と持続可能な利用に関する、政府の基本的な計画」を指します。特定の野生動物や地域などに限定せず、地球規模で生物多様性を捉えて国家戦略を検討するものです。

現在は、2023年に策定された「生物多様性国家戦略2023-2030」が進められています。生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを意味する「ネイチャーポジティブ」の実現に向けて、5つの基本戦略と、それに紐づく状態目標・行動目標が設定されています。

参考:環境省『生物多様性国家戦略

自然環境保全法

自然環境保全法は、先述の環境基本法の下位法で、自然環境の保全を定めた法律です。優れた自然環境を維持している地域などを自然環境保全法と都道府県条例で「自然環境保全地域」として指定し、保全に努めるものです。自然環境保全地域は、極力人の手を入れずに後世に残すことを目的としており、人が利用することを前提に保護・整備を行う「自然公園法」と異なります。

環境保全協定

法令や条例による規制以外に、各地域の取り組みとして、「環境保全協定」も挙げられます。例えば、産業廃棄物処理や宅地の造成など、自治体が規定する事業について、法令の規制を上回る自主的な環境保全対策を事業者に促すものです。自治体(または地元住民)と事業者で協定を取り交わすことで、法令では規定できない事項についても、事業者の任意協力により実現が可能です。同時に、事業者と地元住民の良好な関係性構築も期待できます。

環境保全協定の内容は、地域や事業によって異なるため、自治体の公式サイトなどで確認すると良いでしょう。

各地域でさまざまな取り組みが行われている

image by Takeshi Yu on Unsplash

地域環境の保全に向けて、都道府県・市町村レベルでもさまざまな取り組みが行われています。ここでは代表的な例として、琵琶湖(滋賀県)の取り組みをご紹介します。

琵琶湖は日本最大の湖で、古くから地域の人々の生活と密接な関わりがありました。しかし、高度経済成長期には生活排水や農業排水による富栄養化(ふえいようか。水中の栄養塩類が自然の状態より増えすぎること)が進行し、プランクトンが異常に増殖。1977年には大規模な淡水赤潮が発生して、水道水の異臭味障害や養魚場での魚の大量死など、さまざまな被害をもたらしました。

淡水赤潮の原因の一つが、合成洗剤に含まれている「りん」であることが判明したことを受けて、県内全域で「合成洗剤の使用をやめて粉石けんを使おう」という運動、いわゆる「石けん運動」が広がりました。滋賀県も、「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例(通称:琵琶湖条例)」を制定し、地域の特性に合わせた下水道整備や合成洗剤の使用規制など、多様な対策を展開。その結果、水質の改善に成功しました。

また、滋賀県は琵琶湖条例が施行された7月1日を「びわ湖の日」と制定。毎年7月1日前後に、県内全域で「びわ湖を美しくする運動」を実施して、10万人以上が清掃活動を行なっています。琵琶湖の環境保全は、行政と市民が協働で取り組んだ成功事例といえるでしょう。

参考:滋賀県ホームページ『琵琶湖の保全再生について

【事例】企業が行う環境保全のための取り組み

環境保全のための取り組みは、企業でも行われています。

株式会社ファーストリテイリング(UNIQLO)

衣料品の「UNIQLO(ユニクロ)」で知られる株式会社ファーストリテイリングは、環境保全のためにさまざまな取り組みを展開しており、そのうちの一つに「商品のリサイクル」があります。同社は2030年度までに、全使用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替えることを目標に、商品をリサイクル・リユースする取り組み「RE.UNIQLO」を推進。店頭に回収ボックスを設置して、顧客から不要になった服を回収しています。

回収した服は、リユースとして難民キャンプや被災地への緊急災害支援などにリユース活用し、リユースできない服は、断熱材や防音材などの素材、新たな服の素材としてリサイクル。廃棄予定だった服を活用することで、原材料の生産過程で排出するCO2を削減しながら、限りある資源の有効利用に努めています。

参考:UNIQLO Sustainability『リサイクル素材から生まれた服

コムパックシステム株式会社

コムパックシステム株式会社(本社:長野県上田市)は、段ボールを主軸とした包装資材を取り扱う、総合包装メーカーです。同社は、2000年頃よりクライアント企業から環境に対する問い合わせが増えたことで、環境に配慮した経営を推進。環境省の環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証取得をきっかけに、社内で環境に対する意識が高まり、従業員が自ら考えて環境負荷の低減策を提案するようになりました。

同社は他にも、太陽光発電の導入、持続可能な森林資源の保全・管理につながるFSC認証取得、経営方針にSDGsを取り入れるなど、さまざまな環境保全対策を行っています。環境に配慮した独自商品がコンテストで連続受賞したことで、実績が地元新聞社などに取り上げられ、クライアントの新規開拓にもつながっています。

参考:コムパックシステム株式会社『環境への取組

【具体例】環境保全のために個人ができる取り組みは?

環境保全のためには、企業や地域による専門的な活動だけでなく、私たち個人の取り組みも大切です。

節電や省エネを意識する

日々の生活の中で、節電や省エネを意識することも環境保全につながります。使用していない家電製品の電源を切る、誰もいない部屋の電気を消す、冷暖房の設定温度を控えめにするなど、ちょっとした心がけがCO2排出量を削減します。さらに、省エネ性能の高い家電製品に買い替える、待機電力を抑える製品を選ぶなどの工夫で、より効果的な節電が可能です。

節水も環境保全につながります。水源地から蛇口まで、水を運ぶ過程で設備を動かす電気が必要なためです。節電(省エネ)・節水は、個人ですぐできる取り組みのため、少しずつ意識していきましょう。

ごみを減らす

ごみを減らすことも、環境保全のために重要です。焼却処分で発生するCO2を軽減すると同時に、埋め立てとなる焼却灰を減らすことで、環境負荷軽減に貢献します。リユースやリサイクルを積極的に行い、ごみの量を減らすのも効果的です。

また、「本当に必要なものだけを購入する」という意識を持つことも大切です。買い物前にリストを作成する、過剰包装を避けるなど、ごみになるものを持たないよう心がけましょう。

環境に配慮した製品を購入する

環境に配慮した製品を選ぶことは、個人が環境保全に貢献できる簡単な方法の一つです。エコマークやFSC認証などのマークを参考に、環境負荷の少ない製品を選ぶようにしましょう。また、地元産の食材を購入することで、輸送に伴う環境負荷を減らすこともできます。

環境に配慮した製品の一例として、齋藤木材工業株式会社の「信州産カラマツの薪」が挙げられます。集成材の製材工程で発生する端材を、薪として販売しているものです。建築素材と同様の人工乾燥を行っているため、着火しやすく、白煙が少ないのが特徴です。森林資源の有効活用と放置林の減少につながる薪のため、利用を検討してはいかがでしょうか。

環境保全活動に参加する

環境保全活動に参加することは、環境問題の解決に直接貢献できる方法です。例えば、海岸や街中のゴミ拾い、山林の植樹、自然保護活動などがあります。外来種の駆除活動も、地域の生態系保全のために重要な活動です。さまざまな環境保全活動が展開されているので、無理なく参加できるものを探してみましょう。

地球の未来を守るために環境保全に取り組もう

環境保全への取り組みは、地域や企業によるものだけでなく、個人でもできることがあります。地球環境問題は複雑で解決には時間がかかりますが、諦めずにできることから行動し続けることが大切です。世界と日本の取り組みをチェックしながら、節電や節水、ごみの減量、環境に配慮した商品の購入など、日常生活の中で取り組めることから始めましょう。