エコロジカル・フットプリントとは?世界や日本の現状と企業・個人の対策

エコロジカル・フットプリントとは?世界や日本の現状と企業・個人の対策

「エコロジカル・フットプリント」は、人間活動が地球環境に与える負荷を数値化したものです。エコロジカル・フットプリントを用いることで、現在の生活が地球環境に与えている影響を理解し、持続可能な社会を実現するための行動を知ることができます。この記事では、エコロジカル・フットプリントの概要や計算方法、国内外の現状、環境負荷を減らすための対策などを解説します。

エコロジカル・フットプリントとは

エコロジカル・フットプリント(ecological footprint、EF)とは、「人間活動が地球環境を踏みつけにした足跡」という意味の言葉で、人間の活動が地球環境に与える負荷を示す指標の一つです。世界自然保護基金(WWF)はエコロジカル・フットプリントを「私たちが消費するすべての再生可能な資源を生産し、人間活動から発生するCO2(二酸化炭素)を吸収するのに必要な生態系サービスの総量」と定義しています。「エコフット」と呼ぶこともあります。

エコロジカル・フットプリントで「世界全体の資源を地球1個分としたときに、人は地球何個分の資源を消費しながら生活しているか」を知り、持続可能な生活が成立するかどうかを判断する材料とします。数値が高いほど環境にかかる負荷が大きいとされ、地球が自然回復できるスピードを超えて資源を利用しないために、いかにエコフット・プリントを小さくするか、地球1個分の消費に抑えるかが重要です。

参考:WWFジャパン『地球1個分の暮らしの指標

エコロジカル・フットプリントの計算方法

エコロジカル・フットプリントを算出する際は、人間の生活に必要な土地や水域を6つに分類します。国や土地利用タイプで生産性が異なるため係数換算し、「gha(グローバルヘクタール)」という独自の単位で表します。

<計算式>
エコロジカル・フットプリント=人口×1人あたりの消費×生産・廃棄効率

出典:WWFジャパン『地球1個分の暮らしの指標

人口や1人あたりの消費が増加すると、エコロジカル・フットプリントの値も高くなります。エコロジカル・フットプリントの計算は、6つの土地区分ごとに算出して、総計を出します。

6つの土地利用タイプ
出典:環境省『エコロジカル・フットプリント指標について
  1. 耕作地(食物、繊維物、油料、ゴムなどの生産に使用される土地) 
  2. 牧草地(食肉、乳製品、皮革、羊毛などの家畜を養うために使用される土地) 
  3. 森林地(木材、薪、パルプなどの生産に使用される土地) 
  4. 漁場(水産物の生産に使用される海洋と淡水) 
  5. 生産能力阻害地(建物、道路、ダムなどに使用される土地) 
  6. 二酸化炭素吸収地[カーボン・フットプリント](二酸化炭素を吸収する森林の面積)

世界自然保護基金(WWF)は、隔年で発行している「生きている地球レポート(Living Planet Report)」の中で、エコロジカル・フットプリントを用いた環境負荷の分析について公表しています。

参考:WWFジャパン『生きている地球レポート2022

世界と日本のエコロジカル・フットプリントの現状:資源は地球何個分?

世界地図
image by Louis Hansel on Unsplash

エコロジカル・フットプリントについて、世界と日本の現状を、それぞれ解説します。

世界の現状

現在、世界全体のエコロジカル・フットプリントは、地球1.75個分です。これは、地球が自然回復できる量を超えた過剰消費であることを意味し、長期的に持続可能とはいえません。

エコフット・プリントの数値は、国によって地域差があります。それは、人口や産業規模などが国によって異なるためです。石油や石炭などの化石燃料を利用して発展してきた国は数値が高く、開発途上国のような国では低い数値となっています。エコロジカル・フットプリントに取り組む国際NPO「Global Footprint Network」の計算データによると、日本は世界第6位となっており、エコロジカル・フットプリントが世界の中でも高いことがうかがえます。

エコロジカル・フットプリントの国別ランキング(2022年)

エコロジカル・フットプリントの国別ランキング
出典:Global Footprint Network『Open Data Platform』のデータを基に作成

日本の現状

国内でも、人口や主要産業が地域によって違うため、数値は自治体によって異なります。都道府県別に見ると、エコロジカル・フットプリントの数値が高い地域は、東京都・大阪府・神奈川県に集中しています。都市部では数値が高く、地方は低くなることがうかがえます。

日本のエコロジカル・フットプリントの分布
出典:環境省『平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1部第3章

エコロジカル・フットプリントを減らすには?企業や個人ができる対策

地球環境を維持するために、エコロジカル・フットプリントの数値を下げ、1年間で消費する資源を地球1個分に抑えることが重要です。そのために、企業や個人ではどのようなことができるのでしょうか。ここでは、エコロジカル・フットプリントを減らす代表的な取り組みをご紹介します。

企業ができること

企業ができることには、消費者に向けて行う施策や個人では難しい取り組みなどが挙げられます。

環境負荷が少ない商品の選定・開発

企業が環境負荷を軽減した商品を開発・販売することを通じて、エコロジカル・フットプリントを減らすことができます。消費者が環境に配慮した商品を選ぶことで、企業は間接的に、地球環境の維持に貢献することになります。

植林活動

植林活動も、エコロジカル・フットプリントを下げるために有効です。企業が環境経営の一環として植林活動を行うことで、森林の維持・回復に貢献できます。森林環境に関わりのある企業には、伐採した樹木を余すことなく使用するなどの工夫で環境負荷を抑えているケースもあります。

長野県にある齋藤木材工業株式会社は、製材工程で発生する端材を薪に加工して販売しています。材木として使用できない部分を活用することで、ごみを減らして環境にかかる負荷を軽減している、エコな薪です。建築材と同様の人工乾燥を行っているため、よく乾燥しており焚きつけが容易なほか、虫が出にくいというメリットもあります。薪を購入する際は、使いやすく環境に配慮した商品を選んではいかがでしょうか。

個人ができること

エコロジカル・フットプリントを減らして地球環境を守るには、個人の努力も大切です。

買い物の仕方を見直す

買い物の仕方を見直すことも、エコロジカル・フットプリントの軽減につながります。例えば、エコマークやFSC・MSC認証などの環境に配慮した商品を選んで購入するのもよいでしょう。

食品の購入では、地産地消を意識することが、食品の長距離輸送に伴う環境負荷の軽減につながります。買う前に本当に必要か考える、買い物リストをつくるなど、不要な物を買わないことも大切なアクションです。

ごみや食品ロスを削減する

ごみを減らすことも、エコロジカル・フットプリントを減らすために有効です。ごみの回収や焼却の際に発生するCO2を削減できるためです。また、ごみを出さないことは、最終処分(埋め立て)となる焼却灰を減らすことにもつながります。

食べ残しや期限切れなど、食べることができたはずの食品を廃棄する「食品ロス」も、環境に負荷がかかる行為といえます。食材の生産から加工、販売、消費までの間で多くの資源を使用しているため、まだ食べられる食材を無駄にしない工夫が必要です。食べきれる量を調理する、適量を買うなどして食品ロスを削減し、エコロジカル・フットプリントの軽減を目指しましょう。

再生可能エネルギーやエコ住宅を選ぶ

新しく家を建てる場合は、エネルギー収支ゼロを目標とした住宅「ZEH(ゼッチ:net Zero Energy House)」を検討してはいかがでしょうか。例えば、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせて導入すると、太陽光で作り出した再生可能エネルギーを蓄えることが可能となり、停電時の備えにもなります。

リフォームする場合は、断熱性能の高い建材や窓を用いた「省エネリフォーム」がおすすめです。冷暖房効率を改善することでエアコンなどの電力消費が減り、自宅から排出するCO2を削減できます。また、光熱費の節約にもなりますよ。

ものを大切に使い、使えなくなったらリサイクルする

ものを大切に使うことや、使わないものをリサイクルすることも、エコロジカル・フットプリントを減らすことにつながります。一つのものを直しながら長く使う、中古品やレンタルを利用するなどで、環境負荷を軽減しましょう。不用品をリサイクルやリユースに出すだけでなく、リサイクルされた商品を選ぶことも、エコロジカル・フットプリントを減らす取り組みとなります。

環境保全のボランティアをする

環境保全のボランティア活動に参加することも、エコロジカル・フットプリントを減らす方法の一つです。例えば、企業や団体が主催する植林イベントで植林を行う、河川や海岸などのごみ拾いに参加するなどが挙げられます。地域ごとにさまざまな取り組みが展開されているので、無理なく参加できるものを探してみましょう。

エコロジカル・フットプリントの削減に向けて取り組もう

エコロジカル・フットプリントは、人間の活動が地球環境にどのくらい依存しているかを表しています。現在のエコロジカル・フットプリントは、地球が自然回復できる範囲を超えているため、環境負荷を軽減して数値を地球1個分に抑えることが重要です。個人でできる対策もあるため、エコロジカル・フットプリントの削減に向けて、少しずつ取り組んでいきましょう。