グリーンコンシューマーとは。10原則と身近な生活でできることを簡単解説

グリーンコンシューマーとは。10原則と身近な生活でできることを簡単解説

グリーンコンシューマーとは、直訳すると「緑の消費者」を意味します。現在、世界中で環境汚染や地球温暖化といった問題が深刻化の一途を辿っていますが、このような問題を解決する糸口として、注目されているのがグリーンコンシューマーです。今回は、グリーンコンシューマーの意味や日常の買い物から実践できる10原則の内容をご紹介します。身近に取り組める具体例も多くあるので、ぜひ参考にしてください。

グリーンコンシューマーとは

まずは、グリーンコンシューマーの意味や誕生した背景などを見ていきましょう。

グリーンコンシューマーの意味

グリーンコンシューマーとは、環境をイメージした「green」と消費者を意味する「Consumer」をかけ合わせてできた造語です。地球のことを考え環境に配慮した消費行動をする人を指すことから、「環境を大切にする消費者」と意訳されることもあります。

グリーンコンシューマーは、誰もが日常的に行う「買い物」に着目。購入する判断材料に、価格・性能・安全性に加えて「環境にどれくらい負荷をかけているか」という視点をプラスしていることに特徴があります。

なお、このようなグリーンコンシューマーによる消費活動は、「グリーンコンシューマー活動」または「グリーン購入」と呼ばれています。

グリーンコンシューマーが誕生した背景

グリーンコンシューマーという言葉が使われるようになったのは、1988年9月にイギリスの2人の作家が共著で「グリーンコンシューマー・ガイド」を出版したことがきっかけです。

当時のヨーロッパでは、チェルノブイリの原発事故やアザラシの大量死、ライン川の汚染、酸性雨など、さまざまな環境危機が相次いでおり、環境に対する人々の関心が高い時期でした。

著書の中では「日常的に使われている商品が使用後に環境にどのような影響を与えているか」や「購入によって地球規模の環境問題の改善に貢献できること」などを具体的に紹介。環境に対して何をしたらよいのかわからないという市民の思いに合致した内容であったことから、第1版の売り上げは30万部に達しました。

その後、ヨーロッパだけでなく、台湾や韓国などでも出版されたことで、グリーンコンシューマーという考え方は世界中に広まったといわれています。

LOHASとの違い

グリーンコンシューマーと近い考え方に、LOHAS(ロハス)があります。LOHASとは、「Lifestyles of Health and Sustainability」という用語の頭文字をとった造語。健康や環境、持続可能な社会生活を大切にするライフスタイルを意味します。

グリーンコンシューマーとLOHASのどちらも環境に配慮した部分では同じですが、考え方が異なります。

LOHASは「環境に良い商品を買う」ことが前提になっています。一方のグリーンコンシューマーは、「本当に必要な商品のみ買う」という考え方であり、商品の購入が前提ではありません。あくまで、必要性に考慮し、少ない消費で豊かさを感じるライフスタイルに焦点を当てています。

そのため、LOHASと比べてグリーンコンシューマーの活動のほうが「誰でも参加でき、より環境を主体とした考え方」として捉えることができるでしょう。

グリーンコンシューマーが注目される理由とその効果

グリーンコンシューマーは、環境省の環境白書でも紹介されています。なぜ、環境に配慮した消費行動を行うグリーンコンシューマーに関心が高まっているのか、注目される理由とその効果について解説します。

事業者に向けたアプローチにつながる

近年、環境汚染やごみ問題、生物多様性の喪失など、さまざまな環境問題が深刻化。その大きな要因は、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済活動です。

経済活動の主軸は、物を供給する事業者が握ると思われがちですが、消費者側の「消費行動」というアプローチによって、経済活動に変化を与えることができます。

グリーンコンシューマー活動は、誰もが日常的に行う「買い物」に環境の要素をプラスする仕組みです。マーケティングの専門家によると、全体の7%の人が購入を変えれば、店の購入も変わるといわれています。

つまり、消費者の環境保全に対する意識が高まり、環境に配慮された商品が優先的に購入されれば、商品の作り手や売り手、ひいては経済社会システム全体に変化をもたらします。そして、循環型社会へと変革する大きな力となり得ると考えられているのです。

参考:環境省『1 消費者による環境保全への取組の広がりとその社会的影響』

SDGsの達成に貢献する

グリーンコンシューマーの活動は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け個人ができるアクションの一つでもあることも、注目度を高めている要因です。

グリーンコンシューマー活動は、「使用エネルギーが少ない商品を購入する」「捨てる物が少ない商品を選ぶ」といった行動を推奨しているため、以下のSDGs目標に貢献できます。

・目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
・目標12「つくる責任 つかう責任」
・目標13「気候変動に具体的な対策を」
・目標14「海の豊かさを守ろう」
・目標15「陸の豊かさも守ろう」

これらの目標に向けた積極的な行動は、現在世界で急務の取り組みである「ゴミ」や「CO2」の削減にも大きな効果をもたらすと期待されています。

グリーンコンシューマーの「買い物における10原則」と取り組み例

グリーンコンシューマーとは。10原則と身近な生活でできることを簡単解説
image by Evie Calder on Unsplash

日本では、環境に配慮した選択として「グリーンコンシューマー10原則」が行動指針として掲げられています。これは、イギリスの「グリーンコンシューマー・ガイド」を参考に、複数の民間団体で構成されたグリーンコンシューマー全国ネットワークによって作られました。

最後に、「グリーンコンシューマー10原則」の内容をもとに、具体的な消費行動の取り組み例をご紹介します。

参考:認定NPO法人環境市民

【原則1】必要なものを必要なだけ買う

地球上の資源には限りがあるため、必要なものを必要なだけ購入する意識が大切です。地球上の8割の資源は、世界の2割を占める先進国によって消費されているといわれています。すべての人が継続可能な暮らしを営むためには、先進国の過剰な消費を抑えていくことが重要になるでしょう。

<取り組みの具体例>
・必要なものだけを購入する
・衝動買いを避ける
・賞味期限内に食べきれる量だけ購入する
・外食は食べきれる量だけ注文する
・使用頻度の少ない物はレンタルサービスを活用する

【原則2】使い捨て商品ではなく、長く使えるものを選ぶ

ごみや廃棄物をなるべく出さないために、使い捨てではなく長く使える商品を選ぶことも重要なポイントです。ごみは処分する過程において、多くのCO2が発生します。さらに、使い捨ての商品ばかり使用していると、ごみの量は増加し、資源の枯渇や環境悪化を招くリスクもあります。

商品を購入するときは、「長く使えるか」「メンテナンスしやすいか」という視点でものを選ぶと、購入頻度を抑えることにつながるでしょう。

<取り組みの具体例>
・流行に左右されず耐久性が優れている商品を選ぶ
・交換パーツが販売されている商品を選ぶ
・自社製品のメンテナンスサービスを提供している商品を購入する

【原則3】容器や包装はないものを優先し、次に最小限のもの、容器は再使用できるものを選ぶ

過剰包装は多くのごみを生み出す原因になるため、商品を購入するときは、包装が少ないものを選ぶように心がけましょう。環境省の資料によると、家庭から排出されるごみを容積比率で見ると、全体の約6割が容器包装という結果が出ています。日頃からマイバックやマイボトルなどを持ち歩き、包装や容器を断れるようにしましょう。

<取り組みの具体例>
・量り売りや裸売りの商品を選ぶ
・簡易包装の商品を選ぶ
・マイバックやマイボトルなどを持参する

参考:環境省『容器包装廃棄物の使用・排出実態調査の概要(令和4年度)』

【原則4】作るとき、買うとき、捨てるときに、資源とエネルギー消費の少ないものを選ぶ

商品は、原材料の調達から生産・製造、輸送、利用、廃棄に至る全ての過程において、さまざまな資源やエネルギーを消費します。そのため、商品を選ぶ際は、すべての過程で環境負荷が少ない商品を選択することが大切です。

<取り組みの具体例>
・省エネ性能の高い物を購入する
・リサイクルがしやすい商品を選ぶ

【原則5】化学物質による環境汚染と健康への影響の少ないものを選ぶ

化学物質を避け健康な商品を選ぶことも、環境保全の観点で大事な取り組みです。身近な商品や食品の中には、農薬や食品添加物、薬剤などさまざまな化学物質が使われているものが多く存在します。また、製造や廃棄の過程では、ダイオキシンや環境ホルモンといった有害な化学物質が発生することもあり、人の身体や環境に悪い影響をもたらします。

<取り組みの具体例>
・購入前に、何が使用されているか食品表示をチェックする
・オーガニック製品を選ぶ

【原則6】自然と生物多様性をそこなわないものを選ぶ

人間はこれまで、農地や宅地を開発するために森林を伐採したり、海に大量の汚染水を排出したりしたことで、生態系の崩壊や環境汚染をもたらしました。私たちの生活は、生態系の恵みによって成り立っていることを理解し、自然と生物多様性に配慮した商品を選択することも重要です。適切な管理のもと、環境負荷の軽減に役立つ商品を把握したいときには、認証マークの確認がおすすめです。

<取り組みの具体例>
・FSCマーク(適切な森林管理のもとで採取した木材を使用していることを認証)
・MSCマーク(持続可能で適切に管理されている漁業である認証)の付いた商品を選ぶ

例えば、長野県にある齋藤木材工業株式会社では、FSC認証を受けた集成材を生産しています。丸太のうち、集成材として使えない7割の部分を薪として販売。その薪を使うことで、森林サイクルを後押しし、循環型社会の実現に貢献できるのです。そういった企業の取り組みにも、目を向けてみてはいかがでしょうか。

参考:環境省『環境ラベル等データベース』

【原則7】近くで生産・製造されたものを選ぶ

商品の輸送には多くのエネルギーがかかり、CO2の排出量も多くなるため、国内産や地元で生産・製造された商品を選ぶようにしましょう。野菜や魚は、地場ものであれば、新鮮で栄養も豊富です。地産地消を意識することで、地域の産業を守り、住み続けられるまちづくりにも役立つでしょう。

<取り組みの具体例>
・地産地消や旬産旬消を意識する
・国内産の商品を選ぶ

【原則8】作る人に公正な分配が保証されるものを選ぶ

私たちが、低価格で手に入れられる商品の中には、発展途上国において劣悪な環境や低賃金で酷使された労働者の犠牲によって成り立っているケースもあります。商品を購入する際は、製造過程にも視野を広げ、生産者に対して公正な取引が保証されるもの(フェアトレード商品)を選ぶことも重要です。フェアトレード商品の選択は、生産国の人々の生活を守り、経済的自立を助ける活動につながります。

<取り組みの具体例>
・国際フェアトレード認証ラベルの付いた商品を選ぶ

【原則9】リサイクルされたもの、リサイクルシステムのあるものを選ぶ

商品を選択する際は、リサイクル製品やリサイクルシステムのある商品を優先的に購入することも大切です。リサイクル製品は、需要がなければいずれ生産されなくなってしまうため、購入によってリサイクル商品を求めているという意思表示を示し、資源の再生を促進しましょう。

また、リサイクルの仕組みが整ったメーカーの商品を購入するのもポイントです。「回収BOXが設置ある」など、不要になった自社商品やその容器の回収サービスを提供しているお店で購入することで、循環型社会の構築に貢献できます。

一方で、リサイクルは、必要なものを購入しごみを出さずに使い続けた後の最終手段であると念頭に入れておきましょう。

<取り組みの具体例>
・リサイクルされた原料で作られた商品を選ぶ(グリーンマーク、再生紙使用マークなど)
・不要になった自社製品を回収するなど、リサイクルシステムのある商品を購入する

【原則10】環境問題に熱心に取り組み、環境情報を公開しているメーカーや店を選ぶ

環境に配慮した取り組みを進める上で、環境問題に意欲的に取り組んでいる企業を把握し、消費活動で後押しすることも押さえておきたいポイントです。グリーンコンシューマーとしてあらゆる活動を行っても、企業が環境保全に向けた活動を推進しないと抜本的な解決につながらないのが現状です。

そのため、購入したい商品があった際は、環境対策に向けてどのような取り組みを実施しているかチェックし、購入の判断材料にするのもおすすめです。ほかにも、カーボンフットプリントは環境負荷の見える化として注目されています。これは、企業が自社活動や商品を提供する際、調達から廃棄に至るライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの量をCO2に換算し表示する仕組みです。

<取り組みの具体例>
・企業のホームページを確認し、環境問題に対する取り組みや、環境情報を積極的に公開しているかを確認する
・カーボンフットプリントのある商品を選ぶ

参考:経済産業省『カーボンフットプリント レポート 』

グリーンコンシューマーを理解し、無理なくできることから始めよう

グリーンコンシューマーとは、環境に配慮した消費活動を通して自然や生態系を守ろうとする取り組みを行う消費者を意味します。環境を意識した消費活動は、事業者に向けたアプローチにつながり、結果的にSDGsの目標達成に貢献する活動として注目されています。コンシューマー活動は、すべてを完璧に実現することは目指していません。より良い社会を目指して、無理なくできることから始めてみてはいかがでしょうか。