マテリアルリサイクルとは?意味や種類、具体例や問題点をわかりやすく解説

マテリアルリサイクルとは?意味や種類、具体例や問題点をわかりやすく解説

マテリアルリサイクルとは、廃棄物を新たな製品の原料(マテリアル)として再生利用する方法です。廃棄物について破砕・洗浄・溶解などを行い、ごみになる前の製品原料と同じ物質に再生します。この記事ではマテリアルリサイクルの定義や他のリサイクル方法との違い、マテリアルリサイクルに利用される製品などを解説します。

マテリアルリサイクルとは

マテリアルリサイクル(英語:material recycling)とは、リサイクル方法の一つです。「マテリアル」は「材料」「原料」「素材」「資料」などの意味を持ち、マテリアル(物)からマテリアル(物)へと再利用(リサイクル)することを指します。天然資源から製品原料を製造する場合と比較して、環境への負荷が低減されるケースが多いといわれています。

マテリアルリサイクルとほぼ同義のリサイクル方法に「メカニカルリサイクル」があります。マテリアルリサイクルで取得した再生樹脂に、さらに一定の処理を行い、異物・不純物のない高品質の再生樹脂とするものです。

飲料・食品用のPET樹脂として利用可能で、2011年5月より、大手飲料メーカーのペットボトルとして再生されています。

リサイクル方法は3種類。マテリアルリサイクルとの違いは?

リサイクル方法は、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・サーマルリサイクルの3つに大別されます。

マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・サーマルリサイクルの違い

サーマルリサイクル

サーマルリサイクルは、廃棄物の燃焼で発生するエネルギーを利用する方法です。例えば、ごみ焼却場で発生する熱を、焼却施設の⾃家発電や隣接する温水プールへの熱供給などに利用します。

日本ではリサイクル方法の一つとして定着していますが、燃焼によって発生した熱を回収・利用しているため、厳密にはリサイクル(再利用)ではありません。

国際社会ではリサイクルとして認識されておらず、「循環」ではなく「燃焼処理」をリサイクルとすることに対し欧米から批判もあったことから、政府は現在「サーマルリカバリー」と呼んでいます。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルは、廃棄物をそのまま原材料にするマテリアルリサイクルと異なり、廃棄物に化学的な処理を行い、リサイクル前と別の物質に変えてから、新たな製品の原材料とする方法です。広義のマテリアルリサイクルともいえます。

マテリアルリサイクルは、廃棄物を加工して再利用するため、廃棄物に汚れや異素材が混在していると、再利用できません。一方、ケミカルリサイクルは、廃棄物を化学的に処理して再利用するため、マテリアルリサイクルが難しい廃棄物でもリサイクル可能です。

マテリアルリサイクルは2つに分類される

マテリアルリサイクルは、次の2つに分類されます。どちらも廃棄物を再利用するリサイクル方法ですが、製品品質とリサイクル工程に違いがあります。

水平リサイクル(レベルマテリアルリサイクル)

水平リサイクルは、廃棄物を原料として「リサイクル前と同じ品質の製品」を新たにつくるリサイクル方法です。

例えば、ペットボトルを原料にして再びペットボトルを製造する、アルミ缶を溶かしてアルミ缶やその他のアルミ製品にするなどが挙げられます。汚れや不純物、他の成分を除去できないため、厳密な分別(選別)が必要です。

カスケードリサイクル(ダウンマテリアルリサイクル)

カスケードリサイクル(cascade、階段状に連続する滝)は、「品質レベルを下げた製品」の原料として再生するリサイクル方法です。

同じ製品の原料では品質が満たない場合に、品質劣化に応じて段階的に品質を下げて、リサイクル前とは別の製品の原料として再利用します。例えば、ペットボトルをリサイクルする際、飲料容器が求める品質に満たない場合に、衣服や雑貨などの原料にします。

マテリアルリサイクルに利用される主な製品と再利用の具体例

上から見た缶
image by Osmar do Canto on Unsplash

マテリアルリサイクルは、さまざまな廃棄物が対象となります。主に、次の製品が原料として再利用されます。

プラスチック

プラスチックのマテリアルリサイクルは、洗浄・粉砕・脱水・乾燥を経て再生原料となり、新たなプラスチック製品に生まれ変わります。

代表的なものはペットボトルで、水平リサイクルで再びペットボトルに、ダウンマテリアルリサイクルでは繊維(衣類)として再利用されます。ペットボトル以外にも、食品トレー、卵パック、ラミネート包材、洗剤容器など、さまざま製品にリサイクルされます。

金属・缶

廃棄される家電製品のほか、アルミやスチール缶、ジュエリーの製造工程で発生した端材、建築工事で発生する金属スクラップなど、さまざまな金属がリサイクルされます。携帯電話やパソコンなどの電子機器から希少金属「レアメタル」を取り出して再利用することも、マテリアルリサイクルです。

アルミ缶はリサイクル率が90%以上と高く、原料であるボーキサイト(鉱石)から新地金を製造する場合と比較して、97%のエネルギーを節約できるとされています。

ガラス

ガラス瓶や建築用ガラス、家電の液晶などに使われた廃ガラスが、食器、建築・土木材料、雑貨などのガラス製品に再生されます。

ガラスはさまざまな種類があり、見た目は同じでも、素材によって融点や成分が異なります。また、色が混ざる・汚れがあるなどの場合はリサイクルできないため、分別を徹底することが大切です。

繊維

繊維(古着・古布など)のマテリアルリサイクルは、繊維くずを適切なサイズに加工してウエス(工業用雑巾)にする、フェルトにして車の防音材にするなど、繊維の素材によって再利用されるものが異なります。

繊維製品は、単一素材ではなく混紡繊維である、撥水・吸汗加工がされているなど、一つの衣類にもさまざまな素材が複合的に使われているため、再生が難しいのが現状です。

EU(欧州連合)では、繊維製品の廃棄を抑制する施策として、メーカーに対して衣料品の売れ残りや返品など未使用商品の廃棄を禁じる環境規制を、2025年から施行する予定です。欧州に輸出している日本のメーカーも対象のため、事業者はリサイクル強化やビジネスモデルの変革など、環境保護に向けた対策を検討する必要に迫られています。

古紙

古紙のマテリアルリサイクルは、紙の特徴や品質に応じて、それぞれ異なる紙の原料として再利用されます。

例えば、新聞紙は新聞用紙やコピー用紙に、段ボールは段ボール箱に、飲料容器はトイレットペーパーになります。そのため古紙を廃棄する際は、紙の種類ごとに分別することが重要です。

木くず

木くず(木質廃材)には、建設現場・家具の製造・パルプ製造などで発生するものや、伐採した樹木の生木、貨物のパレットなどがあります。

廃材や端材などを細かなチップにして、畜産用の敷料・木質バイオマスボイラーの燃料・堆肥・パーティクルボード(PB)などに再利用します。また、製紙・パルプ原料としてリサイクル利用することもあります。

その他(複合素材のマテリアルリサイクル)

自動車や家電製品は、単一素材のマテリアルリサイクルと異なり、鉄やアルミニウムなどの金属、プラスチック、ガラスなど、さまざまな原材料が使われています。

製品にもよりますが、さまざまな素材が使われている場合は、手作業で解体した後に機械を使用して破砕・選別が行われます。素材の分離が難しい製品は、ケミカルリサイクルあるいはサーマルリサイクルとなるケースもあります。

マテリアルリサイクルのメリットからみる重要性

マテリアルリサイクルには、次のようなメリットがあります。

●資源の保全:廃棄物を国産資源として活用することで、天然資源の消費を抑制できる
●エネルギーの節約:原材料の採掘や精製、製品の製造に必要なエネルギーを削減できる
●環境負荷の低減:焼却処分によるCO2排出量の削減や、最終処分場の延命につながる

上記のようなメリットを踏まえると、マテリアルリサイクルは、循環型社会の実現に貢献できる重要な施策と考えられるでしょう。

2001年1月6日に全面施行された「循環型社会形成推進基本法」では、廃棄物対策の優先順位を定めており、リユースとリサイクルが、サーマルリサイクルよりも優先となっています。これは、リユース(再使用)・リサイクル(再生利用)を繰り返した後でも、サーマルリサイクル(熱回収)が可能なためです。

環境省は、“原則としてリユース、マテリアルリサイクルがサーマルリサイクルに優先”としており、マテリアルリサイクルの重要性がうかがえます。

出典:環境省『平成17年版循環型社会白書

マテリアルリサイクルから生まれた薪|齋藤木材工業株式会社

長野県にある齋藤木材工業株式会社では、構造用集成材として使用できない端材を、マテリアルリサイクルで「信州産カラマツ薪」にして販売しています。廃棄物として処分せず地域の木材を余すことなく使い、資源を有効活用する取り組みです。

建築資材と同様の人工脱脂乾燥を行っているため、着火が簡単で燃焼時の煙が少なく、虫が出にくいのがポイントです。同社は収益の一部を山林に還元しているため、薪の購入で、放置林の減少や持続的な森林サイクルにも貢献できます。キャンプや薪ストーブなどで薪を使用する際は、使いやすく、環境負荷の低減につながる薪を選んではいかがでしょうか。

マテリアルリサイクルの現状。問題点やデメリットとは?

マテリアルリサイクルは、廃棄物対策や循環型社会の実現に貢献する取り組みですが、日本における廃棄物のリサイクル率は19.9%と、先進国の中では低いのが現状です。

廃棄物のリサイクル率
出典:資源循環・廃棄物研究センター オンラインマガジン『なぜ日本のごみのリサイクル率はヨーロッパに比べて低いのか?』図1

マテリアルリサイクルが進まない理由として、次のような課題が挙げられます。

分別や再利用のための設備が不足している

リサイクル率が低い理由の一つは、対応できるリサイクル工場や設備が不足していることです。廃棄物の種類によっては、排出量の増加に対して処理施設の能力が不足して対応しきれないケースもあり、多くは焼却処分となっているのが現状です。

また、リサイクル処理施設の整備には莫大な費用がかかる、地域住民の同意を得られないなどで、新規建設が難しいという事情もあります。

リサイクルコストがかかる

マテリアルリサイクルが費用対効果に見合わないことも、普及が進まない一因です。マテリアルリサイクルは、廃棄物の収集・分別・洗浄・再加工などのプロセスが必要となります。

それぞれの工程で設備の維持費や人件費や時間が必要なため、資源から新品をつくるよりも、リサイクルの方が高コストになることがあります。

リサイクルされた素材の品質が劣化する

マテリアルリサイクルにおいて、微細な異物の混入を完全に防ぐことは難しく、新品と比較するとリサイクル素材は品質が劣化します。

リサイクルを繰り返すと、古紙は繊維が短くなり品質が低下していくほか、廃プラスチックは分子の劣化が進むため再利用が困難になっていきます。リサイクル前と同等の製品に再生できない場合は、品質劣化に応じてカスケードリサイクルにしか使用できなくなります。

環境負荷の削減を目指しマテリアルリサイクルに取り組もう

マテリアルリサイクルは、資源の有効活用や廃棄物問題、環境問題などに関わる重要な取り組みです。しかし、設備の不足、分別や処理コスト、品質劣化など課題も存在します。これらの課題克服には、技術開発や消費者意識の向上など、さまざまなアプローチが必要です。行政・企業・個人が協力し、循環型社会の形成に向けて、マテリアルリサイクルを推進しましょう。