国産材ってどんな木材?自給率が低い理由と活用のメリット、普及に向けた取り組み

国産材ってどんな木材?自給率が低い理由と活用のメリット、普及に向けた取り組み

国産材とは、日本国内で成長・伐採・加工された木材のこと。環境問題への関心が高まる中、持続可能な資源として、国産材を活用する取り組みも拡大しています。この記事では、国産材と輸入材との比較、国産材を活用するメリット・デメリット、国産材を使用した商品事例、国産材の普及に向けた取り組みをご紹介します。

国産材の自給率と需要・供給

日本における国産材の自給率については、林野庁が1年間の木材需給の状況を「木材需給表」として毎年公表しています。

1950年代は90%を超えていた自給率は低下の一途をたどり2002年は18.8%と最低値を記録。しかし、その後は上昇に転じ年々数値がアップし、2022年の自給率は40.7%でした。

2022年の総需要量は8,509万4千立方メートルあり、内訳としては製材用材や合板用材、パルプ・チップ用材など用材が約80%を占め、ほかは燃料材としいたけ原木がありました。全体の約95%は国内で消費され、残りはわずかながら輸出されています。

供給については、自給率からもわかるように、約60%を輸入に頼っているのが現状です。ただし、しいたけ原木については、国産材の需要量と供給量が釣り合っています。

木材供給量及び木材自給率の推移
出典:林野庁『木材供給量及び木材自給率の推移

参考:林野庁『令和4年(2022年)木材需給表

日本と海外の木材自給率比較

日本は国土の3分の2が森林ですが、木材の自給率は諸外国と比べると低いのが実情です。自給率が高い国々では、木材関連が伝統的な基幹産業・輸出産業として確立されている、林業が主力産業の一つになっているなど、木材産業において活発な動きがみられます。

一方で日本の木材の輸入量・輸出量をみてみると、産業用丸太・製材・合板のそれぞれの輸入量に対して輸出量は少なく、木材自給率が低いことがわかります。その主な理由としては以下が考えられます。

●諸外国の林業・木材産業のような安定した事業基盤がなく、林業の専門教育機関の整備も追いついていない
●安価な外国産木材を輸入してきた年月の間に、国産材の需要・供給が減少し、林業が衰退した

ただし、前述したように、自給率最低は平成14年の18.8%で、この10年間は増加傾向にあります。その主な理由としては以下が考えられます。

●コロナ禍で一戸建て需要が増加したことや、港湾でコンテナが滞留するなど物流の混乱が発生したことなどにより、世界的な木材不足・価格高騰に陥った(ウッドショック)
●ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ロシア産木材を入手できなくなった

また、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けて森林の活用が進められています。それに伴い、政府が国産材利用を推奨していることから、今後も利用が進むことが期待されます。

国産材を活用するメリット

国産材を活用することは、さまざまメリットをもたらします。ここでは、主なメリットを3つ紹介します。

耐久性が高く、長持ちする

木はそれぞれの環境条件に適応し、独自の特性を持って成長します。地域による気候の違いはありますが、日本の風土の中で成長してきた国産材は、日本での使用に適した木材となるのです。

中でもヒノキは耐久性が高く、多くの寺社仏閣など歴史的建造物で用いられています。法隆寺五重塔(奈良県)もヒノキが使われており、現存する世界最古の木造建築として知られています。

住宅の建築材としても優れており、温度や湿度の変化に適応した国産材を使用することで、日本の気候・風土に合った、長く住める家づくりが実現できるでしょう。

森林保護につながる

国産材を使うことは、森林保護につながります。適切な間伐は木の根系(地下部分)の発達を促すため、根をしっかり張ります。ネット状に広がる水平根は隣り合う木々の根が絡み合うことで土砂の崩壊を防ぐ効果があります。

一方、地下に垂直に伸びる垂直根は地中の硬い岩盤に入り込むことで杭のような効果が生まれ、土砂災害予防につながります。

また、伐採することで地表に太陽光が届き、下草や低木が広く育ちます。そうすると昆虫・鳥類・小動物などが共存する健全な森となり、生物多様性の維持・向上にも貢献します。

伐採などの林業はもちろん、木材加工業を通して適切に森林を管理することで、森林保護につながるのです。

参考:林野庁『木材を使うと森が育つ

脱炭素化やSDGsの達成に貢献する

国産材を使用して森林を保護することは、地球温暖化対策にもなります。国産材は、運搬距離が短いため輸送によるCO2排出が抑えられることや、森林にはCO2を吸収し炭素として蓄えながらO2(酸素)を放出する働きもあるため、日本の脱炭素化に貢献します。

また、国産材の利用は、SDGsが掲げる17の目標のほとんどに関連があります。

我が国と森林の循環利用とSDGsとの関係
出典:林野庁『森林×SDGs

特に、森林を循環させ生物の多様性に配慮することは「目標15:陸の豊かさも守ろう」に寄与します。目標15のターゲットの一つとして「持続可能な森林の経営」が掲げられています。

国産材を活用するデメリット

国産材の活用が進まない理由として、次のようなデメリットが挙げられます。

流通量が少なく価格が高い

国産材は、原木の価格が低いため山林所有者が伐採に消極的なことや、林業従事者の不足などにより、流通量が少なく価格が高めです。また、商社が大規模な流通ルートを有する輸入材と異なり、国産材は一般的に森林所有者から材木販売店までの間に中間業者が入ります。各事業者の加工コストや手数料が加算されることも、輸入材と比較して価格が高くなる要因です。

ただし現在は、国産材と輸入材の価格差は減少傾向にあります。ウッドショックが落ち着いて国産材価格がピークを過ぎたことや、円安で輸入材の価格が上昇していることなどが考えられます。

高度な加工技術が必要

平地で育つことの多い輸入材と異なり、日本の木の多くは斜面で育つため曲がりなどの癖が生じやすいのが特徴。1本1本の癖を理解して加工するには高度な技術が必要になるため、ハウスメーカーなどは国産材を敬遠し、加工しやすい輸入材を利用することが多いのです。

木材乾燥のための湿度調節が難しい

切り出した木材を乾燥させる必要があることも、国産材普及の妨げになっています。完成品のひび割れや反りなどを防ぐために乾燥工程は不可欠で、農林水産省の「製材の日本農林規格」によって、製材の含水率(木材に含まれる水分量)は15〜18%以下と定められています。しかし、高温多湿な日本では湿度調整が難しく、梅雨の時季などは特に時間がかかります。

樹種やサイズなどにもよりますが、天然乾燥では半年〜1年以上、人工乾燥でも1週間〜2週間ほど必要です。資材として使えるようになるまでに時間がかかり、必要な木材を全て国産で賄うことは困難なため、ハウスメーカーなどは納期を守るために輸入材に頼らざるを得ないのが現状です。

また、乾燥加工にかかる手間やコストが木材価格の上昇につながっていることも、国産材が活用されにくい要因となっています。

参考:農林水産省『製材の日本農林規格

国産材の普及に向けた取り組み

国産材の普及に向けた、国の主な取り組みを紹介します。

住宅や公共施設での利活用

国や地方自治体は、地域の脱炭素化・地方創生・省エネ基準への対応など、さまざまな理由で国産材の需要拡大に向けた取り組みを進めています。代表的な事例の一つが東京オリンピック・パラリンピック(2021年)での活用で、競技会場や周辺施設などに国産材が多用されました。

また、林野庁は、森林所有者や森林組合・木材加工業者・設計士・工務店などの関係者が一体となり、地域材を活用する「顔の見える木材での家づくり」を推進しています。

公立の学校や地域の公共施設などの建設には、木造化・木質化に活用できる国からの補助金制度があります。地域材を活用して木造施設を整備する場合に、補助単価が加算されるのがメリットです。一般住宅や店舗などでも、地域の脱炭素化や地方創生などを目的に自治体が補助金として支援していることがあるので、地域の補助金制度を調べてみるとよいでしょう。

参考:林野庁『建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧

間伐材の利用促進

2000年5月、国や自治体が環境負荷の低い商品・サービスを購入することを促進するために、「グリーン購入法」(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)が制定されました。同法は、主要材料が木の場合について「間伐材、端材等の再生資源または合法材」を調達基準の一つとしています。

例えば主要材料が木質の文具類では、判断基準が「間伐材、合板・製材工場から発生する端材等の再生資源」とされており、政府が率先して合法性・持続可能性を備えた木質材料の商品利用に努めています。

最近は、地球温暖化や廃棄物の問題に対応するために、国が間伐材を活用した木質バイオマス(薪やウッドチップなど)の利用を推進。未利用間伐材や製材工場から出る端材・樹皮などは、利用されなければ廃棄物になりますが、捨てずに木質バイオマスとして活用することもできます。貴重な国産のエネルギー源として利用できるのと同時に、廃棄物を削減して、循環型社会の実現に寄与できるでしょう。

また、未利用間伐材がエネルギー源として価値を持つことによって、林業の推進や森林整備につながる効果も期待できます。

参考:環境省『環境物品等の調達の推進に関する基本方針

木づかい運動の推進

木づかい運動」とは、2005年度から林野庁が展開している国民活動です。日々の暮らしに国産材の製品を積極的に取り入れることで、日本の森林を育て、地球温暖化防止・林業や木材産業の振興・山村地域の活性化などにつながる効果が期待されています。

10月8日は「十と八」で「木」の日とされていることから、林野庁は毎年10月を「木材利用促進月間(旧:木づかい推進月間)」と法定化しました。自治体や民間団体などが、さまざまイベント・普及活動を行っています。

また、木づかい運動と連動した教育活動に「木育(もくいく)」があります。対象は子どもから大人までと幅広く、木材・木製品との触れ合いを通して、木材に親しみ木の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学んでもらうための取り組みです。

内容は、木育マイスターの育成や木工ワークショップ開催など多種多彩で、全国の自治体やNPO法人など各種団体が独自の取り組みを展開しています。

参考:林野庁『木づかい運動でウッド・チェンジ!

新たな技術開発

国産材の利用を促進するには、従来のような利用方法に加えて、新たな技術開発も重要です。例えば、木材繊維とプラスチック材を融合した新素材の「木質プラスチック(ウッドプラスチック)」は、原料として細い間伐材や建築・製紙の廃材が有効活用され、建築・インテリア・スポーツ用品など幅広く利用されています。

こういった新素材の技術に加え、間伐材の付加価値を高める商品の開発を進めることも、国産材の利用促進につながります。

国産材を使用した商品事例

木の電車
image by Mike Bergmann on Unsplash

ここでは、国産材を使用した商品を紹介します。

【家具】岩泉純木家具

岩泉純木家具有限会社は、地元岩手県産をメインとする、国産材100%のオーダーメイド家具を製造・販売しています。同社の前身は製材所で、丸太の仕入れから完成品の販売まで一貫して自社で行う、稀な家具メーカーです。直営店のほかオンラインでも購入でき、購入後は経年数にかかわらず修理の依頼も可能です。

参考:岩泉純木家具有限会社『森と水の町で家具作り

【おもちゃ】天使のhoッpe

株式会社木遊舎は、国産のヒノキや環境先進国ドイツの製材メーカーが管理植林し生産するブナ材で、子ども用の家具・おもちゃを製造・販売しています。愛媛県産のブランドヒノキ「媛(ひめ)ひのき」を使用したおもちゃシリーズ「天使のhoッpe(てんしのほっぺ)」は、赤ちゃんが舐めても安心な白木仕上げで、面取りも施されているため手触りがよいのが特徴です。

参考:株式会社木遊舎『木遊舎について

【集成材】信州「唐松丸」

長野県にある齋藤木材工業株式会社は、地元産にこだわった造作用集成材などを製造しています。独自ブランドの信州「唐松丸」は、厳選した信州産カラマツを使用した、高い強度と耐久性を備えたハイグレード集成材で、国産樹種で最高ランクの強度等級(E105-F300)を実現しました。

住宅の新築やリフォームを検討している方は、耐久性が優れている国産材を使用してはいかがでしょうか。

参考:齋藤木材工業株式会社『信州「唐松丸」』

同社は製材工程で発生する端材を、薪に加工して販売しています。建築材と同様の人工乾燥を行っているため、含水率10%程度と高乾燥で、着火が容易で煙が出にくい薪となっています。

国産材を活用し、自給率向上を目指そう

政府の「新たな森林・林業基本計画」によると、今後国内における木材の需要は増えると予想され、2030年には総需要量に対し約半数を国産材とする目標値が提示されています。製材用材・合板用材・燃料材は、国産材への転換や利用促進が図られ、その他の用途でも国産材の需要が見込まれており、国産材の利用が進むものと推測されます。

国産材ならではのメリットを考慮し、企業はもちろん個人でも国産材の利用を検討する価値は大いにあります。また、普及活動にも参加するのも一つのアクションです。日本で自給自足が可能な天然資源である国産材を活用して、木材の自給率を向上させましょう。