【最新版】森林火災が起きる原因は?地球温暖化との関係性や日本や海外の被害状況

【最新版】森林火災が起きる原因は?地球温暖化との関係性や日本や海外の被害状況

森林火災とは、森林や山林、原野などで発生する火災のこと。日本も含めて世界各地で発生しており、森林の焼失により多方面に影響が出ています。この記事では、森林火災の概要や原因、森林火災が及ぼす影響、私たちができる対策などを解説します。

森林火災とは

森林火災とは、森林や山林・原野・牧野で発生する火災のこと。林野火災、山林火災、山火事と呼ばれることもあります。市街地での火災と異なり、消防水利の不足や道路状況などの地理的・地形的な条件から、消火活動が困難です。そのため、一度燃え広がれば人力では消火しきることが難しく、焼損面積が広範囲になります。

森林火災は世界各地で発生しており、日本でも大小さまざまな規模の森林火災が発生しています。2023年5月に霧ヶ峰高原(長野県)で発生した大規模な森林火災では、周辺の144世帯に避難指示が発令。自治体などによる消火活動では火災を鎮圧できず、長野県が自衛隊へ災害派遣を要請し、約130トンの放水による空中消火を実施。発生から約23時間後に鎮火しましたが、約170ヘクタールの森林を焼失しました。

参考:総務省消防庁『 令和4年版 消防白書 資料1-1-9 火災の状況
   防衛省『長野県諏訪市における山林火災に係る災害派遣について

森林火災の原因

森林火災の原因としては、主に「自然発火によるもの」「人為的なもの」に分けられます。消防庁の資料によると、2022年の森林火災(林野火災)は1,239件発生しており、そのうち862件(約69.6%)が人為的な要因によります。具体的な原因は次のとおりです。

【最新版】森林火災が起きる原因は?地球温暖化との関係性や日本や海外の被害状況
出典:総務省消防庁『令和6年2月・3月合併号 消防の動き 634・635号p.47
令和4年中の主な出火原因』を基に作成

自然発火によるもの

自然発火による森林火災の主な原因は、落雷や枯れ葉・枝の摩擦熱、火山の噴火などです。自然発火リスクは地域条件に依存しており、高温で乾燥が極度に進んでいる国・地域では、落雷による自然発火が珍しくありません。

一方、日本では自然発火による森林火災は稀です。気温が高くなる夏場は湿度も高いこと、落雷は大雨の時に多いことなどが理由として挙げられます。

また、地球温暖化の進行が、森林火災のリスクを増加させているという環境省の報告もあります。高温化することで、自然鎮火しづらくなるためです。このまま地球温暖化が進めば、各地で森林火災の発生が増えるかもしれません。

参考:環境省『温暖化から日本を守る 適応への挑戦

人為的なもの

日本の森林火災の多くは、人の不注意・危険行為に起因するものです。原因が明らかなものについては、枯れ草を寄せ集めて焼くなどの「焚き火」が最も多く、次いで野焼きのように下草やごみを燃やすなどの「火入れ」となり、全体の約半数を占めます。そのほか、「放火(疑い含む)」「たばこ」も原因となっています(上の円グラフ参照)。

近年はアウトドアブームの影響で、バーベキューで使った炭の不始末、焚き火の消え残り、登山者のガスバーナーが原因になっている事例も。屋外で火を使用する際は、火気に関する制限や器具の使い方、風向きなどをよく調べておきましょう。消火の準備をしておくことや、風が強いときは火を使わないことも重要なポイントです。

森林火災は地球温暖化や生態系に影響を及ぼす

地球温暖化が森林火災を引き起こす要因として挙げられる一方、森林火災が地球温暖化につながる要因にもなっています。

地球温暖化に悪影響を及ぼす理由は、それまで森林が吸収・固定していた炭素が燃焼することで一気に放出され、大気中の温室効果ガスが急増し、地球温暖化が加速されるためです。地球温暖化が進むと気温が上昇して乾燥しやすくなり、乾燥が自然発火の要因となります。森林火災と地球温暖化の悪循環といえるでしょう。

また、森林火災は、生態系にも深刻な影響を及ぼします。動物のすみかが減少して繁殖が難しくなるほか、食物連鎖が崩れるためです。森林が回復していく過程で、それまでと異なる生態系に変わるケースもあります。

さらに影響は植物にも。一般的に植物は火には弱いものですが、中には高熱・煙によって発芽する樹種・植物があります。森林火災をきっかけに発芽することで、これまでの生態系を変えてしまう可能性があるのです。

森林火災が日本や海外にもたらす被害

最新版】森林火災が起きる原因は?地球温暖化との関係性や日本や海外の被害状況
image by Intricate Explorer on Unsplash

森林火災による被害は多岐にわたります。森林の焼失は、生物多様性の喪失や土壌侵食、洪水被害などを引き起こします。さらに、観光業や農業にも打撃を与えます。ここでは、日本と海外において、森林火災がもたらす被害について解説します。

日本における発生・被害状況

日本の森林火災は、長期的に発生件数は減少していますが、現在でも多くの森林火災が発生しています。

2017年~2022年における林野火災の発生状況は、以下のとおりです。

区分/月次2017年2018年2019年2020年2021年2022年
出火件数(件)128413631391123912271239
焼損面積(ha)938606837449789605
損害額(万円)900202269201176344
出典:林野庁『日本では山火事はどの位発生しているの?
総務省消防庁『林野火災を防ごう!~全国山火事予防運動~』を基に作成

直近6年間の平均で見ると、森林火災は1年間に約1,300件発生し、焼損面積は約700ヘクタール、損害額は約3.5億円です。1日あたりに換算すると平均4件発生し、2ヘクタールが焼失、約100万円の損害がある計算です。

日本での森林火災は、例年、2月〜4月に多く発生しています。山菜採りやハイキングなどで入山者が増加することに伴う火の不始末や、空気が乾燥し風が強い時季に火入れ・野焼きが行われるなど、人為的な要因が考えられます。2024年の4月末も各地で森林火災が相次ぎ、自衛隊が出動した地域もありました。

参考:総務省消防庁『令和4年版 消防白書 林野火災の現況と最近の動向

オーストラリア・アメリカで起きた森林火災

オーストラリア・アメリカの一部地域では、「ドライライトニング(dry lightning)」による自然発火が珍しくありません。ドライライトニングとは、極度の乾燥で雲からの雨滴が空中で蒸発・昇華し、雷だけが地上に到する自然現象のこと。雨を伴わず地表は乾燥したままのため、落雷が火事を引き起こします。

また、異常な乾燥は、枯れ葉や枝同士の摩擦熱で発火する可能性を高め、燃え広がりやすいことも、森林火災が頻発する要因です。

いずれの森林火災も、大気中に大量の二酸化炭素が放出されることや、煙・灰に含まれる有害物質によって、深刻な大気汚染を引き起こしています。

オーストラリアの森林火災

オーストラリアはもともと干ばつが多く、森林火災が毎年のように発生しています。中でも、2019年〜2020年に発生した森林火災は、複数の火災が合流して制御不能となった「メガ火災(mega fire)」で、17万平方km(北海道の約2倍)の森林・原野が焼失。全体で3,000棟以上の建物が被害を受けたほか、首都キャンベラでは火災の煙による大気汚染の影響で政府の施設や美術館などが一時閉鎖。煙は隣国ニュージーランドにまで及ぶ事態となりました。

この火災は生態系にも甚大な影響を及ぼしており、約30億匹の動物が死んだり住む場所を失ったりしたといわれています。オーストラリアを象徴するコアラは、総数の3分の1が死亡し、生き残った個体も生息域が減少したことから、絶滅の危機が増大しました。

アメリカの森林火災

アメリカの西海岸も、森林火災が頻発する地域です。カリフォルニア州では、2021年7月に「ディキシー・ファイア(Dixie Fire)」と呼ばれる大規模火災が発生し、鎮火まで3カ月を要しました。焼失面積は東京都の約2倍で、1,000軒以上の住宅が焼失。アメリカ史上で最も消火費用がかかった火災となりました。この火災は送電線の火花が原因とみられ、電力会社が管理責任を問われる訴訟に発展しています。

ハワイのマウイ島で2023年8月に発生した森林火災でも、甚大な被害が発生しました。ハリケーンの強風によって火災が拡大したことで、2,200棟以上の建物が損壊し、死者は97人(同年9月時点)にのぼっています。主要産業である観光業に大きな打撃となったほか、家を失った住民が他の島へ移住して人口減少にもつながりました。

森林火災を防ぐために私たちができる対策

日本で発生する森林火災の多くは、焚き火やたばこの不始末のような、人為的な要因によるものです。つまり防げる火災が多く、一人ひとりが対策を取ることが重要です。

森林火災を防ぐために、次のようなことに注意しましょう。

●枯れ草などがある火災が起こりやすい場所では、焚き火をしない
●焚き火など、火気の使用中はその場を離れず、使用後は完全に消火する
●強風や乾燥しているときには、焚き火や火入れをしない
●火入れを行う際は、必ず許可を取り、あらかじめ防火措置を講じておく
●たばこは、指定された場所で喫煙し、吸いがらは必ず消すとともに、投げ捨てない
●火遊びはしない・させない

参考:林野庁『山火事予防に当たって注意することは?

ハイキングやキャンプ中、また登山でのたばこや直火による焚き火などは、非常に危険です。また、自然公園の特別保護地区など場所によっては、自治体の条例などでそもそも火入れ・焚き火が禁止されている場所もあるので、火気の使用に制限がないか事前によく調べておきましょう。火を使った後は、灰や炭を適切な方法で処理することも大切です。

原因をしっかり理解し、森林火災を未然に防ごう

山で発生することが多く、山間部のような森林の近くに住んでいないと他人事のように感じがちな森林火災ですが、日本だけでなく世界各地で発生しており、発火する要因もさまざまです。

森林火災によって木々が失われることで、二酸化炭素や有害物質の大量放出・生態系の破壊・地球温暖化の加速など、さまざまな悪影響があります。私たちの生活はもちろん持続可能な未来を守るためにも、森林火災の原因を理解して、火災を未然に防ぎましょう。