間伐材の使い道。利用方法や活用事例、SDGsとの関連性を解説

間伐材の使い道。利用方法や活用事例、SDGsとの関連性を解説

間伐材とは、間伐の際に切り出された木材のこと。建築用材や集成材などに使われるほか、身近な生活用品やおもちゃなどに活用されています。しかし、間伐を行っても木材として利用されるケースは少なく、森林に放置されている木材が多いのも現状です。

今回の記事では、間伐材や間伐についての詳細とあわせて、間伐材の使い道、間伐材を有効利用するための取り組みなどをご紹介します。

間伐材とは

間伐材とは、過密となった森林の密度を調整するため、伐採したときに切られた木材のことです。間伐の方法には大きく分けて、「定性間伐」「定量間伐」の2種類があります。

定性間伐とは、樹木の形状や品質を考慮して伐採する方法です。定性間伐はさらに、成長が芳しくない樹木(劣勢木)を切り取る「下層間伐」と、価値のある樹木(優勢木)を切り取る「上層間伐」の2つに分かれます。

一方の定量間伐とは、樹木の品質にかかわらず直線的に伐採する方法です。「列状間伐」では植栽例や斜面方向などに沿って伐採するため、一定間隔ごとの列を機械的に伐採します。そのため、伐採された列と残された列が等間隔で交互に配置されます。

このように間伐方法によって対象となる樹木が異なることから、伐採された木は質や形状も変わるのが特徴です。

出典:林野庁「間伐とは?」

間伐の重要性

間伐を行わずにいると、森林への日差しが遮られてしまうため、背の低い植物や地面に生える植物である下層植生が育たなくなってしまいます。下層植生が消失すると土壌が流れやすくなったり、雨水を吸収して川の水へと還元する“かん養機能”が低下してしまったりと、森林の環境が崩れます。すると木もやがて朽ち、森林の多面的機能が衰弱してしまうでしょう。

しかし間伐を行うと、光が差し込むことによって下層植生が生い茂り、残存木の成長や根の発達も促されます。これによって表土の流出や風雪害を防ぐことにつながり、災害に強い森林となるでしょう。また、多様な動植物の生息・生育できる環境となるほか、病虫害に対する抵抗力の向上にも期待できます。こうした健全な森林を保つためには、適切な間伐が重要です。

間伐材の利用における課題

成熟する前に伐採された木の間伐材は、無垢材として活用できるケースは少なく、いまだ流通量が少ないことが課題となっています。その他の間伐材は林地残材(木を伐採した際に、林地に放置される材)として林内に残されたままとなっています。

2019年における、間伐材や林地残材の発生量に対する利用量の割合(利用率)は、約29%と3割未満でした。間伐された木材に対し、利用されている量が少ないことがわかります。

これを受け国では、さらなる利用率の向上に向け、熱利用を含めたエネルギー利用やバイオマスを高付加価値の物質へと変換する技術の開発を進め、2030年には約33%以上が利用されることを目指しています。

参考:農林水産省『バイオマス活用推進基本計画(第3次)

間伐材の具体的な使い道

間伐材にはどのような使い道があるのか、具体例を紹介します。

建築用材・集成材

間伐材の中でも良質なものは、「建築用材」として利用されます。木造住宅を建てる際に欠かせない柱や梁、土台から断熱材、防音材、床材、内装材まで使い道はさまざま。無垢材として使用できない場合は、複数の板を合成した「集成材」として同様の使い方が可能です。

政府では地球環境保全や地場産業の活性化、教育的効果の向上を目的に、学校の木造化や内装木質化を推進しています。これを背景に、新増築や改築を行う学校では屋根構造や床板などに間伐材を利用している校舎もあります。

参考:文部科学省「木材を利用した学校づくり」

家具製品

間伐材からなる無垢材や集成材を利用した家具製品もあります。例えば、日常で使うイスや机、棚などです。木が持つ本来の質感や色味を活かした塗装・加工を施したり、木の形をそのまま生かしたりと、昨今ではさまざまな間伐材を使った家具ブランドが誕生しています。

ほかにも、収納棚の棚板やシステムキッチンの扉、カラーボックスなどにも使われることがあります。

生活用品

間伐材は身近な生活用品にも利用されており、ドリンクカップや名刺・はがき・封筒といった紙製品などがあります。

また、割り箸や造園資材などにも加工されています。木そのものの材質を生かした生活用品だけでなく、間伐材や端材などの木材を細かくして形成した資材はスピーカーのキャビネットに使われるなど、加工方法によってもさまざまな使い道があります。

遊具・おもちゃ

間伐材は遊具やおもちゃにも活用されています。例えば、保育園や幼稚園、公園、所業施設などで、丸太や板を使ったアスレチック、大型遊具、ブランコ、鉄棒といった遊具です。最近ではふるさと納税の返礼品として、間伐材を使用した遊具を扱う自治体もあります。

さらに、積み木やこま、乳児向けのおもちゃなどの使い道は、小さな間伐材の有効活用にも。木でできたおもちゃは手触りや香りといった木が持つあたたかみも楽しめるため、プレゼントとしても人気です。

木質バイオマスエネルギー

木質バイオマスとは、木材からなる再生可能な資源のこと。木質バイオマスの原料は住宅の解体材や製材工場での廃材などさまざまありますが、搬出されずに未利用のまま森林に残された間伐材や枝、葉も利用されます。

間伐材をペレットや薪、炭、木材チップといった木質のバイオマス燃料に加工して燃やすと、エネルギーが発生。このエネルギーは暖房や給湯などに充てることが可能です。木質バイオマスは二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制するほか、エネルギー資源の有効活用や廃棄物の削減などにも効果的なため、現在注目されている活用方法です。

実際に、長野県にある齋藤木材工業株式会社では、集成材を生産する際に発生する端材を「信州産カラマツ薪」に加工して販売しています。集成材の使用が難しい部分を、木質バイオマスとして利用することで、廃棄物の量を抑制。持続的な長野県の森林循環を維持していくため、薪として付加価値を見出し、収益を長野県の山へと還元しています。

間伐材の利用はSDGsにつながる

間伐材の利用は、SDGsの目標達成にもつながります。森林・林業・木材産業では、「植える」「育てる」「収穫する」「使う」のサイクルを循環させることで、SDGsの17目標のうち「15.陸の豊かさも守ろう」を中心に取り組んでいます。このサイクルを循環させるためには、間伐を行い間伐材を活用することも重要な過程です。また林業・木材産業の活性化にもつながるため、積極的に進めていくことが期待されます。

こうした取り組みを推進するべく、国森林組合連合会では間伐や間伐材利用の重要性などを伝え、間伐材を用いた製品だと示す印として「間伐材マーク」を使用しています。

例えば、「セブン-イレブン」のホットドリンク用カップ。外側部に間伐材配合の紙材を利用しています。このように、マークをきっかけとして間伐への興味を持ち、選んで商品を買うのも一つのアクションです。

間伐材を有効利用するための取り組み

現在、高齢級の森林が増加しており、人工林の多くが資源として利用できる時期を迎えているといわれています。そのため、間伐を効率的に進め、間伐材を積極的に利用していくことが重要です。

日本の森林所有者は国や自治体、企業、個人と非常に細かく分散されており、所有形態ごとに森林整備を行うのは効率的ではなく、コストの増大化も課題となっています。

これを受け林野庁では、「所有形態を問わず基幹となる路網が開設すること」や「高性能の林業機械を導入すること」への取り組みを開始しました。これにより同時期に広範囲の作業が可能となるため、施業の効率化や低コスト化が期待できます。

また、先述したように木質バイオマスはエネルギーとして利用できるほか、原材料として「マテリアル利用」する方法もあります。現在は家畜の堆肥や建築用材などの材料として活用されていますが、プラスチック材料の代替や繊維状の物質として木質系の新素材に変化させて利用する技術開発も進められています。

今は使い道の少ない木質資源ですが、付加価値の高い製品へと変化させることで、新たな需要の創出にもつながるでしょう。

間伐材の使い道を知り、環境保全活動に貢献しよう

森林保全のため伐採された樹木から切り出される間伐材。その伐採や処分には費用を要するため活用が難しく、森林に放置されることが多いのが現状です。昨今は建築用材や生活用品、木質バイオマスなどさまざまな使い道があるものの、いまだ間伐材自体の流通量は多くありません。

そこで、間伐材の有効利用はSDGsの達成にもつながるとして、国や自治体、企業が主導となってさまざまな取り組みを始めています。個人としても「間伐材マーク」が付いている商品を選ぶなど、買い物の際に意識してみてはいかがでしょうか。間伐材の使い道を知って、森林保全活動に貢献していきましょう。