SDGsウォッシュとは?原因と企業の事例、リスクを回避するための方法

SDGsウォッシュとは?原因と企業の事例、リスクを回避するための方法

SDGsウォッシュとは、企業のSDGsへの取り組み目標と実態に乖離があることを意味します。「SDGsウォッシュはどんなことが原因で起きてしまうのか」「SDGsウォッシュを回避するためにできる対策が知りたい」という方もいるのではないでしょうか。今回は、SDGsウォッシュの意味やSDGsウォッシュが起きる原因、対策などについてご紹介します。

SDGsウォッシュの意味

SDGsウォッシュとは、企業が公表しているSDGsへの取り組みと実態に乖離があることを揶揄する言葉です。国連が定めた持続可能な開発目標である「SDGs」と、英語で「ごまかす」「うわべを取り繕う」ことを意味する「whitewash」を組み合わせた造語で、近年では世界的な問題として注目を浴びています。

グリーンウォッシュとの違い

SDGsウォッシュと似た用語として、グリーンウォッシュという言葉があります。グリーンウォッシュとは、表向きでは“環境に配慮している”と見せかけている企業を批判する意味で使われます。1980年代に欧米で生まれた言葉で、英語で環境に優しいという意味を持つ「green」と「whitewash」を掛け合わせた造語です。

SDGsウォッシュは、グリーンウォッシュから派生した言葉で、どちらも掲げている目標と実態が伴っていない企業を批判する意味合いで使われます。

グリーンウォッシュは「環境」への取り組みに対して指す言葉ですが、SDGsウォッシュは、環境のほかに「教育」や「平和」、「貧困」など17の目標すべての取り組みを含みます。

SDGsウォッシュが起きる原因

そもそも、なぜSDGsウォッシュはなぜ起きるのでしょうか。ここでは、SDGsウォッシュが起きる原因について解説します。

広報の内容に問題がある

自社の広告に誇張された表現を使ったり、誤解を招くような表記をしたりすることはSDGsウォッシュの原因になります。誇大広告や曖昧な表現は顧客に誤解を与えてしまい、SDGsの取り組みをごまかしていると見られるリスクが高まるでしょう。これを回避するためには、事実に沿った正確な情報や明確な表現をすることが大切です。

取り組みが追いついていない

SDGsの目標を掲げたものの実際の取り組みが追いついていないケースもSDGsウォッシュを引き起こす原因の一つです。

SDGsが注目を集めているからなどの理由で、SDGsについて正しく理解しないまま目標を決めてしまう企業があります。目標が自社の規模や事業内容に見合っていないと、費用や人材の確保が難しくなり取り組みが追いつかないという事態を招くことになるかもしれません。SDGsウォッシュを引き起こさないためには、自社とSDGsの関連性をしっかり見つめ、長期的に取り組むことが重要です。

SDGsウォッシュによる問題点やリスク

続いて、SDGsウォッシュの影響によって起きる問題点やリスクについて解説します。

炎上などの影響により顧客が離れる

SDGsウォッシュによって顧客離れが進む可能性があります。企業がSDGsの取り組みを掲げアピールをしても、実態と乖離していれば顧客からは真摯さに欠けているという印象を持たれるでしょう。それがSNSなどの炎上につながり、企業のイメージダウンを引き起こす恐れがあります。

株主や投資家からの信頼を失う

SDGsウォッシュは、株主や投資家からの信頼を失うことにもつながります。株主や投資家の多くは、社会的責任や社会貢献に対する意識が高く、SDGsなどの取り組みを重要視する傾向があります。株主や投資家からの信頼を失うことは、経営に多大な影響を及ぼすことを意識する必要があるでしょう。

組織全体のモチベーションが下がる

SDGsウォッシュによって顧客離れや株主などからの信頼低下が進むと、組織全体のモチベーションが下がるかもしれません。組織に勤める従業員の中には、自社に対する愛着をもって働いている人もいます。SDGsウォッシュによって自社の批判が強まれば、徐々に愛着が薄れていき、仕事のモチベーションも下がっていくでしょう。それにより離職へとつながる恐れがあります。SDGsウォッシュは企業の外だけではなく、内部にも大きな影響をもたらすリスクがあるのです。

SDGsウォッシュを指摘された企業の具体例

過去にSDGsウォッシュを指摘された企業一覧の中には、日本でよく知られた企業も含まれています。実際に、どのような取り組みについて指摘されたのでしょうか。ここでは、SDGsウォッシュを指摘された事例について詳しく見ていきましょう。

ユニクロ

ファストファッションのトップを走り、世界中に店舗を構えているユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)。2020年に中国のウイグル自治区に建つ工場で強制労働をさせていると指摘されました。このウイグル地区は、もともと大手メーカーの下請け工場となっていることが多く、日本企業の12社がこの地区の工場を下請けとして使っていたのです。その中にユニクロも含まれていたため、強制労働を強いているのではないかと疑いの目を向けられました。

服の生産における人権や労働環境の配慮を謳っているユニクロが、強制労働の事実について明言を避けたことで、SDGsへの取り組み目標と実態のズレを印象づけてしまったのです。

マクドナルド

マクドナルドは、世界中で多くの店舗を保有するファストフード業界の大手企業です。2018年に、イギリスとアイルランドで展開する店舗でプラスチック製ストローの使用をやめ、紙製ストローに切り替えました。当初は、「紙ストローは100%リサイクル可能」と発表していましたが、実際はリサイクルせずに破棄していることが発覚。その行為がSDGsウォッシュであると批判されました。

みずほ銀行

日本の金融業界を牽引する企業の一社であるみずほ銀行。2019年に環境方針としてCO2削減を掲げたにも関わらず、石炭産業への融資額が世界トップであることが判明し、SDGsウォッシュの指摘を受けました。

石炭は火力発電の燃料として使用されています。火力発電から電気を作り出すために石炭を燃やす際には、多くの二酸化炭素が排出されます。CO2削減を掲げながら、排出に加担している実態がみずほ銀行の環境方針とかけ離れており、批判の対象となりました。その後、みずほ銀行は「石炭火力発電所の新規建設における投融資等は行わない」と表明しています。

企業がSDGsウォッシュを起こさないための対策

SDGsウォッシュを疑われた企業は大きな損害を被る可能性があります。どのようにすればSDGsウォッシュを避けられるのでしょうか。ここでは、企業がSDGsウォッシュを起こさないための対策について解説します。

SDGコンパスを活用して取り組む

まず、SDGsウォッシュを回避するための対策として、「SDGコンパスを活用してSDGsに取り組むことが挙げられます。

SDGコンパスとはSDGsの企業行動指針のことで、SDGsの重要性やSDGsの導入から管理までの手順が細かく記載されています。

近年では、企業にSDGsへの取り組みが求められていますが、事業と関連付ける難しさを感じている経営層もいるようです。SDGコンパスを参考にすれば、自社の企業戦略に合ったSDGsへの取り組みを見つけることができるでしょう。

SDGコンパスは、以下のように5つのステップに分けて解説しています。

1.SDGsの理解
2.優先課題の決定
3.目標設定
4.SDGsを経営に統合
5.報告とコミュニケーションの実行

資料は、Webで無料ダウンロードすることが可能です。SDGsへの取り組みを検討する際に、活用してみいてはいかがでしょうか。

参考:GRI・UNGC・WBCSD『SDG Compass SDGsの企業行動指針

SDGsコミュニケーションガイドを参考に発信する

SDGsへの取り組みを発信する場合には、SDGsコミュニケーションガイドを参考にするとよいでしょう。

SDGsコミュニケーションガイドは、日本企業の株式会社電通が企業の経営層や広告担当者向けに作成したSDGsのガイドラインです。SDGsの企業広告やプロモーションに必要なポイントを解説しています。

<SDGsコミュニケーションガイドの内容>
●SDGsがもたらすメリット
●SDGsに取り組む際の留意点
●SDGsの取り組みを伝える方法
●広告企画立案時に確認しておく事項
●SDGsウォッシュを回避するためのチェックポイント

SDGsに取り組もうと考えている企業は、プロモーションを行う際にこのガイドを活用することをおすすめします。この資料を基に広告を作ることで、誇大なアピールを避けることができるでしょう。

参考:株式会社電通『SDGsコミュニケーションガイド

SDGsウォッシュを避けるために私たちができること

image by Andrzej Gdula on Unsplash

SDGsウォッシュは企業によって引き起こされるため、個人が気づかないうちにSDGsウォッシュの取り組みに加担してしまうこともあります。そのため、私たちはSDGsウォッシュを見極める力を身につけることが大切です。ここでは、SDGsウォッシュを回避するために私たちができることについてご紹介します。

根拠がない・曖昧な主張に注意する

効果の根拠が示されていない場合や、具体的な数値が記載されていない曖昧な主張には注意が必要です。例えば、以下のような事例が挙げられます。

●「環境に配慮した原材料を使用」と記載されているけれど、根拠の表記がない
●「リサイクル素材配合」の中に具体的な数値が示されていない

「環境に配慮した原材料を使用」とだけ書かれている場合、どの成分が環境によいもので、どのような効果が生まれるのかがわかりません。また、「リサイクル素材配合」と記載されていても具体的な数値がない場合は、リサイクル素材の配合比率はわずかしかない可能性もあります。こういった曖昧な表現になっているものは避け、明確な根拠を示しているものを選びましょう。

SDGsの目標を参考に幅広い視点でものごとを考える

企業が公表しているSDGsの目標について多角的な視点で捉えることも私たちができる一つの行動でしょう。

例えば、使わなくなった服を寄付した場合、リサイクルされることのみを想像する方もいるかもしれません。しかし、実際にその服はリサイクルされた後、最終的にはどこに行き着き、どう処分されるのかなどを考えることも大切です。

具体的な商品例として、SDGsに取り組んでいる長野県の齋藤木材工業株式会社の「信州産カラマツ薪」が挙げられます。同社では、丸太を最大限活用するため、集成材として使うことができない7割部分の端材を薪として販売しています。消費者がこの薪を使うことで、木の有効活用だけではなく、「木を伐り、使い、植え、育て、また使う」という持続的な森の循環への貢献につながります。

このように、SDGsの理解を私たち自身が深め、「この行動がどんな貢献になるのだろう」と幅広い視点で考えることも一つのアクションです。そうすることで、SDGsウォッシュを回避することにつながるでしょう。

SDGsウォッシュのリスク回避には企業も個人も正しい理解が必要

企業がSDGsウォッシュを回避するためには、SDGコンパスやSDGsコミュニケーションガイドを活用しながらSDGsを正しく理解し、実現可能な目標をもって長期的に取り組む必要があります。また、私たち一人ひとりもSDGsへの理解を深めることが大切です。SDGsウォッシュを起こさないために、日々の生活の中で幅広い視点を持って行動していきましょう。