SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の概要と、私たちにできることとは

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の概要と、私たちにできることとは

「つくる責任 つかう責任」とは、SDGsに掲げられた目標の一つです。目標の達成に向け、私たちにできることはあるのか知りたい方もいるでしょう。今回は、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の概要と、「つくる責任」に向けた日本企業の取り組み事例、「つかう責任」に対する個人ができる行動について解説します。

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは、限りある地球の資源やエネルギーを守り、大切に使うことを示した目標です。まずは、SDGs目標12の具体的な内容を見ていきましょう。

SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goal(持続可能な開発目標)」の略称であり、持続可能なよりよい世界を目指すことを目的に、2015年9月の国連サミットにおいて採択された国際目標です。

目標の内容は、貧困・飢餓・健康・教育・エネルギー・経済・環境など世界全体で取り組むべき17のテーマに対して設定。「誰一人取り残さない」というスローガンのもと、2030年を達成年限とし、「17のゴール」とそれを実現するための「169のターゲット」から構成されています。

SDGs12の内容

国際連合が掲げるSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の内容は、限りある地球の資源を守り、持続可能な生産と消費のバランスを形成することを目的に掲げられた目標です。

具体的に「つくる責任」として生産者側に求められていることは以下の内容です。

・高品質な資源の開発
・生産過程での廃棄物の抑制
・化学物質などの放出量の低減
・消費者に対するリユースやリサイクルの呼びかけ

一方の、「つかう責任」として消費者側に求められていることには以下が挙げられます。

・無駄遣いの減少
・リユースやリサイクルの活用
・生産者から提供された資源を最大限に有効活用

ほかにも、行政機関や自治体、メディアなど、すべての人々による持続可能な消費や生産の形態の実現を目指しています。

SDGs12のターゲット

SDGs12「つくる責任 つかう責任」に対しては、ゴールを達成するために必要な具体的なアクションとして以下の「11のターゲット」が掲げられています。

ターゲット
12.1開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
12.22030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.32030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
12.42020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.52030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.82030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。

引用:農林水産省『SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット』

SDGs12「つくる責任 つかう責任」は、先進国や発展途上国などの国々や大企業・多国籍企業など、それぞれの立場ごとに行動指針を示し、取り組む内容を明確にしています。

そして、これら11項目の具体的な取り組みをそれぞれの立場で実施することで、地球環境と世界中の人々の暮らしを守り、持続可能な生産と消費の維持に役立つと考えられているのです。

目標12が掲げられた理由は?「生産と消費」の現状

目標12が掲げられた理由は、これまでの経済活動において、大量生産・大量消費・大量廃棄をしてきたことが大きく関係しています。実際に、「エコロジカル・フットプリント」と呼ばれる、人間が生活する上で地球環境に与える負荷を地球の面積に置き換えて表す指標で考えたとき、現在と同じライフスタイルを世界中の人が維持しようとすると「地球が約1.75個分が必要である」と予想されています。このことから、私たちの生活がいかに地球に負担をかけているかが実感できるでしょう。

現在、世界中で特に深刻化しているのが「食品ロス」と「エネルギー消費」の問題です。ここからは、2つの課題において生産と消費における具体的な現状をご紹介します。

食品ロス

食品ロスとは、まだ食べられる食材であるにも関わらず捨てられてしまう食品のこと。日本では、年間523万tの食材が捨てられており、国民1人あたりに換算すると、毎日おにぎり1個分の食品を捨てている計算となります。

食品ロスの発生は、生産や廃棄に無駄なエネルギーを消費するだけでなく、CO2の排出量も増加させます。また、発展途上国と先進国の格差を大きくするなど、食品ロスは多角面において問題を深刻化させる要因として考えられています。

参考:農林水産省『食品ロスって何が問題なの?』

エネルギー消費

生活に欠かせない電力を生み出すために、石炭や石油、天然ガスなどの多くの天然資源を消費しています。しかし、世界の人々が現在の生活のまま消費を続けた場合、エネルギー資源の埋蔵量によって維持できる期間は、石油は54年、天然ガスは49年、石炭は139年分しかないという試算が出ています。

エネルギー資源の枯渇は、生活に直結する深刻な問題です。さらに、今後は世界の人口が増加すると予想されており、天然資源の需要と供給のバランスが大きく崩れることが指摘されています。

参考:日本原子力文化財団『世界のエネルギー資源確認埋蔵量』

「つくる責任」に対する日本企業の取り組み事例

ここからは、SDGs12の目標を達成するため「つくる責任」において、日本企業がどのような取り組みを実施しているのかご紹介します。

株式会社セブン&アイHLDGS

セブン-イレブン・ジャパンなどを傘下に持つ株式会社セブン&アイHLDGSでは、環境負荷の低減を推進し、豊かな地球環境を未来世代につなぐため、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を掲げています。「CO2排出量削減」「プラスチック対策」「食品ロス」「持続可能な調達」の4分野において、具体的な目標数値を表示。太陽光発電所からの電力調達、環境配慮型素材の活用など、さまざまな取り組みを行い環境負荷の軽減に貢献しています。

参考:株式会社セブン&アイHLDGS『「GREEN CHALLENGE 2050」について』

カゴメ株式会社

食品や調味料などの大手総合メーカーであるカゴメ株式会社では、持続可能な地球環境の維持に向け、あらゆる取り組みを実施しています。その中で、原料調達から製品流通における食品ロスの削減に向け、賞味期限の表示を「年月日」から「年月」表示に変更しました。他にも、生産余剰物の再資源化のために工場敷地内にリサイクルセンター設置、有害廃棄物の徹底的な管理などに努めています。

参考:カゴメ株式会社『Sustainabilityサステナビリティ』

株式会社良品計画

無印良品ブランドの製造小売業を営む株式会社良品生活では、自社の商品やサービス、活動を通じて、資源循環型の持続可能な社会に向けた活動を実施。無印良品の店舗では、衣類だけでなく、プラスチック収納やプラスチックボトル、紙製ハンガーなど家庭で不要になったあらゆる自社商品を回収。再商品化し、リサイクル・リユース活動に積極的に取り組んでいます。

参考:株式会社良品計画『無印良品のリサイクル・リユース』

「つかう責任」に対して私たちにできること

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の概要と、私たちにできることとは
image by Towfiqu barbhuiya on Unsplash

SDGs12の目標達成に向け、「つかう責任」に対して私たち消費者にできる取り組みはさまざまあります。普段の生活の中から実践できることをご紹介しますので、日々の暮らしを見直すきっかけとして参考にしてください。

食品ロスの削減を意識する

日本の食品ロスの約半分は、家庭内から発生するといわれています。食品ロスの削減は、食生活の意識を変えることで実現できるでしょう。具体的な活動や行動は以下の通りです。

・食材を買いすぎない
・料理は食べきれる分だけ作ったり注文したりする
・余り食材を活用して食べ残しを出さない
・賞味期限や消費期限が近い物を購入する
・地産地消や旬産旬消を意識する

まずは、自宅の冷蔵庫や食品ストックの確認から始めてみると、賞味期限が近い食材や余らせていた食材を見つけることができるかもしれません。自宅にある食材を有効活用し、使い切ってから購入するのも、食品ロス対策の一つです。また、地産地消や旬産旬消を意識することで、生産・輸送・保存にかかるエネルギー削減にもつながるでしょう。

他にも、最近では賞味期限の近い食品や野菜の傷・不揃いな形などを理由に、アウトレット食材を提供するサービスも登場しています。食品ロス対策に貢献しながら、手頃な価格で食材を手に入れられるので、利用してみてはいかがでしょうか。

参考:農林水産省『食品ロスとは』

5R活動に取り組む

5R活動とは、Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Repair(リペア)・Refuse(リフューズ)・Recycle(リサイクル)の5つの単語の頭文字で構成された、ごみを減らすためにできる5つの行動を示したもの。5R活動を意識して取り組むことで、無駄なごみを減らし、循環型社会に向けて資源を活かすことにつながるでしょう。

・Reduce(リデュース)ごみを発生させない
・Reuse(リユース)使い捨てせず繰り返し使う
・Repair(リペア)修理・修繕して使う
・Refuse(リフューズ)ごみとなる物を事前に断る
・Recycle(リサイクル)資源として再利用する

5R活動に向けて、まずは自分の持ち物を一度整理してみるのがおすすめです。ごみを出さないために、マイバックやマイボトルのように「繰り返し使える物に変更できないか」「捨てる前に修理して使える物はないか」など、一度立ち止まって考えてみてもよいでしょう。

商品を選ぶときに必要な物だけ購入することは、消費者としての責任であり、大量生産の抑制につながります。使用頻度の少ない物は、レンタルや中古品の購入を検討してみるのもよいかもしれません。

認証マークのある商品を購入・利用する

何か物を購入するときは、「認証マーク」のある商品を意識的に選択するのも環境へ配慮した取り組みとしておすすめです。認証マークとは、環境ラベルとも呼ばれ、環境負荷の軽減にどのように役立つのかを教えてくれる目印のこと。製品のパッケージや包装などに付いています。

例えば、資源や環境へ配慮する取り組みを示すマークとして「FSC認証」や「MSC認証」があります。FSC認証は、適切な森林管理のもとで採取した木材を使用していることを認証したマーク。MSC認証は、持続可能で適切に管理されている漁業である認証を指します。

私たち一人ひとりが「つかう責任」を果たすためには、消費活動から見直すことが大切です。認証マークのある商品を意識的に選択することで、環境問題に積極的に取り組む企業を後押しし、SDGsの達成にも貢献できるでしょう。

認証マークはさまざまな種類があるため、日頃使っている商品に付いていないか確認し、どのような役割があるのか着目してみてはいかがでしょうか。

参考:環境省『環境ラベル等データベース』

個人では「つかう責任」を意識して、私たちにできることから始めよう

SDGs12「つくる責任 つかう責任」は、持続可能な生産と消費の実現を目的に掲げられた目標です。日本は、気軽に欲しい物が手に入る便利な国ですが、その一方で、大きな環境負荷のもとに成り立っていることを理解することも大切です。「つかう責任」に対して、私たちにできることは多くあります。まずは、日常の消費活動や食生活から見直し、できることから始めてみてはいかがでしょうか。