クリーンウッド法をわかりやすく解説!目的や概要、2025年の法改正について
クリーンウッド法とは、合法伐採木材の流通・利用促進に関する法律で、2017年に施行されました。2025年には法改正が予定されており、法律の概要や改正点などについて知りたい方も多いでしょう。今回は、クリーンウッド法の目的や概要、2025年の法改正内容などを解説します。
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クリーンウッド法とは
クリーンウッド法(正式名称:合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)とは、日本や原産国の法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材およびそれを用いた製品の流通・利用促進を目的とした法律です。2017年5月20日に施行され、2025年に法改正が予定されています。
クリーンウッド法では、「対象となる木材等の定義」「木材関連事業者の範囲」「登録制度」といった基本的な事項を規定。あわせて、合法伐採木材等の利用促進に向け、木材関連事業者や国が取り組むべき措置などについても定めています。
しかし、木材関連事業者の取り組むべき措置は努力義務にとどまっているのが現状です。
クリーンウッド法の目的
クリーンウッド法は、自然環境の保全に配慮した木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、地域および地球の環境保全につなげることを目的としています。また、世界中で問題となっている違法伐採をなくすことも、クリーンウッド法の目的の一つです。
施行の背景
施行の背景としては、以下の3つが挙げられます。
●違法伐採によって、木材生産地の環境破壊や地球温暖化の進行、不公正な貿易、ゲリラやテロ組織への資金供給といった悪影響が引き起こされるリスクがある ●違法伐採対策や合法伐採木材の流通・利用促進により、SDGsの実現を図っていく必要がある ●「グリーン購入法」や「合法木材ガイドライン」では、木材関連事業者への強制力として弱い
参考:林野庁『クリーンウッドを使って世界と日本の森林を守ろう』『木材関連事業者の方へ クリーンウッド法に基づく事業者登録のすすめ』
1つ目については、クリーンウッド法の第1条でも言及されています。
2つ目の「SDGs」とは、2030年までに持続可能なよりよい世界を実現することを目的とした国際目標のこと。「17の目標」およびそれを実現するための「169のターゲット」からなります。
違法伐採対策や合法伐採木材の流通・利用促進により、SDGsの「目標12:つくる責任つかう責任」「目標13:気候変動に具体的な対策を」「目標15:陸の豊かさも守ろう」「目標16:平和と公正をすべての人に」の実現につながります。
3つ目の「グリーン購入法」とは、2001年に施行された法律で、環境負荷の低減に役立つ物品等の調達を推進することを目的としています。また、「合法木材ガイドライン」とは、林野庁が2006年に公表したガイドラインで、木材・木材製品の供給者が合法性・持続可能性の証明に取り組む際に留意すべき事項を取りまとめたものです。
いずれも、合法伐採木材の利用促進のために重要なものですが、「木材関連事業者への強制力として弱い」という課題があります。こうした背景を踏まえ、クリーンウッド法が施行されることとなったのです。
参考:林野庁『木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン 平成18年2月』
クリーンウッド法の概要
ここからは、クリーンウッド法の概要について見ていきましょう。
合法性の確認を行う「木材関連事業者」の範囲
「木材関連事業者」とは、木材などの製造、加工、輸入、輸出または販売(消費者に対する販売を除く)をする事業者や、木材を使用して建築物その他の工作物の建築または建設する事業者などを指します。クリーンウッド法の施行規則により、「第一種木材関連事業」と「第二種木材関連事業」に分けられています。
「第一種木材関連事業」は木材の流通における「川上」の事業(樹木の所有者から丸太を譲り受け、加工・輸出・販売を行う事業や木材などの輸入を行う事業)、「第二種木材関連事業」は第一種木材関連事業以外の「川下」の事業と覚えておくとよいでしょう。詳細については、下の図をご確認ください。
制度の対象となる木材等
制度の対象となる木材等としては、以下のようなものが挙げられます。
カテゴリー | 対象となるものの具体例 |
木材 | 丸太(間伐材も含む)、単板、突き板、製材、集成材、合板、単板積層材、木質ペレット、チップ状または小片状の木材 など |
建材 | フローリング、木質系セメント板、サイディングボードのうち、木材を使用したもの など |
家具 | 椅子、机、収納用什器(ロッカーなど)、棚、ローパーティション、コートハンガー、傘立て、掲示板、黒板、ホワイトボード、ベッドフレーム など |
パルプ・紙 | 木材パイプ、コピー用紙、フォーム用紙、印刷用紙、インクジェットカラープリンター用塗工紙、トイレットペーパー、ティッシュペーパー など |
参考:林野庁『世界と日本の森林を守るために。取り扱う木材の合法性の確認が必要です。』
なお、薪や木炭、竹、コルク、パーティクルボード、輸送用木箱、合板型枠などは対象外となっています。
参考:林野庁『クリーンウッド法の手引とQ&A』
木材等の合法性を確認する方法
木材等の合法性確認は、全ての木材関連業者が証明書や国が提供する情報などをもとに実施します。具体的な確認方法・内容については、流通における「川上の事業者(第一種木材関連事業)」なのか「川下の事業者(第二種木材関連事業)」なのかによって異なります。
「第一種木材関連事業」の場合、樹種・伐採地、合法性証明書などの情報および国が提供する情報に基づき、合法性を確認する必要があります。一方、「第二種木材関連事業」の場合、購入先が発行する合法性を確認できたとする書類に基づき、合法性を確認します。
確認方法の詳細について知りたい場合は、林野庁の『クリーンウッド法の概要』を参考にしてみてください。
登録木材関連事業者になるメリット
取り扱う木材等の合法性確認やその他の措置を確実に講じている木材関連事業者は、登録実施機関(国に登録された第三者機関)に登録申請をすることが可能です。登録が認められれば、「登録木材関連事業者」であることを取引先や消費者に示せます。
登録木材関連事業者になることにより、以下のようなメリットが期待できます。
●無登録の木材関連事業者との差別化を図れる ●法的に認められた登録木材関連事業者としての社会的評価を得られる ●地域社会や消費者、一般事業者への信頼性を高められる ●企業ブランドの向上につながる
参考:林野庁『クリーンウッドを使って世界と日本の森林を守ろう』
また、消費者(調達者)には「数ある事業者の中から登録木材関連事業者を選ぶことにより、合法伐採木材を安心して調達できる」というメリットがあります。
登録申請手続きなど登録制度の詳細を知りたい方は、林野庁のパンフレット『木材関連事業者の方へ クリーンウッド法に基づく事業者登録のすすめ』をご確認ください。
2025年にクリーンウッド法が改正へ|問題点の解決・対策強化を目指す
2017年にクリーンウッド法が施行されて以降、以下のようなさまざまな問題が明らかとなりました。
・木材関連事業者が取り組むべき措置については、あくまで努力義務である(法的拘束力がない) ・登録木材関連事業者であっても違法木材を扱うことが可能であり、それに対する罰則もない ・法的拘束力や遵守義務のないことに対して、環境NGOなどからその実効性を疑問視されている ・登録木材関連事業者により合法性が確認された木材量は、日本の木材総需要量の約4割にとどまっている
加えて、G7関連会合やAPEC林業担当大臣会合などで違法伐採の根絶に向けた取り組みが課題として取り上げられるなど、国を挙げて取り組みを強化することも求められています。
現行のクリーンウッド法の問題点を解決するとともに違法伐採への取り組みをさらに強化すべく、クリーンウッド法の一部を改正する法律が2023年第211回通常国会において成立。2025年4月に改正クリーンウッド法が施行される予定です。
林野庁の資料をもとに、クリーンウッド法の改正点について見ていきましょう。
<改正点1>川上・水際の木材関連事業者による合法性の確認等の義務化(第6条~第8条)
ここでいう「川上の木材関連事業者」とは原木市場や製材工場などを、「水際の木材関連事業者」とは輸入事業者を指します。違法伐採の撲滅および合法伐採木材等の利用促進の鍵を握っているのは、国内市場における木材流通の第一段階である「川上・水際の木材関連事業者」の対応です。
そのため、川上・水際の木材関連事業者に対して、合法性の確認等が義務化されることになりました。具体的には、素材生産販売事業者(森林所有者からの委託を受けて樹木を伐採し、それを販売する事業者)または外国の木材輸出事業者から木材等を譲り受ける際の「原材料情報の収集、合法性の確認」「記録の作成・保存」「情報の伝達」が義務付けられます。
<改正点2>素材生産販売事業者による情報提供の義務化(第9条)
素材生産販売事業者にも義務が課されることとなりました。具体的には、改正点1の合法性の確認等が円滑に行われるよう、木材関連事業者からの求めに応じ、伐採届等の情報提供を行うことが義務付けられます。
<改正点3>小売事業者を木材関連事業者へ追加(第2条第4項)
小売事業者が木材関連事業者に追加されます。この改正は、合法性確認に関する情報や合法的な木材利用の大切さを消費者にまで伝えることを目的としています。
<改正点4>その他
その他の改正点として特筆すべきなのが、罰則規定です。改正点1と改正点2に関して、主務大臣による指導・助言、勧告、公表、命令、命令違反の場合の罰則等の規定が盛り込まれています。
あわせて、合法伐採木材等の利用を確保すべく、木材関連事業者が違法伐採木材等を利用しないようにするための措置等が明確化されることになりました。
また、一定規模以上の川上・水際の木材関連事業者に対する「定期報告の義務付け」「関係行政機関の長等に対する協力要請」も規定されました。
齋藤木材工業株式会社のクリーンウッド法に基づいた取り組み
長野県の齋藤木材工業株式会社は、「第二種木材関連事業」に関わる事業主として、2023年12月にクリーンウッド法の登録木材関連事業者となりました。クリーンウッド法に基づき、林材工場では合法伐採された信州カラマツ材などを集材。それらをもとに、各工場で建造用集成材や耐火集成材を製造しています。
また、同社は、SDGs実現につながる具体的なアクションに取り組む企業として長野県が認定している「長野県SDGs推進企業」でもあります。クリーンウッド法の枠を超え、SDGsの実現に向けて「地域産木材を活用した木造建築物の設計・施工」「植林活動の実施」「地域産木材を活用した耐火集成材製品の増産」などにも取り組んでいます。
さらに、信州カラマツ材のうち集成材として活用できない部分は、薪として一般ユーザー向けに販売しています。持続的な森林循環に、建築業者のみならず消費者も関われるとして、取り組みが注目されています。
参考:[長野県公式]長野県SDGs推進企業情報サイト『企業情報|齋藤木材工業株式会社』
クリーンウッド法を理解し、事業者・消費者ともに協力して取り組もう
合法伐採木材等の流通や利用促進のための法律であるクリーンウッド法は、違法伐採の撲滅も目的としています。クリーンウッド法の登録木材関連事業者になれば、「無登録の木材関連事業者との差別化」「社会的評価の獲得」などのメリットが期待できるため、木材に関わる事業者は登録申請を検討するとよいでしょう。また、法律に反しないよう「制度の対象となる木材等」や「合法性確認の方法」といったクリーンウッド法の概要や、2025年4月からの法改正内容について理解することも重要です。
クリーンウッド法の対象は事業者ですが、違法伐採を根本的になくすには消費者自身が関心をもつことも不可欠です。「木材を使った製品の購入時に、原産地や材木の種類を確認する」「自身が使う木材の販売元が、クリーンウッド法の登録木材関連事業者かどうか調べてみる」など、できることから始めてみてはいかがでしょうか。