植林とは?植林活動のメリット・デメリットや具体的な取り組み事例を解説
植林とは、木を植えて育てること。森林保全や木材生産のための重要な取り組みで、事業として植林活動を展開している企業もあります。この記事では、植林の概要、メリット・デメリット、企業の取り組み事例を解説します。
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植林とは?
植林とは、伐採の跡地やもともと山林ではなかった場所に、苗木の植付け・種まき・挿し木などを行い、木を育てることです。苗木を植える植林地の整地や、植林後の森林管理などもあります。
日本の国土の約7割は森林で、そのうち4割は植林などで造成した人工林です。植林は、「産業植林」と「環境植林」の2つに大きく分けられます。
産業植林 目的:木材の生産、原材料の安定的な確保活動 主体:大手製紙メーカー、住宅メーカーなど
環境植林 目的:森林再生や温室効果ガス削減など環境保全活動 主体:NPO、NGOなど。企業がCSR活動として行うケースもある
ただ、産業植林と環境植林は明確に区別できるものではなく、実際には、両方の目的を兼ね備えた植林もあります。
植林活動のメリット
植林活動には、さまざまなメリットがあります。
自然環境の保全につながる
植林で森林面積を増加させることは、土砂災害防止や土壌保全・水源かん養(水資源を蓄え、長時間かけて養い育てること)・大気の浄化など自然環境の保全に役立ちます。また、森林が野生動物の住処や食料を与えてくれるため、生物多様性保全につながり、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」の達成にも寄与するでしょう。
地球温暖化防止につながる
人為的な造林が森林減少に歯止めをかけ、成長した木がCO2を吸収・固定するため、植林は地球温暖化対策ともなります。また、国内より海外で大規模な植林が可能な地域もあるため、企業によってはベトナムやミャンマー、マレーシアなどで海外植林を実施しています。
地域社会に貢献できる
植林活動で地域社会に貢献できることもあります。それまで木材の生産がなかった地域での植林は、まず森林という資源を生み出します。それにより、地域の住民に木材加工に関わる雇用機会を与えたり、木質バイオマス発電のような新しい産業を創出したりといったことが期待できます。また、環境保護の重要性を理解した人材の育成といった視点からも貢献できます。
植林活動のデメリットや課題
植林活動には、メリットだけでなくデメリットや課題もあります。
長期的に森林管理をしなければならない
植林は植えて終わりではなく、長期的な森林管理が必要になります。林業従事者の若年者率はやや改善していますが、全体の人数は減少傾向にあり、植林後に定期的な手入れができる人材を確保できるかが課題です。
また、日本は山の急斜面などでの作業も多いことなどから森林管理にかかるコストが多くかかります。技術が進み、機械化で省人化できたとしても地理条件によってはコスト削減につながらないことがあります。そのため植林は、植えた後の管理にかかるコストも意識することが重要です。
土地に合った樹種を選ばなければならない
植林は、植える土地に合った樹種を選ぶことが大切です。土地に合わない樹種は、植えてもうまく成長せず、枯れてしまうこともあります。木の種類の特性だけでなく、地域の環境条件なども考慮し、その土地に適した樹種を選びましょう。
植林活動を行う自治体や企業の取り組み事例
ここでは、植林に取り組んでいる企業・自治体の事例を紹介します。
【自治体】ほっかいどう企業の森林づくり
「ほっかいどう企業の森林づくり」は、北海道庁が推進している森林整備の取り組みです。北海道内の森林(私有林・市町村有林・道有林)について、整備の支援を希望する森林所有者と、環境活動や企業価値向上などのため森林整備に取り組みたい企業・団体をマッチングし、協定締結を支援しています。
具体的な森林整備の種類は、植林のほか、整地や草刈り、間伐・枝打ち、鳥獣害対策などがあり、森林の状況や所有者・企業の意向に沿い、複数を組み合わせて実施しています。
参考:北海道庁『ほっかいどう企業の森林づくり』
【国内企業】ダイドードリンコ株式会社
飲料メーカーのダイドードリンコ株式会社は、地球温暖化対策に取り組むプロジェクト「LOVE the EARTHベンダー」を展開しています。同社が環境配慮型の自動販売機を納入する際に、オプションのひとつとして植林活動が行われる仕組みです。具体的には、対象の自動販売機を1台設置するごとに1本植林され、CO2の吸収源を増やして脱炭素化への貢献を目指します。2024年4月時点では、秋田県・神奈川県・長野県・奈良県・広島県・熊本県にて植林が行われています。
参考:ダイドードリンコ『LOVE the EARTHベンダー』
【海外企業】マイクロソフト(Microsoft Corporation)
米国ワシントン州に本社を置くマイクロソフトは、世界の各地でさまざまな環境活動を展開しており、植林や森林環境の改善にも注力しています。近年はニカラグア・ペルー・ケニアなどで、再植林やアグロフォレストリーに基づく炭素除去権を購入しました。
この取り組みは、単なるCO2の吸収・固定化ではなく、生産力のある森林の保全にもつながっています。例えば、活用していない土地で森林事業を行い長期的な収入を得る、アグロフォレストリー(森林農法)で森林の生産性を向上するなど、現地の新たな収入源をつくりだすことに寄与しています。
参考:マイクロソフトJapan News Center『マイクロソフト、2030 年までにカーボンネガティブとなることを発表』
植林のメリット・デメリットを理解し、できることから始めよう
植林は、環境問題解決や地域活性化など、さまざまなメリットをもたらす重要な活動です。しかし、植林後の長期的な管理や樹種の選定など、課題も存在します。そのため持続可能な植林を実現するには、メリットとデメリットを正しく理解し、地域や目的に合致した計画を立て、実行することが重要だと考えられます。
個人レベルでは、地域の植林ボランティアに参加する、植林事業へ寄付するなど、身近なところから取り組むことが可能です。一人ひとりが森林の環境や生態系などを意識して活動することで、より効果的な取り組みとなるでしょう。未来の地球環境と地域社会のために、できることから始めてみませんか。