森林の定義とは?さまざまな定義の解説に加え、森林の区分も紹介

森林の定義とは?さまざまな定義の解説に加え、森林の区分も紹介

森林とは、「木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹」並びに「木竹の集団的な生育に供される土地」であると、森林法で定義づけられています。森林法以外にも、京都議定書やFAO(国際連合食糧農業機関)による定義もあります。

近年では、将棋の棋士である藤井聡太さんが、自身の状況を「森林限界の手前」と評し話題となったことから、「森林」という言葉に興味を持った方もいるかもしれません。今回は、さまざまな角度から森林の定義についてや、森林の区分、森林により親しんでもらうことを目的に設定された「レクリエーションの森」についても見ていきましょう。

森林の定義

森林という言葉には、以下のようにさまざまな定義があります。

「森林法」による森林の定義

森林法(森林に関する基本的な事項を定めた法律)第2条第1項では、森林は次のように定義されています。

●木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹
●前号の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地

伐採跡地などで現状は無立木地であっても、その土地をめぐる自然的、経済的、社会的条件に照らし合わせた結果、森林として取り扱うこともあります。

一方で、森林状態になっている場所でも、森林法の対象として取り扱うことを「不適当」とするものについては森林として取り扱わないとしています。具体的にはリンゴ畑やミカン畑、ブドウ畑などの耕作による果樹畑、公園や公共施設等の敷地、宗教法人法で規定する境内地及び墓地などは、森林法では森林に含めません。

(参考:e-Govポータル「森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)」)

「京都議定書」における日本の森林の定義

温暖化に対する国際的な取り組みのための国際条約である「京都議定書(第1回締約国会議COP/MOP1)」では、日本の森林を以下のように定義しています。

●最小面積 0.3[ha]
●最小樹冠被覆率 30[%]
●最低樹高 5[m]
●最小の森林幅 20[m]

(参考:日本国「京都議定書3条3及び4の下でのLULUCF活動の補足情報に関する報告書」)

「FAO(国際連合食糧農業機関)」における日本の森林の定義

日本が、FAO(国際連合食糧農業機関)に報告した森林の定義は次の通りです。

木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹、もしくは木竹の集団的な生育に供される、0.3 ヘクタール以上の土地。ただし、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。

また、立木地は「森林のうち、樹冠疎密度 0.3 以上の林分(幼齢林を含む)」、無立木地は「森林のうち、立木地と竹林以外の林分」、竹林は「立木地以外の森林のうち、竹(笹類を除く)が生立する林分」と定義しています。

(参考:日本国「京都議定書3条3及び4の下でのLULUCF活動の補足情報に関する報告書」)

辞書などにおける森林の定義

辞書などでは、森林を以下のように定義しています。

【広辞苑第7版】樹木の密生している所。もり。はやし。
【デジタル大辞泉】樹木、特に高木が群生して大きな面積を占めている所。また、その植物群落。
【Wikipedia】広範囲にわたって樹木が密集している場所である。集団としての樹木だけでなく、そこに存在するそれ以外の生物および土壌を含めた総体を指す。

森林には、なぜさまざまな定義があるのか

「森林」という言葉にさまざまな定義が存在するのは、定義をする団体によって調査方法や研究の目的が異なるからと言えます。一方、京都議定書による森林の定義と、国連食糧農業機関(FAO)が2005 年に行った世界森林資源調査「FRA2005」における日本の報告対象森林の定義とが一致していることからみて、ある程度の一貫性があるとも言えます。

森林、森、林の違い

森林と似た言葉で「森」と「林」があります。これらの違いは何でしょうか。森林については前述しましたが、辞書によると森と林は以下のようになります。

森(もり)

【広辞苑第7版】樹木が成り立つ所。
【デジタル大辞泉】 樹木がこんもりと生い茂った所。
【Wikipedia】木々が密集した場所。

林(はやし)

【広辞苑第7版】樹木の群がり生えた所。
【デジタル大辞泉】 樹木がたくさん集まって生えている所。
【Wikipedia】岡・森・山・田園地帯付近に主にあり竹や草などで構成されていることが多い。 現在では、住宅地などに開拓されることが多い。

森林の区分

森林にはいくつかの分け方があります。ここでは区分について紹介します。

森の小径
image by Maksim Shutov on Unsplash

人工林と天然林

農林水産省によると森林の「生育方法」による区分は以下になります。

人工林

人工林とは、植栽又は人工下種により生立した林分で、植栽樹種又は人工下種の対象樹種の立木材積(又は本数)の割合が50%以上を占めるものを指します。日本は国土面積の約7割を森林が占めており、その約4割が人工林です。

天然林

天然林とは、人工林の定義に合致しない森林を指します。主に自然の力によって発芽し、育ったものです。

(参考:農林水産省「森林資源の現況の概要」)
(参考:林野庁「森林Q&A

国有林と民有林

林野庁によると、森林の「所有」による区分は以下になります。

国有林

国有林とは、国が所有する森林・原野のことを指します。日本は森林のうち約3割が国有林です。

民有林

民有林とは、国有林以外を指します。

(参考:林野庁 関東森林管理局「国有林とは」)
(参考:e-Govポータル「森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)

森林整備の3区分

森林には土砂の流失を防いだり、環境を保全したりさまざまな機能があり、私たちは森林からさまざまな恩恵を受けています。これら森林の機能を最大限に活かすためには適切な管理と整備が必要です。そのため、全国の市町村では、森林を以下の3区分に分けそれぞれに応じた対策を進めています。

水土保全林

「水土保全林」とは、災害により荒廃した森林や渓流の復旧をはじめ、土砂の流出・崩落防止、防風及び防潮、また、水源かん養や生活環境保全等の機能を果たす森林を整備していくため、間伐の推進、長伐期施業、育成複層林施業や治山事業を行っている森林です。雨や雪解け水を貯え、ゆっくり流し出すことによって、渇水や洪水を調整する働きを持つ森林を、保全面から整備しています。

森林と人との共生林

「森林と人との共生林」とは、原生的な森林生態系など貴重な自然環境を保全し、国民と自然との触れ合いの場としての利用を図ることを重視する森林です。自然景観を守り、快適な森林空間を目指し、多様な樹種を植栽するなどの整備を進めています。

資源の循環利用林

「資源の循環利用林」とは、環境に対する負荷が少ない素材である木材の効率的な生産を行うことを重要視した森林です。安定して木材を提供し、資源としての役割を果たせるよう整備しています。

(参考:林野庁 関東森林管理局「森林整備と取り組み」)
(参考:林野庁 九州森林管理局「森林の機能類型」)

レクリエーションの森

「レクリエーションの森」とは林野庁が、森林により親しんでもらうことを目的に設定したものです。全国にある国有林のうち、自然観察や登山、キャンプ、スキー、環境教育などに適した森林として、全国で約600カ所以上が設けられています。2017年には、この中から特に景観などが優れた93カ所が「日本美しの森 お薦め国有林」として選定されました。

また、レクリエーションの森は、それぞれの森林の特徴や利用目的などにより、以下の6種類に区分されます。

自然休養林

自然休養林とは、特に景観が美しく、保健休養に適した森林です。自然探勝をはじめ、登山、ハイキング、キャンプなど複合的に森林を楽しむことができます。
代表的な場所/高尾山(東京都)、屋久島(鹿児島県)

自然観察教育林

自然観察教育林とは、自然の変化に富み、自然観察学習に適した森林です。森林の働きや野生動植物の観察などを学ぶことができます。
代表的な場所/箱根(神奈川県)、軽井沢(長野県)

風景林

風景林とは、名所や旧跡などと一体化して景勝地を形成している森林です。雄大な眺望やその地域ならではの歴史を感じることができる場所です。
代表的な場所/嵐山(京都府)、宮島(広島県)

嵐山川岸からの風景
image by topcools tee on Unsplash

森林スポーツ林

森林スポーツ林とは、森林と触れ合いながらアウトドアスポーツが楽しめる森林です。キャンプ、サイクリングなど自然を感じながら体感できます。
代表的な場所/風の松原(秋田県)、扇ノ山(兵庫県・鳥取県)

野外スポーツ地域

野外スポーツ地域とは、スキー場や宿泊施設などが一体となった地域です。雄大な自然の中で体を動かし、爽やかな時間を満喫できます。
代表的な場所/蔵王(宮城県)、苗場(新潟県)

風致探勝林

風致探勝林とは、湖沼、渓谷と一体となり優れた自然を構成している地域です。様々な樹木、自然美を楽しむことができます。
代表的な場所/層雲峡(北海道)、穂高(岐阜県)

(参考:農林水産省 「『レクリエーションの森』で自然を満喫しよう」)
(参考:林野庁「レクリエーションの森」)
(参考:林野庁「レクリエーションの森の区分」)

森林の定義を知ったうえで、森林と触れ合っていこう

森林について、いくつかの角度から定義を紹介しました。森林大国・日本では、身近な場所に森林が存在する地域も多く、首都圏などでも少し足を延ばせば森林に触れ合うことができます。森林の定義を知ったうえで、自然の恵みに感謝し、森林を愛でる生活をしてみてはいかがでしょうか。