焚き火で煙が出る理由とは。5つの対策と周囲に迷惑をかけないためのマナー
焚き火をする際、煙がたくさん出てしまい困った経験のある人もいるかもしれません。そもそもなぜ煙が出てしまうのでしょうか。その原因を押さえ、きちんと対策をすれば煙の少ない焚き火を楽しむことができます。今回は、煙がたくさん出る理由や5つの対策、周囲に迷惑をかけないためのマナーなどを紹介します。
Contents
焚き火で煙がたくさん出てしまう理由
煙は、目にしみたり臭いがついてしまったりと、自分が困るだけでなく周囲の迷惑になることもあります。焚き火をする際は、できるだけ煙を出さないようにしたいですよね。そもそも、焚き火をするときにたくさん煙が出てしまうのはなぜなのでしょうか。その理由をお伝えします。
薪が乾燥していない
湿った薪を燃やすことが、大量の煙を出してしまう原因のひとつです。乾燥不足の薪に火をつけると、内部に残った水分が水蒸気となり、煙として外部に放出されます。つまり、薪の内部に残っている水分が多ければ多いほど、大量の煙が出てしまいます。
燃焼温度が低い
薪をしっかりと燃やすために必要になるのは、火力です。火力が足りず、燃焼温度が低いと、薪に含まれている成分が効率的に分解されず、煙の発生原因になると考えられています。
煙を抑えて薪を燃やすためには、基本的に450〜460度くらいの温度が必要です。火力を上げるための燃料となる着火剤が足りなかったり、燃えにくい性質の薪を使ったりしていると十分に燃焼温度が上がらない可能性があるので気をつけましょう。
庭やキャンプでの焚き火で煙を出さないための5つの対策
実際に焚き火で煙を抑えるには、どのような対策が有効なのでしょうか。ここでは、5つの煙対策を紹介します。
<対策1>十分に乾燥した薪を燃やす
先述したように、湿った薪を燃やすことがたくさんの煙を出す原因となり得るため、発生を抑えるには十分に乾燥した薪を用意することがポイントです。薪の乾燥度を測る目安として、「含水率」というものがあります。
薪の含水率とは、薪の中に残っている水分の割合を示します。伐採されたばかりの生木の含水率は約50%であるのに対し、焚き火や薪ストーブに使う薪は、含水率20%以下が最適です。
ホームセンターや通販などにおいて焚き火用に販売されている薪は、あらかじめ人工乾燥機などによって含水率を20%以下に抑えたものが多いため、そのまま使えます。
「森の中ストア」で販売されている信州産カラマツの薪は、脱脂乾燥されており含水率が10%前後になっているため、十分に乾燥しているのが特徴です。この機会にぜひご利用ください。
【関連記事】薪の乾燥方法とは?最適な期間や保管の仕方、乾燥度の見分け方も解説
<対策2>針葉樹と広葉樹の薪を使い分ける
薪は大きく「針葉樹」と「広葉樹」の2種類に分けられます。燃やす際に煙が少なく、長時間燃やしたいときに適しているのは、硬い性質を持つ広葉樹です。一方で、針葉樹は燃えやすく焚き付けに向いているという特徴があるので、場面によって使い分けると効率よく焚き火が楽しめます。
焚き火初心者で、針葉樹と広葉樹のバランスがわからないという場合は、1:1の分量で用意するとよいでしょう。
【関連記事】針葉樹と広葉樹の薪の違いや見分け方。焚き火やストーブで上手に活用するには
<対策3>炎の原理を理解して薪を組む
煙の発生を抑えるには、炎の原理を理解して燃えやすい薪の組み方を意識するのも大切なポイント。炎の原理とは、「火は上に向かって広がること」「酸素がたくさん必要になること」です。
燃えやすい組み方としては、漢字の「井」の字のように組む井桁組みや、内側に細い薪・外側に太い薪を立てかけて閉じ傘のような形に組むのが例として挙げられます。組むのが難しい場合は、下の写真のように、太い薪に細い薪を立てかけるようにすると簡単です。
【関連記事】焚き火のための簡単な火起こし方法。道具や焚き付けのコツもくわしく解説
<対策4>燃焼効率のよい焚き火台を使う
市販されている焚き火台(ファイヤーピット)の中には、燃焼効率を良くし煙の発生を抑える構造を施しているものがあります。代表的なのは、「煙突効果」と「二次燃焼効果」のあるタイプです。
煙突効果のある焚き火台
一般的に温かい空気は冷たい空気に比べて軽く、上にあがるという性質があります。煙突効果とは、外部の冷たい空気が煙突内に入ることで、元々煙突内にあった高温の空気が上昇する現象のこと。煙突下部にある「空気の取り入れ口」から外部の冷たい空気を煙突内に引き入れることで、温かい空気が上昇します。
煙突効果のある焚き火台は、冷たい空気を下から吸い上げて上昇させることで、空気の対流を促進させます。そうすることで燃焼効率が上がり、煙の発生が少なくなります。煙突効果のある焚き火台の中には、持ち運びしやすいコンパクトなタイプや、ペール缶にそのままセットするだけのタイプもあり便利です。
二次燃焼効果のある焚き火台
一般的な焚き火は、熱した薪から発生した可燃性ガスに引火することで薪が燃える「一次燃焼」が起こります。この時、一部燃え切らない未燃焼ガス等が発生し、煙になります。
「二次燃焼」とは、一次燃焼時に発生した未燃焼ガスに、焚き火台で温められた高温の空気を送り、再度燃やすことを言います。二次燃焼効果のある焚き火台は、一次燃焼で発生した煙の素である未燃焼ガスを、炉内の二次燃焼で燃やしてしまうため、至近距離で焚き火を囲んでも、煙たくないのがメリットです。ソロ~複数人用まで、大きさもさまざまあります。
【関連記事】二次燃焼構造のおすすめ焚き火台9選。仕組みやメリット・デメリットとは?
<対策5>焚き火煙幕(陣幕)を使って煙の広がりを抑える
焚き火煙幕とは、焚き火やキャンプサイトを囲うための幕のことで、陣幕・リフレクター・ウィンドスクリーンとも言います。
煙幕は、強風や突風で火の粉が飛んだり、煙が広がったりするのを防いでくれる優れたアイテム。煙が直接体に当たって「目が痛い」「喉が痛い」といったことを防ぐための対策にも使えるので便利です。
また、防風効果で火が安定しやすくなったり、輻射熱の効果で暖が取りやすくなったりとさまざまなメリットがあります。煙幕には金属タイプと布タイプがあるので、扱いやすさや焚き火の規模に合わせて選びましょう。
焚き火の煙で迷惑をかけないためのマナー
焚き火の煙は、臭いなどで周囲の迷惑になるだけでなく、人によっては健康にも影響を及ぼす可能性があるため、配慮が必要です。ここでは、焚き火の煙で迷惑をかけないためのマナーを紹介します。
有害な煙を出さないように燃やす
焚き火でプラスチックや塗料のついた木材などを燃やすと、有害な煙が出ることがあります。そもそも、一般的な家庭ごみを混ぜて燃やす「野焼き」は法律でも禁じられているため注意が必要です。キャンプなどで焚き火を楽しむ際は、木の表面に何もついていない無垢の薪のみを燃やすようにしましょう。
【関連記事】焚き火は違法?庭・海・山・公園などでの焚き火に関する法律や注意点を解説
妊婦やアレルギー持ちの人に配慮する
煙に含まれる一酸化炭素には、特に注意が必要です。妊婦が一酸化炭素を吸うと、胎児に影響を及ぼす可能性があると言われているため、妊娠中の方が煙をたくさん吸ってしまわないよう配慮したほうがよいでしょう。また、煙を吸うことで咳が出る「喘息」などのアレルギーを持つ方にも配慮が必要です。
(参考:東京都福祉保健局「胎児・赤ちゃんへの健康影響」)
燃やしてはいけない薪の種類を把握しておく
木の中には、燃やすことで有害な煙を出すものがあります。「ウルシ」と「キョウチクトウ」は、焚き火の薪にしてはいけない植物の代表です。ウルシにはアレルギーを引き起こす物質が含まれているので、煙を出す焚き火には向きません。
また、園芸品種のキョウチクトウは、花・葉・枝・根・果実・土・燃焼時に出る煙など、全てに毒性を含んでいるので燃やさないようにしましょう。市販の薪にウルシやキョウチクトウの薪が含まれていることはありませんが、薪を自作する人は、木の種類にも注意が必要です。
焚き火の煙は活用できる。その方法とは?
モクモクと出る煙は迷惑になることが多いですが、その煙を活用することもできます。ここではその活用方法を紹介します。ただし、活用する場合でもあまり広がらないよう対策を講じた上で、周囲の迷惑にならないところで実践しましょう。
煙を虫除けにする
煙から発生する臭いには、蚊やアブが嫌う成分が含まれていると言われています。また、煙の中では虫が酸欠状態になるため、人に近寄ることが少なくなり、虫除け効果が期待できます。虫が活発になる朝や夕方に、テントの前であえて少し煙を出し、虫除けとして使うのもひとつの方法です。
煙を燻製料理に活用する
煙を使って燻製料理を作ることもできます。焚き火の煙が当たるところにベーコンなどを吊るせば、スモークベーコンができます。また、焚き火台の上に網や鉄板を乗せてお肉や野菜を焼き、そのかたわらでスモークチーズなどを作れば、キャンプやBBQのテーブルがより一層華やかになるかもしれません。
しっかりと煙対策をしながら、焚き火を楽しもう
焚き火で煙が発生する原因や対策、マナーなどについて紹介しました。焚き火をする際には、乾燥した薪を用意したり、燃焼効率のよい焚き火台を使ったりすることで、煙の発生を抑えられます。煙で迷惑をかけないよう周囲へ配慮をしながら、焚き火を楽しんでくださいね。