地球温暖化対策の具体例をご紹介。海外や日本の取り組み、すぐにできる行動とは

地球温暖化対策の具体例をご紹介。海外や日本の取り組み、すぐにできる行動とは

世界的な地球温暖化対策にまつわる言葉として、「サステナビリティ」や「SDGs」などを耳にしたことがある方もいるでしょう。地球温暖化対策として、私たちにはどのような取り組みができるのでしょうか。地球温暖化のメカニズムや海外・日本における取り組み、すぐにできる行動の具体例などをご紹介します。

地球温暖化とは?

地球温暖化とは、温室効果ガスが大量に排出されることで大気中の濃度が高まり、太陽からの熱を放出できずに溜め込むことで、気温が上昇する現象のこと。世界の平均気温が上昇すると、これまでの気候のパターンが変化し、人や動物など生物全てに甚大な影響を及ぼすといわれています。

気候変動の要因には、火山の噴火などによる「自然起源」の影響と、化石燃料の利用などによる「人為起源」の影響があります。人為起源の温室効果ガスの中でも、特に地球温暖化の原因となっているのは「二酸化炭素(CO2)」です。産業革命以降、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の使用が増え、大気中の二酸化炭素濃度も徐々に増しているのが現状です。

地球温暖化が進むことによる影響

各国政府の気候変動に関する政策を手助けするべく、世界中の科学者たちが集う「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」が設立されました。このIPCCでは定期的に報告書を作成しており、1990年の「第1次評価報告書(FAR)」を初めとして、現在は「第6次評価報告書(A6)」まで作成されています。地球温暖化が進むと地球や人々ににどのような影響を与えるのか、「第6次評価報告書」をもとに見てみましょう。

気温の上昇

地球温暖化が進むと、気温はますます上昇していくとされています。工業化以前(1850~1900年)から現在までに世界平均気温は1.09℃上昇しました。世界平均気温は、過去2000年にわたって経験したことのない速度で上昇しており、どんなに対策をしたとしても2040年までは上昇が続くといいます。2021年~2040年の間に、工業化前の気温から1.5℃の上昇は免れないようです。

日本においても、日最高気温・日最低気温の上昇が予測され、特に日最低気温の上昇幅は大きいとされています。また、西日本を中心に真夏日の増加、北日本を中心に真冬日の減少が予測されています。

海面水位の上昇

気温の上昇に伴い、海面水位も上昇すると予測されます。21世紀の間、世界の平均海面水位は上昇し続けることは「ほぼ確実(99%~100%)」と発表されました。南極氷床も減少し続ける可能性が高く、気候変動に対する対策を行わなかった場合、世界平均海面水位の上昇が予測を超え、2100年までに2mに迫る可能性もあるとのことです。

海面水位の上昇は、台風による高潮や沿岸域の氾濫、海岸の侵食といった被害にもつながります。沿岸や低平地、国土が小さな島国に住む人々に、大きな影響を与えるでしょう。

農作物への影響

気温の上昇は、農作物への影響も。気温が上昇することで作物の成長が阻害され、成長が抑制されます。さらに上昇が進むと土壌の干ばつが起こり、不作につながる可能性もあるでしょう。

また、地球温暖化が進むと、大雨や洪水、強風といった複合的な現象の発生確率が上昇するともいわれています。高温・乾燥・強風が同時発生することで火災が発生したり、大雨による洪水で田畑が浸水したりと、このままでは農作物が育たない環境になることも考えられます。

世界的な地球温暖化対策の具体例

こうした危機的な状況が進んでいることについて、国際的に初めて取り上げられたのは1972年の国連人間環境会議です。その後、1992年にブラジルで開催された「地球サミット」では、これまでにない数の国が参加して大きな環境会議が行われました。

地球サミットとは、環境保全と持続可能な開発にフォーカスした国連会議のことです。この地球サミットでは、世界的な今後の環境保全のあり方を示すものとして「リオ宣言」が採択され、宣言の内容を確実に実行するために4つの条約なども制定されました。

出典:環境省『COP(コップ)ってなに? 気候変動に関するCOPを紹介』

気候変動枠組条約

気候変動枠組条約とは、地球温暖化による悪影響を防ぐための国際的な枠組みを定めた条約です。リオ宣言を実行するための条約として、「温室効果ガス濃度を安定化させること」を目的に、1992年に採択されました。これにより、温室効果ガスの排出・吸収の目録を作成することなどが全締約国の義務とされ、世界全体で地球温暖化対策に取り組んでいくことに合意しました。

この条約に基づき、具体的な削減義務などを規定するべく、1995年3月にベルリンで「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」を開催。2000年以降の取り組みとして検討課題や手順を定め、以降COPはほぼ毎年のペースで開催されています。

パリ協定

パリ協定とは、2015年にパリで開催されたCOP21において、2020年以降の気候変動問題に対する取り組みとして採択された、新たな法的枠組みのことです。COP3で採択された「京都議定書」では、温室効果ガスの削減に努めるのは先進国のみの義務とされていましたが、COP21では新たに途上国を含めた“全ての参加国”が対象となりました。

また、世界共通の目標として、「世界の平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすること」を掲げ、温室効果ガスの主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新することなどが定められました。

日本における地球温暖化対策の具体例

1997年開催のCOP3において採択された「京都議定書」を受け、日本でも国や地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みとして、翌年1998年に「地球温暖化対策推進法」が成立しました。

この法律に基づく政府の総合計画として、2016年に「地球温暖化対策計画」が閣議決定されました。5年ぶりとなる2021年の改定によって、「2030年度における温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること」が表明されました。

この2030年度温室効果ガス削減目標や、政府によって宣言された「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、“カーボンニュートラル”を実現」するため、環境省では国民や消費者に向けて、脱炭素につながる国民運動「デコ活」を展開しています。

地球温暖化対策としてすぐにできる行動の具体例

image by Mikael Kristenson on Unsplash

地球温暖化防止に向けた対策として、個人や企業ではどのような取り組みができるのでしょうか。すぐにできる行動の具体例として、環境省が推奨している「デコ活」と「サステナブルで健康な食生活」について紹介します。

①デコ活アクション

先述した通り、環境省の「デコ活」は2030年度削減目標や2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国民や消費者の行動変容、ライフスタイル変革を後押しするために展開している活動です。脱炭素につながる暮らしの全体像などを紹介し、国や自治体、企業などとあわせて国民や消費者と具体的な行動例として、「デコ活アクション」を勧めています。

“まずはここから!”と取り組みやすい行動として、「デ・コ・カ・ツ」の頭文字からつながる4点を挙げています。

:電気も省エネ 断熱住宅
:こだわる楽しさ エコグッズ
:感謝の心 食べ残しゼロ
:つながるオフィス テレワーク

<デ>電気も省エネ 断熱住宅
暮らしに関わることとして、「電気代をおさえる断熱省エネ住宅に住むこと」を掲げています。新築で家を建てるときやリフォームを行うときに、国や自治体の補助を活用して断熱性能に優れた住宅とすることで、消費電力や電気代を削減していくという考えです。

<コ>こだわる楽しさ エコグッズ
こちらも暮らしの中で行える取り組みとして、「LEDや省エネ家電などを選ぶこと」を推奨しています。家の電灯をLED化したり、省エネ家電に買い替えたりすることで、電気の使用量を減らすことにつながるでしょう。

<カ>感謝の心 食べ残しゼロ
食に関する項目として、「食品の食べきり、食材の使い切り」を促しています。大量の廃棄食材の処理には、多くの温室効果ガスも発生します。必要な分だけを買って冷蔵庫の食材を捨てることがないようにするなど、食品・食材の“もったいない”を減らしましょう。

<ツ>つながるオフィス テレワーク
仕事に関しては、「テレワーク」を推奨しています。車や電車を利用して通勤している場合は、自宅でテレワークを行うことで二酸化炭素の排出量を減らすことに寄与するでしょう。また、ガソリン代や通勤時間が削減されることで、新たな時間が生まれるといった魅力もあります。

ほかにも、デコ活のサイトでは、「クールビズ・ウォームビズ、サステナブルなファッションに取り組む」や「宅配便は一度で受け取る」など、脱炭素に向けた取り組みを紹介しています。

参考:環境省『デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)

②サステナブルで健康な食生活

環境省では、食と環境が密接に関係していると考え、脱炭素に向けた「サステナブルで健康な食生活」の提案を行っています。提案のポイントは下記の7つです。

出典:環境省『サステナブルで健康な食生活』

日々に欠かせない食事の中に取り入れることで、健康的で楽しみながら取り組むことにもつながります。地産地消を心がけたり、家庭菜園を始めたりと、取り掛かりやすいものから実行していくことで、一人ひとりの関心が周りへも波及していくでしょう。

地球温暖化対策、何から始めたらよいか悩んだときは

地球温暖化対策といっても、「何から取り組めばよいかわからない」「自分だけが取り組んでも何も変わらないのでは」と気になる人もいるでしょう。環境省では2017年(平成29年)から過程からの二酸化炭素排出量やエネルギー消費量を把握するため、実態調査を実施しています。

2022(令和4)年度の「家庭部門のCO2排出実態統計調査」において、「省エネルギーに向けた行動で実施していること」の結果を見ると、個人が実施している行動として最も多かったのは、「冷蔵庫を開けたままにしたり、むやみに開閉したりしない」(88%)でした。以下は、「エアコンの室外機の吹き出し口に物を置かないようにしている」(85%)、「短時間でも場所を離れるときは消灯を心がけている」(78%)、「シャワーを使うときは、不必要に流したままにしない」(77%)と続きました。

このように、些細なことでも地球温暖化対策につながっています。簡単にできそうなものから取り組んでいくなど、日常生活の中で意識することで習慣化されていくかもしれません。一人ひとりの小さなアクションが、やがて大きな力になるでしょう。

参考:環境省『家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)

具体例を参考に地球温暖化対策を始めてみよう

地球温暖化とは、温室効果ガスが大気中に多く漂うことによって地球の気温が上昇することです。このまま地球温暖化が進むと、気温や海面水位の上昇、農作物の不作など私たちの暮らしにもさらに大きな影響が及ぶ可能性があります。

地球温暖化対策として私たちにできることは、温室効果ガスをできる限り減らすための取り組み。住宅や車を購入するときは、省エネ化されたものや環境に優しいものを選ぶなど環境について意識してみましょう。日々の暮らしの中で「食べ残しを減らす」「こまめにシャワーを止める」など、簡単に取り入れられることから実践してみてはいかがでしょうか。